109 経済の主役は中小企業 - 労働者の7割が働く重要な存在

1. 日本の企業はどれだけあるのか?

前回はビジネスの流出一方の日本型グローバリズムについて取り上げてみました。
大企業などは海外進出を進め、多くの事業を海外現地法人で行っていることが分かりました

以前は日本企業全体の、売上、付加価値、人件費などの時系列データを取り上げました。
これらはいずれも、1991年のバブル崩壊と1997年を転換点として長期的に停滞傾向です。

一方で、営業外利益や当期純利益、配当金、社内留保などは近年急激に増大しています。
企業活動が大幅に変化している状況が見て取れます。
 参考記事: 日本企業の変質

最近は、中小企業の再編などについても注目が集まっていますね。
日本において、中小企業とはどのような存在なのでしょうか。

企業と聞くと、大企業が頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。
しかし、これからご紹介させていただく統計データを見ていただく中で、日本経済においては中小企業こそ、私たち国民生活に身近な存在である事を感じていただけるのではないかと思います。

ここからは、日本の企業を規模別に眺めていきたいと思います。
取り扱うのは、法人企業統計調査です。

この統計調査では、資本金による企業規模別に統計データが集計されています。
ここでは、日銀の短観データ等に合わせて、次のように区分して企業規模別のデータを取り上げていきます。
中小零細企業: 資本金1億円未満
中堅企業: 資本金1億円以上、10億円未満
大企業: 資本金10億円以上

また、資本金1,000万円未満を零細企業、1,000万円以上1億円未満を中小企業とします。
非営利目的の法人などは、この統計に入らないようです。
したがって、宗教法人や公務員などはこの統計の範囲外になりますね。

日本の企業規模の定義の仕方には、資本金と従業員数、そして業態(製造業なのか、サービス業なのかなど)によって、細かく規定されていますが、ここではあくまでも資本金のみで区分しています。
(政府統計では、このように企業規模に関しての統一的な区分がなされていないので、非常に扱いにくいです)

まず、企業数についてみてみましょう。

日本 法人企業 企業数

図1 企業数 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図1が企業数のグラフです。
1960年からの長期時系列データです。

中小零細企業は左軸、中堅企業大企業は右軸です。
中小零細企業は2005年あたりで鈍化は見られますが、基本的には右肩上がりで増加しています。

直近では、279万社となり、全企業の99%を占めます。
中堅企業は約2万5,000社で0.9%、大企業は約5,000社で0.1%です。

少し意外ですが、中堅企業と大企業は、近年減少傾向にあるようです。

特に中堅企業は2008年以降で大幅に企業数を減らし、大企業も2002年あたりから減少傾向のようです。

「日本の中小企業は多すぎる」という論調を最近多く見かけます。
確かに絶対数としては先進国の中でも多い方ですが、人口あたりの中小企業数ではむしろ少ない方です。
 参考記事: 日本の中小企業は多すぎ!?

印象論で決めつけるのではなく、しっかりと数値を確認する事が大切ですね。

2. 労働者の分布は?

次に、それぞれの企業規模別に、どれだけの労働者が働いているのか見てみましょう。

日本 法人企業 労働者数

図2 労働者数 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図2が企業規模別の労働者数(期中平均)です。
労働者数は従業員数と役員数を合わせた数値になります。
役員=経営者も経営という企業活動を担い、役員報酬という給与を受け取る労働者ですね。
中小企業経営者は、株主=オーナーである事も多い事から、株主と役員を混同しがちなので注意が必要と思います。

労働者数は全体としては右肩上がりで増大しています。
もちろん、今まで見てきたように、近年でこれだけ労働者数が増えているのは、女性高齢の労働者が増えたためです。
労働世代の男性労働者数はむしろ減少しています。

労働者数では圧倒的に中小零細企業で働く人が多いですね。

直近では、法人企業で働く労働者約4,800万人のうち、中小零細企業が約3,500万人、中堅企業が約700万人、大企業が約800万人です。
中小零細企業と中堅企業は増加傾向に対して、大企業の労働者は1993年あたりから停滞しているように見えます。

日本 法人企業 労働者数 シェア

図3 労働者数シェア 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図3が企業規模別の労働者数シェアです。

中小零細企業が70%前後、中堅企業が15%前後、大企業が20%前後のシェアです。
近年ではやや中小零細企業のシェアが小さくなり、中堅企業のシェアが大きくなっています。

1960年から、実に60年近く、シェアがほとんど変わらないというのは不思議ですね。
企業に勤める労働者のほぼ7割が中小零細企業に勤めているという事になります。

大企業や中堅企業で働く労働者よりも、中小零細企業の労働者が大多数である、という事は是非覚えておきたいと思います。

3. 付加価値はどれくらい稼いでいるのか?

次に、各企業規模別の付加価値額について見てみましょう。

日本 法人企業 付加価値

図4 付加価値 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図4が付加価値の推移です。

付加価値は、その企業の事業活動によって加えられた仕事の価値ですね。
直近では全企業で約320兆円のうち、中小零細企業で約160兆円、中堅企業で約50兆円、大企業で約105兆円といったあたりです。

GDP(国内総生産=1年間の付加価値の合計)は直近で約540兆円ですので、法人企業(金融業・保険業以外)だけで約6割の付加価値を生み出しているという事になります。

1990年を境に、付加価値は急に停滞し始めます。
やはりバブル崩壊の影響によるものと考えられますね。

大企業、中堅企業では2010年頃からやや上昇傾向が見られます。

日本 法人企業 付加価値 シェア

図5 付加価値シェア 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図5が付加価値シェアです。

概ね中小零細企業が50~60%、中堅企業が15%前後、大企業が30~40%といったあたりのようです。
1990年以降は中小零細企業のシェアが縮小気味で、中堅企業、大企業のシェアが大きくなってきているようです。

直近では中小零細企業が約50%、中堅企業が約16%、大企業が約34%のシェアですね。
付加価値の半分は中小零細企業が稼いでいる、という事も重要な数値と言えそうです。

4. 中小企業は国内経済の主役

今回は日本の法人企業について、企業数従業員数付加価値を取り上げてみました。

私たち日本国民にとって、中小零細企業は企業数では99%、従業員数では7割、付加価値では50%のシェアを占める存在です。

ただ、7割という圧倒的多数が関わる中小企業で、稼ぎ出す付加価値が50%に過ぎないわけですね。
1人あたりの生産性では、大企業や中堅企業との大きな隔たりがあるという事になります。
これが中小企業が生産性が低いと言われる理由なのだと思います。

大企業の多くがグローバル化し「働く場」として切り離されつつある中で、中小企業は時代の変化に柔軟に合わせながら国民生活に密接に関わる存在のはずですね。

国内経済の主役である中小企業と、そこで働く多数の労働者=多くの国民が豊かになっていく事は、日本経済が成長していくための本来の道なのかもしれませんね。

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