165 建物・構築物への投資水準 - 1人あたり資産額の国際比較

1. 日本の建物への投資

前回は、生産資産のうち機械・設備について取り上げてみました。
工業立国でもある日本は、一時期高い水準にまで高まりますが、その後の停滞により、現在は同じ工業立国であるドイツにも大きな差をつけられてOECD平均値と同じ程度となっています。

住宅(主に家計)、機械・設備(主に企業)と見てきましたので、今回は橋梁や工場などのその他の建物・構築物(Buildings other than dwelling)について注目してみたいと思います。
その他の建物・構築物は、主に政府の公共投資や企業の施設(工場、研究所、オフィスビルなど)が含まれると考えられます。

まずは、日本の推移からです。

生産資産 その他の建物・構築物 日本

図1 生産資産 その他の建物・構築物 日本
(OECD統計データより)

図1が日本の生産資産(固定資産)のうち、その他の建物・構築物の推移です。

その他の建物・構築物は、住宅以外の建物(青)とその他の構築物(赤)に分かれます。

住宅以外の建物は、工場やオフィスビルなどが考えられますが、1990年代から横ばい傾向が続いています。
一方で、その他の構築物は橋梁等の公共的な構築物が該当するはずですが、増加傾向が継続しています。
1990年代からすると400兆円程増えていますね。
これらの構築物は耐用年数が長く、資産価値が増えやすいという特徴もあるかもしれません。

2. 人口1人あたりの国際比較

その他の建物・構築物の水準について、人口1人あたりのドル換算値で国際比較してみましょう。

生産資産 その他の建物・構築物 1人あたり

図2 生産資産 その他の建物・構築物 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)

図2は生産資産のうち、その他の建物・構築物について1人あたり ドル換算値の推移をグラフ化したものです。

やはり、1980年代後半から2000年代中盤まで、日本は非常に高い水準に達していた事になります。
住宅や機械・設備よりも相対的な水準が高い事が特徴的です。

1990年代後半から停滞気味ですが増加傾向が続き、直近でもアメリカよりも低い数値ですが、ドイツや韓国よりも高い水準です。

3. 先進国で最も資産の多かった1990年代

日本経済のピークだった1997年を切り取ってグラフ化してみましょう。

生産資産 その他の建物・構築物 1人あたり 1997年

図3 生産資産 その他の建物・構築物 1997年 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)

図3が1997年のグラフです。

日本は56,815ドルで、アメリカ(34,764ドル)、ドイツ(31,858ドル)を大きく引き離して、OECD24か国中1位の水準でした。
平均値(25,241ドル)の2倍以上という極めて高い水準ですね。

4. 今も高水準の資産

それでは、直近の2018年のデータも見てみましょう。

生産資産 その他の建物・構築物 1人あたり 2018年

図4 生産資産 その他の建物・構築物 1人あたり ドル換算
(OECD 統計データ より)

図4が2018年のグラフです。

日本は75,583ドルで、アメリカ(83,678ドル)に次いでOECD32か国中6番目の水準です。
OECDの平均値が51,398ドルなので、平均よりも1.5培近く高い高水準を維持しています。

住宅は平均以下、機械・設備は平均並みであったのに対して、その他の建物・構築物は停滞気味ではありますが今なお高い水準ですね。

5. 成長度合で見るその他の建物・構築物

次に1997年からの成長率を眺めてみましょう。

生産資産 その他の建物・構築物

図5 生産資産 その他の建物・構築物 成長率
(OECD統計データ より)

図5は1997年を基準(1.0)としたその他の建物・構築物の自国通貨ベースでの倍率です。

日本はやや増加傾向になるようです。
ドイツは1.5倍、アメリカやイギリスは3倍程度となります。

その他の建物・構築物は耐用年数が長いため、資産価値が蓄積しやすいという特徴もあるかもしれませんね。

6. その他の建物・構築物の特徴

今回は生産資産のうち、その他の建物・構築物の水準を比較してみました。
日本は1990年代に極めて高い水準に達し、その後もやや停滞気味ながら、近年でも先進国で高めの水準をキープしています。

生産資産 日本

図5 生産資産 推移 日本
(OECD 統計データ より)

図6は日本の生産資産の推移グラフです。

同じグラフにまとめると、それぞれの資産の規模がわかります。
日本の場合はその他の建物・構築物が非常に大きく、しかも増加を続けています。

住宅や機械・設備は停滞しています。
停滞が始まるタイミングも特徴的で、GDPや平均給与などの動きとも連動しています。

主に家計の資産である住宅は、平均給与やGDPが停滞し始める1997年から停滞が始まります。
一方で、主に企業の資産である機械・設備はバブル崩壊の1991年から停滞が始まっているように見えますね。

公的固定資本形成(いわゆる公共投資)は、1997年をピークにして減少していますが、その他の建物・構築物の資産額は右肩上がりであるというのはとても興味深いですね。
橋梁などの構築物は比較的長い耐用年数のため、価値が毀損しにくく資産額が増加しやすい傾向にあるのかもしれません。
もちろん、台風や地震など災害が多い土地柄ですので、防潮堤等の建造物に対する需要は、他国よりも大きいのは確かと思います。

一方で、災害が多く、木造家屋も多い日本の住宅は総じて耐用年数が短く設定されているため、資産価値が目減りしやすいという特徴もあると思います。
その分だけ、住宅という資産を毀損しやすく、継続的な住宅投資が必要な土地柄という事でもありそうですね。

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