009 みんなが働ける国日本 - 失業率が低ければ良いのか?
1. 先進国の中では平均以下の日本
前回は、OECD各国の労働生産性と平均給与の関係について、バブルチャートを活用して視覚的に整理してみました。
その結果は、日本は労働生産性、平均給与、1人あたりGDPでOECDの平均にすら届いていないという残念なものでした。
もう一度、バブルチャートを示しておきましょう。

図1 1人あたりGDPと平均給与のバブルチャート2019年
(OECD統計データ より)
このままでは、残念な気持ちだけで終わってしまいそうです。
日本の状況に何か光明は無いものでしょうか。
2. 誰もが働ける国という考え方
色々と考えてみましたが、実は前回までに触れていない要素がある事に気づきました。
平均給与や労働生産性は、あくまでも仕事をしている労働者の指標です。
当然ながら労働していない人はこの統計に含まれません。
いくら労働者の平均給与が高くても、労働したくてもできない人=失業者が多くいては幸せな国とは言えないでしょう。

図2 労働参加率と失業率の各国分布 2018年
(OECD統計データより)
そこで、図2に労働参加率と失業率についてOECD+BRICs各国の分布をプロットしてみました。
(中国はデータ無し)
平均給与のバブルチャートと比較して眺めてみて欲しいのですが、必ずしも労働生産性、平均給与が高い国が低失業率というわけではないという事がわかります。
労働参加率(男女合計、15~64才)は、人口に対して、働く意思のある人の割合です。
労働参加率が高いという事は、既に働いているか働く意思のある人の割合が高い事を示します。
日本では少子高齢化により生産年齢人口の減少が懸念される中で、女性の労働参加率が上昇している面もありますね。
実際には女性労働者の増加と共に、高齢労働者が増えているという現実もあります。
労働参加率が高く、失業率が低い、つまり右下に行くほど、労働を希望する人が多く、実際に労働に就けている事を示します。
日本は比較的労働参加率が高い(35か国中8位)わりに、失業率が極めて低い(同2位)のです。
日本の人口がOECDの中でも多い方(アメリカ似次いで2位)であることを考えれば、これは素晴らしい状況にも見えます。
多くの人が就労を望み(望まざるを得ない場合も含みますが)、仕事があるという事を意味するからです。
逆に、平均給与のバブルチャートで、日本と近い位置にあるスペインやイタリアは、10%以上の失業率となります。
給与水準では上位にあるフランスも、失業率は8.8%と高い値となっています。
スイスや、カナダ、スウェーデン、フィンランドなど、比較的給与水準が高い国々も、失業率が高めです。
給与水準が高くても、仕事に就けない人が多いという事ですね。
もしかしたら、日本は平均給与は低いけれど、その分仕事をみんなで分け合っているという側面があるのかもしれません。
生産性や給与はそんなに高くなくても、みんなが働ける(または働かざるを得ない)国、そんな日本の姿が浮かび上がってきたのではないでしょうか。
一方で、その分非正規雇用が増えているという実態もありますね。
そして、人件費の総額が増えていないため、より多くの労働者で決まったパイを分け合っている状況とも言えます。
逆に失業率の低い国々は、再分配により所得格差や貧困率を改善しているというデータもあるようです。
どちらが継続性のある経済と言えるかわかりませんが、日本は「みんなが働ける国」という特徴があるようです。
働きたい人が働け、それと同時に働く人がより豊かになれる仕組みに変化していけると良いですね。
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