018 仕事の価値はいくら? - 付加価値と業務の棚卸

1. あなたの「仕事」の価値とは!?

前回までは、お金以外の豊かさについてフォーカスしてみました。
今回は、このブログのテーマでもある、自分たちの「仕事の価値」を考えてみたいと思います。

仕事は自己実現の場だったり、社会貢献の手段だったりと、人によって様々な捉え方があると思います。
最も多い意見は、生活の糧を稼ぐ方法ではないでしょうか。
労働の対価として給与をもらう、という事ですね。

しかも、人生の多くの時間を費やす活動でもあります。
皆さんの仕事は、企業経営者やお客様にとってどれくらいの価値があるのでしょうか。
自分のお給料を時間で割って、自分の時給を計算した事は、皆さんもありませんか?

最低賃金が時給1,000円と言われる昨今ですが、自分の時給は、1,500円でしょうか、2,000円でしょうか。
これがお客様にとってのあなたの労働の価値でしょうか??

また、労働者の仕事の価値を、企業経営者はどのように金額的価値(付加価値)に変換すべきでしょうか?
ベテランの従業員と、新人の従業員で価値を同じにすべきでしょうか?

私は全ての仕事は顧客への価値創出の代行業だと思います。
その仕事の対価については顧客へ要求する付加価値と、労働者へ分配する給与があり、双方を上げていくべきと考えます。

付加価値についてはこの代行した分の価値として、4,500円/時間程度は稼げるような値付けの事業が必要となります。
4,500円/時間は、現在の日本の平均的な労働生産性です。
本来であれば、アメリカやドイツ等のように6,000~7,000円/時間の仕事となっていても良いように思います。

仕事の金額的価値は付加価値で、その付加価値を合計したものがGDPですね。
労働者への給与は、付加価値の分配の一部(大部分)という事になります。

今回は、平均給与労働分配率付加価値労働時間を逆に追っていく事で、この事を確認していきたいと思います。

2. 仕事の「付加価値」を逆算してみよう!

以前の記事でもご紹介した通り、2017年の日本における労働者の平均給与は「422万円」(2017年時点)です。
 参考記事: サラリーマンの貧困化

平均給与

図1 平均給与

男性だと、521万円、女性だと280万円でした。
特に男性労働者では1997年のピークよりも50万円以上下がっています。

次に一人当たりの付加価値について、考えていきます。
皆さんは付加価値という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

付加価値とは、企業が生産によって生み出した価値であり、企業の総生産額から、その生産のために消費した財貨や用役の価額を差し引いた額」
(ブリタニカ国際大百科事典)

ちょっと難しい表現ですが、要するにそれぞれの企業が、自分たちの事業活動を通じて付け加えた価値の事を指します。
労働者目線で考えれば、自分のした仕事の金額的価値といえるものです。

町工場で言えば、例えば職人が金属の塊を削って、部品を作り出した際のお客さんに請求する加工賃ですね。
付加価値と人件費の割合を、労働分配率と言います。

人件費 ÷ 付加価値 = 労働分配率

人件費から一人あたりの付加価値を逆算してみましょう。

人件費 ÷ 労働分配率 = 付加価値

まず、日本の全法人企業の付加価値、人件費、労働分配率を見てみましょう。

日本 付加価値・人件費・労働分配率

図2 労働分配率
(法人企業統計調査 より)

日本では、全ての法人企業を合計すると、直近2017年では312兆円の付加価値を生み出しています。
そのうち、206兆円を人件費にあてています。
2009年以降で見れば、付加価値は年々増えていますが、人件費は横ばいとなっていますので、その比率である労働分配率は右肩下がりとなっています。

2017年では、66.2%です。
人件費は、企業側の負担する社会保険料等の法定福利費など福利厚生費も含みます。
同じく、給与と福利厚生費の割合を示すと下図のようになります。

日本 法人企業 給与・福利厚生費

図3 給与-福利厚生費割合
(法人企業統計調査 より)

この数値は、給与に対する福利厚生費の割合です。
自分のお給料に対して、実は会社側は13%程度のプラスの人件費を負担しているわけですね。

ここ10年ほどでは、12.5~13.1%の幅でほぼ横ばいと言えると思います。
さて、ここでやや強引ではありますが、労働者が年間に稼ぐ平均的な付加価値を計算してみます。

平均給与: 422万円
労働分配率: 66.2%
給与-福利厚生費率: 13.1%

まずは人件費ですが、平均給与の13.1%増しとなりますので、下記の通りですね。

人件費 = 1.131 x 422万円 = 493.1万円
次に付加価値は、人件費÷労働分配率ですので、次の通りとなります。

付加価値 = 493.1万円 ÷ 0.662 = 744万円

一人の平均的な労働者が年間に生み出す付加価値は744万円ということになります。

3. 日本人の「生産性」とは!?

次に時間当たりの付加価値はいくらなのかについても、考えてみたいと思います。

総実労働時間 全産業 年間

図4 実労働時間
(厚生労働省 労働統計 より)

図4は厚生労働省の労働統計 実労働時間の統計結果をグラフ化したものです。

参考までに日本経済がピークだった、1997年のグラフも追加してあります。

右肩下がりの傾向で、直近の2017年では年間で1,721時間となっています。
平均的な労働者が年間で働く時間が1,721時間という事ですね。

年間の付加価値をこの労働時間で割れば、1時間当たりの付加価値(いわゆる労働生産性)になります。
労働生産性 = 744万円 ÷ 1721時間 = 0.432万円/時間

平均的な労働者が1時間当たり、4,300円程度の付加価値を生み出している計算ですね。
実際に、この数値は以前ご紹介したOECDの統計データとも合致する数値です。

直近(2017年)で42.1$です。
1ドル108円で換算すれば、4,546円/時間となります。

労働生産性 2017年

図5 労働生産性
(OECD統計データ より)

この数値は、他の先進国と比べても決して高い水準ではない事は先に示した通りです。
日本人は優秀な人材が多い割りには、平均給与や労働生産性が低い事も確認しました。

それでも、1時間当たりに4,000~4,500円の付加価値を生み出しているわけです。
あなたの感覚として、これは高いでしょうか、安いでしょうか。

4. 「業務の棚卸」で仕事の価値を見直そう!

実は他の主要先進国と比べれば、日本の水準はまだまだ安いですね。
本来は例えばドイツやアメリカと同じくらいの水準で考えれば、6,000~7,000円/時間の労働生産性があるべきと思います。
また、実際の経営の現場を考えれば、従業員全員が直接付加価値を生み出す要員ではありません。

経理や法務、開発など、企業を動かすために必要な部門や、将来の価値を高める活動などは、直接的に付加価値を生み出しません。
その分は営業、製造、物流など、直接的に付加価値を生み出す部門に割りがけられなければなりません。

付加価値を直接生む部門の労働生産性は、上記よりも更に高い水準が必要となります。
以前も少し取り上げましたが、中小製造業の値付け感で考えると、4,000円/時間の時間単価はまだまだ高い水準です。
2,000~3,000円/時間程度が現在でも標準的ではないでしょうか。
このような事業を労働生産性にすると、更に低い数値になりますね。

人の労働に対する対価を4,500円/時間とする事は、決して高くないですね。
先進国の中ではむしろ安いくらいです。

まずは自分たちの仕事の労働生産性をざっくりと計算してみると良いかもしれませんね。
是非この業務の棚卸をしてみて、自社の業務の振り返りをしてみていただければと思います。

皆さんはどのように考えますか?

参考: 最新状況

(2023年7月追記)

労働生産性の最新状況についてご紹介します。

図6 労働時間あたりGDP 実質 購買力平価換算 2022年
(OECD統計データより)

図6は労働生産性(労働時間あたりGDP)の実質 購買力平価換算値について、2022年の水準を比較したものです。

日本は48.0ドル/時間で、図5の41.8ドル/時間よりも成長しています。
ただし他国も成長していますので、OECD37か国中21位と1つ順位を落としています。

また、名目の購買力平価換算値では37か国中29位とかなり低い水準となります。

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