141 政府の負債は増えるもの?
1. 北欧も中韓も右肩上がり
前回は、政府の収支や負債についてフォーカスしてみました。
G7各国と日本との比較をしてみると、日本だけ経済が停滞し、収入も支出も停滞している中で、負債だけが増大している状況と言う事がわかりました。
せっかくですので、今回はG7以外の国についても同様のグラフを見ていきましょう。

図1 政府の収支と負債 韓国
(IMF World Economic Outlook Databaseより)
図1が韓国の政府の収支と負債の推移です。
青が政府収入 - General Government Revenue
赤が政府支出 - General Govenrment Total Expenditure
緑が政府収支 - General Government Net Borrowing / Lending
ピンクが政府純負債 - General Government Net Debt
オレンジが政府負債 - General Government Gross Debt
黒がGDP - Gross Domestic Product
韓国は凄い勢いでGDPが成長していますが、政府収入も政府支出も比較的割合は少ないですね。
負債も少ないようです。
純負債は2010年→2012年で急激に減少しています。
直近の政府負債対GDP比は42%、政府純負債対GDP比は11%程度です。

図2 政府の収支と負債 中国
(IMF World Economic Outlook Databaseより)
図2が中国のグラフです。
やはりGDPの増加が著しいですね。
政府収入も支出も大きく増加しています。
最近では政府支出の方が大きく、収支はマイナス、政府負債は増加しているようです。
直近の政府負債対GDPは52%程度です。
欧米や中韓以外の国も見てみましょう。

図3 政府の収支と負債 スウェーデン
(IMF World Economic Outlook Databaseより)
図3が北欧のスウェーデンのグラフです。
GDPも政府支出、政府収入も右肩上がりですね。
他の国と異なるのは、政府負債が横ばいで、政府純負債は減少が続いている点でしょうか。
政府支出も政府負債も、他国と比べるとやや高い割合のようです。
高福祉高負担と言われる北欧の特徴なのかもしれませんね。
直近の政府負債対GDP比は35%、政府純負債対GDP比にいたっては3%程度です。
実質的にほぼ負債ゼロの政府運営をしているという事になりますね。
このように、経済成長しながら政府支出や政府収入を増やしているのは、G7だけの状況ではなく、先進国全般に当てはまる傾向と言えそうです。
2. 何故負債が増えるのか?
日本以外の国は、経済成長しながら、政府支出も政府収入も増えていることがわかりました。
次に政府の支出と収入の成長率についても見てみましょう。

図4 政府支出 成長率
(IMF World Economic Outlook Databaseより)
図4は政府支出の成長率を表したグラフです。1991年を100とした時の比率で表現しています。
各国とも右肩上がりですが、日本だけ途中から停滞していることがわかりますね。
1998年に極端に上がってピークを付けた後減少し、2009年以降少しずつ増えています。
よく見るとイタリアとフランスは成長率が鈍化していますね。

図5 政府収入 成長率
(IMF World Economic Outlook Databaseより)
一方で、図5が政府収入のグラフです。
やはり各国とも右肩上がりで成長していますが、日本の場合はずっと横ばいです。
2013年頃からややプラスになっている程度でしょうか。
図4と図5を良く見比べて欲しいのですが、日本の場合は1991年を基準にすると、政府の支出は増えて、収入は停滞しているわけですね。
その分、収支がずっとマイナスで推移し、3負債が増え続けているという事が言えそうです。
少子高齢化が進む中で、社会保障費が増大しています。これに伴い、公共事業を削減しつつも、政府最終消費支出や社会保障費(年金などの給付)を増やしているわけですね。
一方で、経済が停滞していますので、税収が停滞しています。消費税は増やしていますが、法人税率減とのバーター的な増税で、国税徴収そのものは停滞していますね。
現役世代の支払う社会保険料は増大していますが、政府収入トータルで見るとこのように停滞が続いているという事ですね。
3. 政府の負債よりも大切なもの
経済が成長せず、パイが増えない中で、公共投資などの社会への投資を減らしていますから、経済が更に停滞するのは当然だと思います。
また、企業の海外進出やデフレによって国内経済の空洞化と国民の貧困化が進んでいます。
本来経済成長の大きな推進をするはずの家計は消費を控え、負債を増やす主体であるべき企業は投資を控えて負債を増やしません。
また、家計は住居への支出も減らしていますので、一方的に金融資産を増やしています。
政府も公共投資を減らしたままです。
本来負債を増やす企業の代わりに、政府が負債を増やし、家計の資産を増やしているという状況ですね。

図6 日本の純金融資産
(日本銀行 資金循環 より)
図6が日本の純金融資産です。バブル崩壊の頃から企業が純負債を増やしていません。
その代わりに、政府と海外が純負債を増やしていますね。その反対で家計の純金融資産が増大しているのがわかると思います。
明らかに変調しているのは企業ですし、家計は一方的に豊かになっている状況です。
ただし、この家計の豊かさの正体は、一部の富裕層と高齢層に資産が偏在している状況です。
勤労世帯は貧困化が進んでいます。
企業が負債を増やさ(せ)ず、実体経済が停滞しているからですね。
このような停滞がずっと続いた事で、海外から見ると最先進国から普通の先進国並みまで後退しています。
一方で、一時期極端に高まった物価水準や、設備投資・公共投資の水準も他国並みにまで後退しています。
労働生産性や、平均所得はむしろ先進国としては低い方ですね。
見方によっては、現在が停滞から成長へ向けての転換点とも言えそうです。
コロナ禍への対処も含めて、対処方法を誤らなければ、日本がまた経済成長軌道に戻れる余地も大きいのではないでしょうか。
政府負債の大きさばかりに気を取られて、大切な観点を忘れてはいけませんね。
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