076 労働者の少子高齢化と貧困化 - 男性は各世代で低所得化

1. アンバランスになった年齢構成

前回は、日本のビジネス全体の値付け感が低すぎる事を取り上げました。
OECD各国の労働生産性を見ても、日本は先進国の中で下位グループに入る程度しか労働への価値をつけらえれていない実態も明らかになりました。
日本人は、自分たちの労働の価値を下げ、その対価である給与水準も下げています。
このどちらについても、通常の先進国(アメリカや、ドイツ、イギリスなど)は、この数十年、年2%以上のレベルで上昇を続けています。

日本だけが、停滞しているわけですが、この先活路はあるのでしょうか。
 参考記事: 「実質成長・名目停滞」の日本経済

今回は、労働者の構成と変化を見ていく事で、日本経済の将来の見通しを見ていければと思います。
変化の顕著な男性の労働者について、年代別の人数の変化を見てみましょう。

給与所得者数 男性

図1 給与所得者数 男性
(民間給与実態統計調査 より)

図1が各年代別の労働者数(給与所得者数)を比較したグラフです。

1999年と直近の2018年で比較しています。
少なくとも2019年末くらいまでは、人手不足とも報道されていましたが、実は男性の労働者数は合計では増えています。
(ちなみに女性の労働者はとんでもなく増えています(1999年→2016年で350万人くらい増))

男性労働者数は1999年が2,260万人に対して、2018年は2,354万人と約100万人増えています。

ただその年齢構成が随分と変化しているようです
まず、①若い人が減っている事、②40代が増えている事、③高齢者が増えている事でしょうか。

なんと、20代は450万人から290万人と、4割近く(160万人)減っています!
30代も550万人から、500万人と、約1割(50万人)減少していますね。
40代は520万人から660万人に増加(140万人)しています。
そして、60歳以上が190万人から、380万人と倍増(190万人)していますね。

差し引きで言えば、増加していますし、働き盛りと言われる40代が増えています。

ただ、将来を担う若い世代が減っている事が気になりますね。
1999年は各年代がバランス良く分かれていたのに対して、2018年は明らかにバランスが偏っています。

2. 低所得化が進む一般労働者

給与所得者数 男性 中小零細企業
平均給与 男性 中小零細企業

図2 中小企業の労働者数と平均給与(男性)
(民間給与実態統計調査 より)

図2は中小企業の年代別の男性労働者数平均給与の変化です。

ここでは、資本金1億円以未満を中小企業としています。
左が労働者数(給与所得者数)で、右が平均給与です。

労働者数は1999年に1,261万人でしたが、2018年は1,364万人と1割以上(103万人)増えています。

労働者全体に占める割合も、1999年に55.8%だったのが2018年には57.9%です。
男性労働者の6割近くは中小企業で働いていることになります。

労働者数は20代が大きく減り、40代、60歳以上が大きく増えています。
そんな中で、30代は少しだけ増えています。

他の企業規模と比べると、ここは結構ポイントになると思います。
そして、平均給与は各年代とも減少しています!

大体1割ほど減少していますね。
60歳以上は2割近く減少しています。
所得水準の元々低い中小企業の労働者が、更に所得が減り、人数が増えている状況です。

3. 中堅企業も厳しい状況

次に中堅企業(資本金1億円以上10億円未満)について見てみましょう。

給与所得者数 男性 中堅企業
平均給与 男性 中堅企業

図3 中堅企業の労働者数と平均給与(男性)
(民間給与実態統計調査 より) 

中堅企業も傾向は同じような感じですね。

労働者数は、1999年に352万人だったのが、2018年には366万人と微増しています。
男性労働者数全体のなかでは、1999年も2018年も15.6%と変わらない割合です。

年齢層はやはり40代、60歳以上が増えていて、20代が減っています。
中小企業とは違って、30代も減少していますね。
平均給与も軒並み減少しています。

ただし、中小企業が約1割減少していたのに対して、概ね5%位の減少にとどまっていますね。
20代は380万円から370万円と、ほとんど減っていません。

逆に60歳以上は660万円から500万円と、2割以上の凄い減り方です。
人数が大きく増えて、所得水準が大きく下がっています。

4. 先鋭化する若手エリート層

それでは、大企業(資本金10億円以上)について見てみましょう。

後日取り上げますが、この大企業だけ、日本の企業で段違いに生産性が突出している層です。

給与所得者数 男性 大企業
平均給与 男性 大企業

図4 大企業の労働者数と平均給与 (男性)
(民間給与実態統計調査)

図4が大企業の労働者数と平均給与です。
他の企業規模と傾向は似ていますが、ちょっと事情が異なる部分もありそうです。

まず合計人数から確認してみましょう。
1999年が647万人(全体の28.6%)でしたが、2018年は624万人(26.5%)と減少しているのです。
中小企業、中堅企業が増えているのに対して、大企業はまず全体の人数が減っています。

年齢別で見てみると60歳以上が大きく増加しています。
20万人から60万人と、約3倍に増えていますね。

そして20代、30代が大きく減っています。
20代が120万人から90万人と3割近く減少(30万人)していますし、
30代も180万人から140万人と2割以上の減少です。
特に30代が大きく減少しているのが特徴的です。

平均給与も少し状況が異なります。

60歳以上はやはり大きく減少(830万円→680万円)していますが、
人数が減っている20代、30代だけ少しですが増加しています。

20代は420万円→430万円、30代は640万円→650万円ですね。

実は、男性の場合、大企業の20代、30代だけ給与水準が上がっているわけですね。
その分人数は大きく減っています。

若手のエリートと呼べる人たちだけが、所得水準が上がり、人数が減っています。
まさに先鋭化していると言えるのではないでしょうか。

そして、大企業はもはや日本人労働者をあまり必要としていないようにも見受けられます。
海外進出が大きく進むのもこの層の企業ですから、日本人から現地人への転換が進んでいるとも考えらえれると思います。

5. 全体的に低所得化の進む男性労働者

今回の統計結果を、まとめてみましょう。

① 男性の労働者数は増加している
40代と60歳以上は増えているが、20代30代は激減していてアンバランスな構成になっている
給与水準は軒並み下がっているが、大企業の20代、30代だけ上がっている
④ 30代は中小企業で人数が増え給与水準が下がり、大企業で人数が減り給与水準が上がっている
60歳以上は大きく人数が増えているが、給与水準も大きく減少している

特にこれからビジネスの中心となっていく30代の世代内格差が広がっている事を重く受け止めるべきかなと思います。

給与水準が下がっている一般の層が増えている一方で、エリート層だけ人数が減りながらも給与水準が上がっているわけですね。
これは、世代内での格差が広がっていると見るべきではないでしょうか。
また、コロナ禍の影響もあると思いますが、大企業はこれからリストラが進む可能性がありますね。
特に人数の多い40代、50代を中心に、日本人労働者の削減が加速する可能性があります。

大企業ほど経営の効率性を求められますから、最も大きなコスト要因である人件費を抑制するために、急速に従業員解雇を進める可能性が考えられます。
そして、大企業から転落した人は、中堅企業や中小企業が受け皿となれれば良いのでしょうが、いきなりギグワーカーなど非正規の労働者に転落する可能性もあると思います。

海外進出の進みやすいメーカーや、IT化・自働化の進む金融関係は既に始まっていますね。

労働者の低所得化が進んでいる事を本ブログでも取り上げてきましたが、①高齢者の増加、②女性労働者の増加によって、平均給与が下がっているものと考えていました。
今回明らかになったのは、男性でも世代や企業規模を問わず全体的に低所得化している事です。
一部若手エリート層のみ所得は上がっていますが、大多数は下がっています。
その分格差が広がっているとも読み取れます。

人数が減れば、1人あたりの生産性を上げて、その分給与水準も引き上げていく、という本来の姿が垣間見える部分かもしれません。
企業経営者はこの事実に対して、何を考え、どのように行動していけば良いでしょうか。

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