085 先進国の経済成長の特徴 - 日本経済の特殊性

1. 主要国の経済成長は一般的か

前回は、GDP家計消費労働生産性平均給与消費者物価指数などの各種経済指標について、1997年以降の成長率の比較を行いました。
1997年を基準にすると、日本だけはほぼゼロ成長のまま推移してしまっています。
他の先進国は1997年からの成長率で見れば、GDPや家計消費が概ね1.5~2.4倍、労働生産性や平均給与が1.4~1.9倍、物価は1.3~1.6倍となっています。
GDP、家計消費が最も増加し、次いで労働生産性、平均給与、最後に物価が緩やかに上がるという先進国型の経済成長の共通点を可視化しました。

このような傾向は、G7などの経済規模の大きい国特有なのでしょうか。
今回はOECDの他の国についても、同様に経済成長のカタチを見える化していきたいと思います。
まず、社会保障負担が大きいと言われる、高福祉高負担の北欧から見てみましょう。

スウェーデン 各種指標の推移

図1 スウェーデン 各種経済指標 成長率
(OECD 統計データ より)

図1がスウェーデンの経済成長のグラフです。

とてもきれいな形ですね。
1997年を基準に、成長率が大きい順に、1. GDP、家計消費、2. 1人あたりGDP、労働生産性、平均給与、3.消費者物価指数(CPI)となっているのはG7各国(日本以外)と同様です。

スウェーデンの特徴は、全体的に成長率が高い(年率3~4%成長)割りに、物価の上昇が低い事ですね。
物価上昇は1%程度と、非常に緩やかです。

GDPや家計消費は20年程の間に2倍以上となっていますので、物価との差し引きで、
他の先進国よりも、豊かになる程度(実質成長率)が大きいという事がわかります。

フィンランドやノルウェー、デンマークなどの北欧諸国も、程度の違いはありますが、概ね同じような経済成長を遂げています。
北欧型の高負担高福祉国でも、順調に経済成長しているわけですね。

2. 経済成長の大きな国はどうなっている?

もう少し別な国についても見てみましょう。

G7や北欧よりも、経済成長の度合いが大きい国です。

韓国 各種指標の推移

図2 韓国 各種経済指標 成長率
(OECD 統計データ より)

図2が韓国のグラフです。

韓国は経済が行き詰まっている、とお考えの方もいらっしゃると思いますが、これを見ると大きく成長していることが分かりますね。
GDPはこの20年程で3.5倍になっています。

年率にすると6%成長ですね。
家計消費が2.9倍、平均給与が2.3倍、1人あたりGDPは2.1倍、物価は1.6倍です。
労働生産性の上昇が3.6倍と、特に目を引きますね。

韓国は特に平均労働時間が大きな国だったのですが、それが徐々に減っていく分、時間当たりの労働生産性が急速に上昇しているという事でしょうか。

メキシコ 各種指標の推移

図3メキシコ 各種経済指標 成長率
(OECD 統計データ より)

図3がメキシコのグラフです。

メキシコはグラフの通り、非常に高い成長率です。
GDP、家計消費は6倍近く、労働生産性、平均給与は4倍程度、物価は3倍程度に上昇しています。

もちろん当初の水準が低い事もありますが、OECDの中でもこれだけの高成長をしている国もあるわけですね。
これらの国は、20年間で何割ではなく、何倍というレベルで成長している事がわかると思います。

3. 経済の変調が大きな国も見てみよう!

一方で、近年になり経済が大きく変調した国が日本以外にもう1国あります。
経済危機と報道されることの多いギリシャですね。

スペインも他の先進国と比較すると、成長が鈍化している国ですが、ギリシャや日本ほどではなく、イタリアに近いカタチ(プラス成長)をしています。

ギリシャ 各種指標の推移

図4 ギリシャ 各種経済指標 成長率
(OECD 統計データ より)

図4がギリシャのグラフです。

ギリシャは当初非常に高いレベルで成長していましたが、2008年をピークにして減少し、停滞しています。
1997年をピークにしていた日本経済と似ているところがありますね。
日本の場合は、1997年からほぼ横ばいで停滞している状況ですが、ギリシャは明らかに2008年をピークにして大きく減少しています。

2013年頃から持ち直しつつあるようですが、ピークから見るとマイナスに落ち込んで停滞しているように見えます。
直近では、物価よりも平均給与の方が低くなってしまっていますので、1997年時点と比べると、人々の実質的な生活は苦しくなっているはずですね。

1997年から見れば、確かに経済成長はしているけれども、物価上昇の方が高くなっていて、差し引きの実質賃金が減少している状況です。
とはいえ、2016年あたりからGDPや1人あたりGDP、平均給与が上昇し始め、1~2%成長程度の傾きを示しています。

これからギリシャも持ち直していく予兆は見られますね。

4. 経済成長の標準型

いかがでしょうか、今回はG7以外の国についても、経済成長のカタチを見てみました。

明らかに変調をきたしているギリシャを除けば、スウェーデンなどの北欧諸国や、韓国・メキシコなどの経済成長率の高い国などでも多少の傾向の違いがありながらも、基本的には1. GDP消費、2.労働生産性平均給与、3.物価という順番で経済成長している事がわかりました。

平均給与を基準にして考えると、平均給与よりも高い水準でGDPや消費が伸び、平均給与よりも低い水準で物価が緩やかに上昇しています。

最低限の成長レベルとしては、GDP、消費が年率2.5%以上、労働生産性、平均給与が2%以上、物価が1%以上といったところが、近代国家の経済成長の標準値となりそうです。

日本 各種経済指標

図5 日本 各種経済指標 成長率
(OECD 統計データ より)

もう一度日本のグラフを図5に示します。

日本の場合は物価(紫)よりも平均給与(オレンジ)の方が下になってしまっています。
つまり、名目値だけでなく、実質的な所得がマイナスになっている状況ですね。

1997年と比べると労働者が貧しくなっているわけです。
給与が増えないため、消費についても抑制されてしまっていて成長できていない、と見れるのではないでしょうか。
賃金が増えず消費が増えないから、企業も売り上げが伸びずに、賃金を抑制する、という負の循環に陥ってしまっているように見受けられます。

日本経済で必要になるのが、「労働者の賃金が上昇していく事」であることは間違いないと思います。

図5でいえば、まずは給与が増加し始め、家計消費が給与以上に増加して、緩やかに物価が上昇する、というグラフに変化していく事が、今後日本経済が停滞から抜け出して継続的に成長していくためのポイントだと言えるのではないでしょうか。
実際に2012年頃からはそのような兆候が出始めているようにも見受けられます。

長期的に経済成長していくためには、企業経営者や消費者・労働者として何ができるかを、統計データを元に一緒に考えていければと思っています。

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