082 平成時代に日本経済が失ったもの

1. 先進国から落ちこぼれる日本

前回は日本の企業活動の推移を確認する事で、企業活動が1990年のバブル崩壊、1997年の金融危機を機に変質してしまった状態を取り上げました。
売上や付加価値は停滞しているけれども、海外展開などでの営業外の収益を上げて、純利益が増大しています。
従業員の給与総額はほとんど変化していません。

増大した利益は従業員に還元されず、社内留保と配当金に回っています。
本来給与は付加価値の分配ですので、付加価値上がらない以上給与も上がらないのは道理です。
そして、企業は空前の純資産を積み上げているという状況になっています。
このアンバランスな状況が日本経済の特徴といえそうです。

これから、企業の規模ごとに、詳細な分析をしていきたいと思いますが、その前に少し寄り道させて下さい。
(面白いグラフを思いついたので、先にこちらを進めさせていただきます)

先進国の中で、日本が停滞の中で何をどれだけのものを失ってきたのか、再確認していきたいと思います。
何回かに分けて取り上げていきますので、少しお付き合いいただければ幸いです。

GDP成長率 G7 OECD

図1 GDP成長率 G7
(OECDデータ より)

図1は、G7各国の名目GDP成長率です。

各国通貨での名目GDPを1997年を1.0としたときの成長率として表現しています。
日本(青)、アメリカ(赤)、ドイツ(緑)、イギリス(水色)、フランス(紫)、カナダ(ピンク)、イタリア(橙)です。
年率2%、破線が年率3%、点線が年率4%で一定成長した場合の成長曲線も示しています。

GDPはその国で生み出された「付加価値」の総計ですね。
企業活動とも密接に関係しています。

日本はずっと1.0近辺です。
停滞していて成長していません。

その他の先進国はどうでしょうか、アメリカ、イギリス、カナダはこの20年程でGDPが2倍以上になっています。
年率成長率では4%程度に相当します。
もともと経済大国であるG7各国でも、これだけ経済成長しているわけですね。
フランスで1.8倍、ドイツで1.7倍、イタリアでも1.6倍といった具合です。

ドイツ、イタリアはこの中でも水準は低い方ですが、それでも年率2%以上の割合で経済成長しています。
先進国の中でも特に経済レベルの高いG7で、経済成長率は低いのですが、それでもこの成長率です。

OECDの他の国は、もっと高い水準ですね。
韓国で3.5倍、オーストラリアで3.3倍です。

経済が大きく伸びている先進国では、メキシコで5.9倍、アイスランドで5.2倍、コロンビアで7.6倍です。
北欧諸国でもフィンランド2.1倍、スウェーデン2.4倍、ノルウェー3.1倍といた水準です。

日本だけが0%成長です。
1997年はまさに日本の転換点となった年です。

タラレバで経済を語っても仕方ありませんが、もし仮に1997年から他の先進国並みに経済成長していたら、を参考までに見てみましょう。

GDP 日本 推定 OECD

図2 GDP 推定 日本

図2が、日本の名目GDPの推移です。

OECDの数値を使っています。
黒い実線が実際の推移です。

1990年から成長が鈍化し、1997年にピークをつけて、停滞している状況ですね。
青い線が1997年から年率2%の成長をした場合、緑の線が年率3%の成長、赤い線が年率4%の成長をした場合のグラフを付け足しています。

もし日本が、停滞せずにそのまま他の先進国と同様の経済成長をしていたら、このようになっていたはず、というグラフです。

経済的に課題が多いとされるイタリアでも年率2%以上のGDPの成長があります。
先進国としては、日本に次いでイタリアが怪しい状況ですが、そのイタリアでさえ日本とこれだけの違いがあります。

日本がもし2%の成長していたら、2018年の時点で810兆円に達していた可能性があります。
3%なら994兆円、4%なら1,217兆円です。

普通に成長していれば500兆円とか、600兆円とか、そういったレベルではなくて、1,000兆円を超えていた可能性があるわけです。
既にみていただいたように、これは誇張しているわけでも、大げさに見積もっているわけでもなく、ごく真っ当に「低成長」と言われるレベルで成長していた場合の想定です。

むしろこうなった方が普通ではないか、というグラフですね。
図2を見ていただければ、黒い線よりも青や緑、赤の線の方が自然な感じがしませんか?

黒い線が現実です、日本の異常事態が良くわかるグラフではないでしょうか。

2. 家計消費の停滞ぶり

日本が異常事態なのは、GDPだけでしょうか。

他の数値についても、G7のグラフと比較していきましょう。

家計最終消費支出 成長率 G7 OECD

図3 家計最終消費 成長率 G7
(OECDデータ より)

図3は家計最終消費支出のグラフです。

アメリカ(赤)が2.3倍、カナダ(ピンク)が2.4倍の高水準で年率4%成長を超えます。
イギリスが2.1倍で年率4%弱、フランスが1.7倍で年率3%弱の成長率です。
イタリアは1.6倍、ドイツが1.5倍で低成長ですが、年率2%以上の成長がみられます。

日本だけ、やはりゼロ成長ですね。

家計最終消費支出 日本 推定

図4 家計最終消費支出 日本

1997年から日本の家計最終消費支出が成長していた場合のグラフが図4です。

直近でも300兆円を超えていない日本の家計消費ですが、最低限の2%成長でも400兆円を超えます。

つまり、少なくとも100兆円以上は家計消費が増えていないとおかしいわけですね。
3%成長ならば500兆円、4%成長なら600兆円を超えていても不思議ではないはずです。

他の国が成長している中で、日本経済の根本となる家計消費がこれだけ低迷しているという事は、経済停滞しているだけで相対的に国民が貧困化している事を示します。

数兆円とか、十数兆円というレベルではなくて、数百兆円も貧困化が進んでいると見て良いのではないでしょうか。
数値は名目値なので、物価との関連について疑問を持たれる方もいらっしゃると思いますが、物価の推移も次回取り上げます。

3. 唯一労働者が低所得化

さらに続けましょう。

平均給与 成長率

図5 平均給与 成長率 G7
(OECDデータ より)

図5が労働者の平均給与(Average annual wage)です。
やはり日本だけ停滞しています。

アメリカ、イギリス、カナダで1.8~1.9倍の3%成長です。
フランスで1.6倍、イタリア、ドイツで1.5倍となり、2%程度の成長があります。

ドイツは2009年頃まで伸びが悪かったのですが、それ以降は年率3%に近い傾きになっています。
近年になって賃金の伸びが良くなっているのですね。

逆にイタリアは右肩上がりではありますが、傾きは鈍化しています。
日本だけゼロ成長どころか、マイナスですね。

GDPや消費もひどかったですが、賃金は更にひどい状況です。
 参考記事: サラリーマンの貧困化

平均給与 日本

図6 平均給与 日本

図6が日本の平均給与の推移です。

直近で450万円に届かない水準です。

落ちこぼれと言われても仕方のない1%成長で570万円、ドイツ・イタリア並みの低成長(2%成長)で700万円、北米並みの3%成長で870万円という水準になっていてもおかしくないわけですね。

平均給与が最低でも200万円以上は上昇していないとおかしいレベルなのに、むしろマイナスになってしまっています。
GDPや家計消費はゼロ成長と呼べる推移だと思いますが、賃金は明らかなマイナス成長ですね。。。

4. 先進国の中で凋落する日本

いかがでしょうか、GDP、家計消費、平均給与について、G7との比較をしてみました。
そしてあったかもしれない日本の姿についても可視化してみました。

2%の成長は「最低限なければおかしい経済成長」という事もわかりました。

低成長の先進国でも最低水準と言える「2%成長」ができていたと仮定した場合、この20年程で日本が失ったものは、年間でGDP250兆円、家計消費120兆円、平均賃金250万円です。

今の停滞が当たり前となってしまった私たちの感覚からすると、とんでもない数字のように感じますね。
でもこの数字は、先進国として最低レベルの成長であれば普通に得られたはずの数値です。

確かに日本はバブル期に大きく経済水準が嵩上げされていて、その末の1997年を基準にすると成長率が他国と比べると低くなるのは仕方のない面もあります。

例えば、2019年の平均給与では、アメリカで66,000$、カナダで52,000$です。
2%成長の場合で65,000$程度となりますので、アメリカ並みの水準を維持できていたはずですね。
現実は、40,000$程度で、先進国36か国中20位とOECD36か国中すでに下位レベルにまで転落しています。

平均給与 1997年
平均給与 2019年

図7 平均給与 (左:1997年、右:2019年)

図7が1997年と2019年の平均給与の比較です。
日本(青)は1997年に非常に高い水準でしたが、その後成長していないため現在は多くの国に抜かれている状況がよくわかります。

今回は、GDP、家計消費、平均給与について取り上げましたが、次回は別な経済指標についても取り上げてみます。
物価や労働生産性などについても、同様に可視化してみたいと思います。

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