158 「衰退先進国日本」の実態とは
1. バブル崩壊から停滞する日本経済
前回は、改めて労働者の平均所得の国際比較をしてみました。
日本人の労働者はかつて、先進国の中でも極めて高い所得水準を誇っていたことがわかりました。
ただし、バブル崩壊以降は停滞がつづき、右肩上がりで成長する他国に追い抜かれたり、追いつかれたりしています。
現在は、OECD35か国中20番目で、OECD平均値を下回る水準にまで凋落してしまっています。
国の豊かさを測る指標として、労働者の所得水準と同じくらい重要なのが「1人あたりGDP」ではないでしょうか。
内閣府の公開している、「用語解説」によれば、GDP(国内総生産)は「居住者たる生産者による国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額である。」と説明されています。
「付加価値」とは、「産出額から中間投入を控除したもの」です。
つまり、私たちが仕事を通じて加えた金額的な価値となります。
このGDPを総人口で割って、人口1人あたりにしたのが「1人あたりGDP」です。
国民の平均的な生産性といえる指標です。
以前はフローニンゲン大学のPenn World Tableという統計データをご紹介しました。
今回は改めてOECDの長期データを見つけることができましたのでご紹介したいと思います。

図1 1人あたりGDP 推移 名目値 ドル換算
(OECD 統計データ より)
図1は1970年からの「1人あたりGDP」の推移です。
名目値、ドル換算値となります。
日本は1980年代中盤から1995年にかけて急激に増大し、その後停滞しています。
名が帰還停滞しているうちに、ドイツやカナダ、イギリスなどには追い抜かれ、韓国などには差を詰められている様子がわかるのではないでしょうか。
2. 日本経済が飛躍した1980年代
それぞれの年代で切り取ったグラフについても順次見ていきましょう。

図2 1人あたりGDP 1970年 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)
図2が1970年のデータです。
昔のデータほどデータ数が少ないのですが、ご容赦ください。
日本はこの頃2,045$で、OECD平均値の2,576$にも満たない水準の国だったようです。
アメリカ(5,233$)の半分以下で、カナダ、ドイツなどG7中で最下位です。
データのある26か国中19位と下位グループに属しますね。

図3 1人あたりGDP 1985年 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)
図3は1985年のグラフです。
日本は11,556$で、アメリカ、ドイツに続きG7中3位、OECD27か国中9位、平均値9,180$を大きく上回る水準にまで躍進しています。
3. 日本経済の絶頂期から停滞へ

図4 1人あたりGDP 1997年 名目 ドル換算
図4が1997年のグラフです。
1997年は日本国内の統計データでピークとなった絶頂期ですね。
(ドル換算だと1995年がピークです)
日本人の1人あたりGDPは35,034$で、OECD平均値18,925の倍近くの水準を誇りました。
G7中ではアメリカを抜き1位、OECD37か国中で4位と極めて高い順位です。
ただ、1997年は、長く続く停滞の起点となった年でもありますね。
ここから日本は、国際的にみれば凋落の一途を辿ります。

図5 1人あたりGDP 2010年 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)
図5が2010年のデータです。
日本は44,517$と1997年の水準よりは増加しているように見えますが、順位はかなり後退しています。
G7中3位、OECD37か国中13位です。
また、OECDの平均値が36,461$ですので、平均値の倍近くを誇った1997年から比べると、この時点ですでに他国からかなり追い上げられている状況がわかるのではないでしょうか。
4. ついに平均以下の国へと転落した日本経済

図6 1人あたりGDP 2019年 名目 ドル換算
(OECD 統計データ より)
そして、図6が直近の2019年のデータです。
日本は、40,292$で、G7中5位、OECD37か国中20位です。
OECD平均値が40,400ですので、平均値すら下回ってしまいました。
奇しくも平均所得と同じく、OECD中で20位で、平均値よりも少し下のレベルが現在地となります。
1人あたりGDPと平均所得は極めて強い正の相関がありますので、どちらも同じ程度というのは当然の成り行きですね。
日本は先進国の中では人口が多いので、GDPで言えばまだ世界第3位の経済大国です。
しかし、1人あたりの指標にすれば、「平均よりちょっと下の先進国」に過ぎません。
1970年代頃の状態に逆戻りしたような状況です。
しかも、現在絶賛停滞中で、今後この傾向が続けばさらに転落が進みそうな気配です。
速やかにこの停滞から抜け出して成長軌道に戻り、1人1人が豊かに暮らせる社会にしていく必要があると思います。
このままだと、「発展途上国」化もしくは、「衰退国」となってしまいますね。
いつまでも「GDP世界第3位の経済大国」という人口の多さで有利なだけの指標に縋りつくのではなく、国民1人1人の豊かさを表す「1人あたりGDP」を真摯に受け止めて、これを向上させるような意識に転換していく必要があるのではないでしょうか。
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