105 日本経済を好転させる鍵とは?

1. 経済統計ブログを始めたワケ

1-1 憤慨したビジネスマッチング

実は、本日このブログ「日本の経済統計と転換点」を開始して、丸1年を迎えます。(2020年現在)

折角ですので、ここで何故私が日本の経済統計をブログで無料公開し、このような活動を始めたのかについて改めてご案内させていただきたいと思います。
そして、経済統計を整理する活動から見えてきた、日本経済復活への鍵と思われるポイントを共有させてきいただきたいと思います。

このブログを始めることになったきっかけは、製造業のビジネスマッチングに参加した時に感じた、「落胆」と「怒り」そして「危機感」でした。
まずはこの経緯からご説明していきます。

当社は、いわゆる家族経営の典型的な零細町工場です。
私自身日々真っ黒になりながら、医療器具や食品機械の部品を作ったりしています。
後になって気づいた事ですが、このような職人による加工業者は近年極端に減少していて、需要よりも供給が激減している分野のようです。
大変ありがたいことに、当社では比較的近隣でお得意様と呼べる何社かの受託製造の仕事を継続する事ができました。

医療や食品機械、理化学装置の分野は、比較的規模の小さいニッチメーカーが多い業界で、当社の規模で直接お取引させていただける客層もこの業界に多く存在します。
ただし、「いつお客様が行き詰まるかもしれない」というリスクが付きまといますので、常に新規顧客、新規案件獲得の活動を継続しています。

私たちのような製造業では、金融機関や公的機関が主催する「ビジネスマッチング」が頻繁に行われています。
近年私も、新規顧客の開拓のためにビジネスマッチングに多く参加させていただいています。

発注サイドの参加企業は、大手企業はもちろんですが、数十名~数百名程度の中小企業も多く参加しています。
当社のような零細町工場からすると、それでも一回り以上規模の大きな企業ばかりです。
通常15分程度の商談時間の中で、まずは自社の概要の説明や、アピールポイントを説明し、マッチするような案件などがあれば詳細のお話まで商談が進みます。

10年程前から、色々な商談会に参加させていただきましたが、ここ数年は明らかに状況がおかしいという事に気づいたのです。

それは、発注者サイドが明らかに「疲弊している」と感じられる事でした。

そして、商談会で話される内容は、「わくわくするような新しい技術に関する話」等ではなく、「誰でも作れる部品を1円でも安く作れないか?」といった値段に関する話ばかりになったのです。

商談相手は一様に、「今発注している外注先よりも、1円でも安く受けてくれる下請けを探さなければならない」といったプレッシャーを受けているように見受けられました。

1-2 仕事の価値って何だろう?

このブログでも何度も述べさせていただいていますが、当社の時間単価(≒労働生産性)は、4,500円/時間が基本です。
これは、このブログを始めてから定めたのではなく、昔から4,000~5,000円/時間という意識があっての事でした。
この値付け感は、現在の日本人の平均的な所得水準から導き出される労働生産性と一致します。
つまり、安くも高くもない金額です。

そして、日本はこの30年程停滞していますので、先進国の中で見れば、品質のレベルに対して、相当に安い値段と言えます。
先進国(例えばアメリカやドイツなど)では、私たちのような末端の加工業者で6,000~8,000円/時間程度でもおかしくないのです。
 参考記事: はたして日本は先進国か 労働生産性編

しかし、ビジネスマッチングの場で、この「4,500円/時間」を言おうものなら、大抵がそこで商談終了です。
「おたく高いね、うちから仕事は出せないな」の一言で終わりなのです。
徐々に、彼らの求めているのは、1,500~2,000円/時間くらいで加工を引き受けてくれる、「超割安な加工業者」のみである事がわかってきました。
私は自社の値付け感をまずぶつけてみるという事を何度も繰り返し、かなりの新規顧客と商談をさせていただきましたが、やはり反応は皆ほとんど同じですね。

「おたくは高すぎるので、うちからの仕事は出せない」と言われます。

仮にも、商談相手は当社よりも何倍も規模が大きいはずですから、抱えている固定設備なども考えれば、時間単価は当社より高くて当然だと思います。
例えば、製造工程に対して、6,000~8,000円/時間は割り当てているお客様でないと、私たち外注先が困るのです。

自分たちにできない工程だから、外注先に仕事を依頼する、というのが本来の受託製造業へのニーズですね。
仕事とは顧客への価値創出プロセスの代行業ですね。
その代行費用が「付加価値」と言えます。

そもそも社内の値付けが低い企業だと、下手をすれば、外注工程の方が、自社工程よりも高くついてしまうわけです。
誤解を恐れず表現するならば、私たち受託製造業は、製造というプロセスを買っていただくサービス業です。
自分たちの得意なプロセスだけに特化していますので、余計な設備や人員、プロセスを省略したシンプルなビジネススタイルが強みでもあります。
無駄なモノを抱えていない分だけ、割安な加工サービスを提供できるわけです。

逆に、顧客となるメーカーは、そもそも研究開発や、施設・設備という投資を行い、マーケティングや販売・営業を行うための人員やコストをかけているわけですね。

それを1人当たりの労働生産性に直せば、1万円/時間などになるのも当然です。
そのギャップがあるからこそ、下請け構造での仕事が成り立つわけですね。

様々な要素を抱えて統合していくメーカーと、あるプロセスに特化したスペシャリストの受託製造業が対等なパートナーシップとして、縦糸と横糸のごとく織りなされて最終顧客への価値創出プロセスが成立しているものだと思います。

企業規模や立ち位置による労働生産性=時間単価の格差は当然あってしかるべきです。
私たち受注側からすれば、その時間単価の格差があるからこそ、仕事を外注としてご依頼いただけるわけですね。
それが、現在では当社の顧客とも言うべき企業が、「当社よりも時間単価が低い」のです。

何と情けない話でしょうか。
私はこのような状況に、心底憤慨してしまいました。

1-3 製造業の値付け感の変化

私は新卒で就職した際には、いわゆる大手メーカーの技術職として採用されました。
そこで言われたのは、「私たちメーカーの技術者や職人は1時間に1万円の仕事をしなければいけない」ということでした。
当時はピンときませんでしたが、今ならば当然だと思います。

つまり、20年程前になりますが、当時製造業では大手メーカー:1万円/時間、1次請・中堅メーカー:6,000~8,000円/時間、下請け加工業者:5,000円/時間といった相場観が当たり前だったのです。

それは、ずっと零細町工場として仕事をしてきた、父の値付け(4,000~5,000円/時間)と合致するので、私にも自然に思えていました。
それが、現在では、1次請・中堅メーカー:3,000~4,000円/時間、下請け加工業者:1,500~2,500円/時間が当たり前になりつつあるのです。

仕事の価値が半分程度にまで下がってしまっているのです。
この事実に、私は愕然とし、怒りすら覚えるようになりました。

そして、この国の行く末に大きな不安と危機感を感じるようになりました。
これでは、日本は「衰退」しているではないか、と。。。

何故、皆仕事の値段を下げる事しか考えないのでしょうか??

1-4 知識のアップデート

その疑問が、逆に「その裏には何か構造的な変化があるのではないだろうか?」という興味に変わっていきました。
そこで、まず手に取ったのが「FACTFULLNESS」という書籍でした。

是非皆さんにもご一読いただきたいのですが、FACTFULLNESSでは世界各国の統計データを見える化して、現在の各国の状況と変化を事実(Fact)によって説明しています。
この本を読んでみて、私も自分の思い込みや聞きかじりではなく、しっかりとした事実(Fact)によって判断すべきと感じました。

そして、そのFactを常にアップデートしていく事で、自分の中の常識も更新していくという事です。

例えば、アフリカには食べ物に困る子供たちが沢山いて、貧困や飢餓が絶えない、というイメージがありましたが、実は現在のアフリカの各国は一部を除けば非常に経済が発展していて、貧困も劇的に改善されているのです。

こういった、昔習った記憶を頼りにいつまでも世の中を固定的に見るのではなく、新しい情報を自分なりに整理して、自分の価値観や世の中の見方をアップデートしていこう、という事に思い至ったのです。

つまり、中堅企業6,000~8,000円/時間という固定観念から、3,000~4,000円/時間の現実世界への変化を自分なりに分析してみようという興味がわいてきました。

2. ブログの開始へ

2-1 日本だけ衰退しているという衝撃

まずは、FACTFULLNESSに倣って、OECDや日本政府の公表しているデータをグラフ化し、自分なりに統計的事実をまとめてみる事から始めてみよう、と思いました。

あくまでも自分の興味で、自分の勉強として調べてみる、という程度の試みだったのです。
ところが、調べていくうちに、平均所得は下がっているし、GDPは停滞しているし、物価は上がっていないのは、「日本だけ」という事実に早々に気づいてしまいました。

ニュースなどで「実質GDPが0.3%の成長」等と聞いていたので、基本的には日本は他国と同様に経済成長をしているものだとばかり思っていたのですが、そのような思い込みが即座に否定されたのです。
そこからは調べるあらゆるデータが、右肩上がりで成長する世界のなかで、一方的に衰退する日本の姿を裏付けるようなものばかりで、大きな衝撃を受けました。

何となく、「うまくいってないのかな?」と感じていた日本の経済が、今まさに先進国から滑り落ちようとする瀬戸際である事がわかってきました。
実は日本では私が知らないだけで、何か構造的な変化があって、仕事の価値が変わってきているというわけではないようなのです。
単に「仕事や労働者の安売り」が横行していて、最終的には消費者でもある多くの国民が貧困化しているという実感と統計データが見事に一致しました。
しかも、どうやらそのように貧困化が進む国は、先進国の中では日本だけ、という事もわかりました。

これは、自分の会社だけが良ければ良い、というレベルの話でも、製造業という業界だけの話でもなく、日本全体の抱える喫緊の課題であると感じました。

2-2 情報共有の必要性

私はメーカーを退職して家業に入るまでの間、近所の町工場で修行させてもらっていた時期がありました。
その頃から、フェイスブックなどでは中小製造業経営者の皆さんとの繋がりもありましたので、このような事実をみんなで共有して、何か解決策を導き出せないか、と思い至りました。
ただ、フェイスブックは、基本的に今まで面識のある人との繋がりが基本となりますので、メッセージの波及は限定的となります。

そこで選んだのがブログという手段でした。

継続的に少しずつ、多くの人に記事を読んでもらえる可能性という意味で、ブログ記事は非常に相性の良い手段と言う事がわかりました。

経済統計は、非常に多くの切り口があり、それを一冊の本や記事にまとめようとしても、読む方が疲れてしまいますね。
あるいは、一つの短い記事にまとめるには、多くの有益な情報から最も伝えたい情報に絞らなければいけません。

しかし、私が調べるうちに気づいたのは、日本の経済を一言で説明するのは無理がある、という事です。
色々な事実を、様々な切り口で、しかも長期的な時系列で眺めてみる必要性を感じました。
1つの記事に数個程度のグラフを掲載し、それを解説する記事であれば、数分程度で気軽に読めます。
それを定期的に更新していけば、無理なく、日本経済の実情を把握できるツールになるのではないか、と思い至りました。

適当に流し読みするだけで、日本の現在の状況がわかるのであれば、読んでいただける人も多いのではないか、という思いからブログという手段で経済統計を共有していく、という現在のスタイルに行き着いたのです。

「有料記事にしないのか?」という質問を多くいただくのですが、敢えて無料記事で公開しているのには、より多くの人にこの日本の現状を知ってほしいという思いがあるからです。
そして、多くの人に問題意識を共有していただき、行動が変わったその先に、当社の利益が繋がっていると考えています。

なので、有料記事にして目先のお金を稼ぐよりも、より多くの人に共感してもらい、世の中の変化に少しでも役立てればと考えてこのスタイルとしています。
その代わり、私の願いはこのブログの内容を、是非たくさんの人に拡めてほしいという事です。
単に事実を知らずに、日本経済が成長していると思い込んでいる人があまりにも多いので、このままでは危機感を共有する事すらできないためです。

逆に、このブログでご紹介しているような客観的事実さえ知ってもらえれば、自ずと目指すべき方向性は一致していくのではないかと考えます。

また、このブログの立ち位置は、「中立」です。
経済(特に企業活動)に絞っての議論をするためにあえて政治・政策や、思想・宗教・イデオロギーに関しては極力中立としています。

統計データは、見せようと思えばいくらでも恣意的にグラフ化することができます。
全体的に下がっていても、部分的に見せる事で上がっているようにも見せることができます。
全体として停滞しているはずなのに、「前年比0.3%成長」などと、さも成長しているような切り取った報道が、今だになされています。

特に名目値と実質値を都合の良いように使い分けられているのは、見ていて悲しくなります。
そのように、何か意図をもって経済統計を扱おうとすると、どうしても事実をより多くの人に共有する、という本来の趣旨からずれていってしまうと思います。

このブログに様々なご意見を寄せていただいていますが、政治・政策等についての言及について極力控えているのは、このような理由によるものです。
そして、極力フラットな目で、しかも可能な限り長期の時系列データを掲載して長期的なトレンドを感じ取っていいただけるように心がけているつもりです。
これからもどうぞ、ご了承いただければ幸いです。

3. 日本経済復活の処方箋とは?

3.1 日本経済の課題とは?

現在までに、100以上の記事と数百の経済統計に関するグラフを公開してきました。
非常に多くの経済統計データに触れてきたわけですが、その中で見えてきた日本経済の課題とその解決策についてまとめてみたいと思います。
これらは今までブログの中でも取り上げてきましたので、どうぞ関連記事にも目を通していただければ幸いです。

<日本経済の課題>
(1) 付加価値(GDP)や、労働者の所得、物価が1997年を転換点として停滞している(デフレの継続)
 参考記事: サラリーマンの貧困化
 参考記事: そもそも物価ってなに!?

(2) 少子高齢化が進み、国民の負担が増大している
 参考記事: 社会保障って誰のため!?

(3) 貧困化と格差の拡大が少しずつ進行している
 参考記事: 私たちはどれだけ貧困化したのか?
 参考記事: 貧困化が進み格差が拡がる日本

(4) 企業が海外展開を進め、国内の事業者や労働者が取り残されている(日本型グローバリズム)
 参考記事: 日本型グローバリズムの急進展

(5) 企業の利益は近年増大しているが、労働者ではなく配当金と内部留保ばかりに分配されている
 参考記事: 内部留保は衰退への道?

(6) 企業は国内での投資をしなくなり、借り入れを減らしている
 参考記事: 借金を増やさない日本企業

(7) 特に大手企業は労働者を減らしている
 参考記事: 続・サラリーマンの貧困化

(8) 日本企業の7割(中小企業は8割)が赤字でゾンビ企業も多いと言われている
 参考記事: 日本中で増える赤字企業の実態
 参考記事: 赤字ビジネスは経営者の責任か?

(9) 労働者は非正規化も進み、労働時間が減少している反面、労働生産性が停滞している
 参考記事: 非正規社員という働き方
 参考記事: はたして日本は先進国か 労働生産性編

(10) 男性の労働者が減る一方で、高齢者や女性の活用が進んでいる
 参考記事: エリートの先鋭化と一般層の崩壊

(11) 高齢者や女性の労働者は所得水準が低いため、平均所得が下がっている
 参考記事: 高齢者が働く国
 参考記事: サラリーマンの貧困化 後編

(12) 仕事への意欲や愛社精神の低い労働者が多い(エンゲージメントの低下)
 参考記事: 崩れる「仕事熱心」な日本人観

(13) 家計では、若年の勤労世帯が減り、高齢世帯が急増している
 参考記事: 貧困化で豊かになる家計の不思議

(14) 非婚化・晩婚化が進み、少子化に拍車をかけている

(15) 非婚化の主な原因として所得減少による金銭的不安がある
 参考記事: はたして結婚は贅沢なのか!?

(16) 家計の金融資産は高齢者に偏っていて、若年層はむしろ貧困化している
 参考記事: 貧困化で豊かになる家計の不思議

(17) 多くの国民が貧困化する中で、生活に関する満足度は高いが、将来への不安を抱えている
 参考記事: 貧困化と満足度の不思議な関係

(18) 日本人は「幸福度」が低く、「寛容さ」や「親切さ」の無い国民とみられている
 参考記事: はたして日本人は”幸福”なのか
 参考記事: 急速に寛容さを失った日本人

(19) 日本人は政治に関する関心が極端に低い
 参考記事: お金以外の豊かさとは!? 政治参加編

(20) 家計消費が停滞している
 参考記事: 消費→成長が止まった日本経済

(21) 所得税、法人税が減少する一方で、消費税を上げる事で税収を確保している
 参考記事: 消費税増税はいったい誰のためか?

(22) 移民の受け入れは限定的だが、徐々に増やしていこうという機運がある
 参考記事: 日本は本当に移民大国なのか?

(23) 企業はモノやサービスの値上げをできずにいる
 参考記事: 値上げできない経営者(私)達

(24) 日本企業は職級が高い人材に対しての対価が低い
 参考記事: 日本人の「誰」が安いのか

(25) 日本の産業のほとんどは停滞・縮小している
 参考記事: 先進国の成長産業と衰退産業

いかがでしょうか、まだまだご紹介しきれていませんが、少なくとも、ざっとこれだけの課題があると言えそうです。
そしてこれらの課題の多くは、先進国共通のものではなく、日本特有のものばかりです。
これらの課題により、日本経済が停滞を続けることで、様々なモノを失ってきたという事ですね。
 参考記事: 平成時代に日本経済が失ったもの

本当はもっと豊かになっていてもおかしくなかったはずなのです。
むしろ、ここまで日本だけ停滞が続いている事が、世界から見れば異常事態だと言えます。
そして、このままでは日本経済がどんどん衰退していってしまうように思えます。
何か復活するための手立てはあるのでしょうか?

3.2 日本経済復活への解決策はあるのだろうか?

私自身が経済学の素人ですので、学術的な側面から経済を語る事はできません。
ただし、自分自身が、経営者でもあり、労働者でも消費者でもある立場から考えた中で、次のような事が言えるのではないかと思います。

(1) 日本経済復活のキーパーソンは中小企業経営者

日本企業(約300万社)のうち、99%以上はは中小企業と言われます。

そして、労働者のうち7割近くが中小企業で働いています。
すなわち、300万人ほどの中小企業の経営者の考え方一つで、多くの労働者=国民に影響を与え、日本経済を変える力を持つという事ですね。
大企業が海外展開を進める一方で、中小企業を主体とした多くの日本の事業者や労働者が国内に取り残されています。
今までは、特に製造業では大手企業の発展に合わせて、仕事が国内に流れ、それらを受ける中小企業や労働者も報われてきていたはずです。

それが近年急激に、顧客の海外展開と並行して、国内の仕事の量が減り、その対価が下がり続けてきたわけですね。
パイが小さくなれば、分け前も小さくなるのは当たり前です。

このようなグローバル化が進む過程で、本当は日本経済の転換点があったはずです。
それに気付かずにいつまでも国内で価格競争をして、自分自身で価値を下げて、貧困化しているのが現在の日本経済の実態ではないでしょうか。

いつしか日本の経営者は、「他社よりも1円でも安く」としかビジネスを捉えられなくなってしまったように思います。
そのとばっちりを受けているのが、労働者でもあり、消費者でもある大多数の国民ですね。

このように「自己実現的」に、市場を縮小させてしまった責任の多くは、私たち企業経営者にあるように思います。
逆に言えば、そこから徐々に状況を好転させる力も、企業経営者が持っているのではないでしょうか。

3.1で課題として挙げた項目のほとんどは、企業経営者の変化によって改善できるのではないかと考えます。

(2) 付加価値を稼ぐという事を思い出す

ビジネスにおいて最も大事なのは、「売上」という人と、「利益」という人に分かれるのではないでしょうか。
どちらも大事だと思いますが、私は「付加価値」だと思います。

付加価値と聞くと、「本質的な価値」に更に余分についてくるもの、というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
あるいは、単に「贅沢品」というイメージもあるかもしれません。

付加価値とは、言うなれば私たち「労働者の仕事そのものの金銭的価値」ですね、「本質的な価値」そのものと言えると思います。
仕事を顧客に価値を提供する「代行業」と考えれば、付加価値とは顧客の代わりに価値創出を代行した費用となります。
私たちが経済活動の指標としているGDP自体が、「国内で生産された付加価値の合計」という意味ですね。

付加価値の分配として、労働者にはお給料が支払われ、会社に残る分配のうちで税金が支払われたり、配当金が支払われたり、利益としてプールされたりするわけですね。

特に私たち企業経営者は、「付加価値を高める」経営をするべきではないでしょうか。
売上を追うわけでも、利益を追うわけでもなく、付加価値を高める事を第一に考えるのが大切なように思います。

そうすると、自然とそこには、従業員のお給料も含まれますので、労働者=多くの国民への分配も増え、消費が増えて、という循環に繋がっていくように思います。
利益ばかりを企業経営者が追い求めると、やはり従業員の給料を切り詰める、という選択肢が残ります。

何のために会社を経営をしているのか、もう一度経営者が初心に立ち返る良い転機なのではないでしょうか。
特に中小企業経営者は、自らがオーナー(株主)である人も非常に多いはずです。
短期的な利益にとらわれず、長期的視野で事業を捉え、時代の変化に合わせて柔軟に体制を変えることができ、自らの意思を即座に事業に反映できる事が、中小企業の強みだと思います。

私たち中小企業経営者こそ、最も早く自信を取り戻して、「高付加価値」な事業に転換すべき時なのではないかと思います。
色々な指標を見る中で、今がまさにその転換期を迎えようとしているように感じます。

(3) 値付け感=付加価値を改める

現在の日本企業の経営者は、売上を確保するために、「安くして数を売るビジネス」に注力しがちですね。

「人口が減って市場が縮小しているから安くないと売れない」という理由はわかるのですが、結局その安いビジネスの代償を従業員に押し付けているとも言えます。
自ら市場が縮小していると認めながらも、値段を安くして大量に売らないと成り立たないビジネスに依存してしまっているわけです。
一方で、日本の中小企業の生産性は低いと言われます。

生産性は、一定期間に稼いだ付加価値額です。
日本の中小企業の労働者は、それだけ「仕事の出来ない人たち」なのでしょうか?

私はそうは思いません。
むしろ、中小企業で働いている人は、優秀で、一生懸命真面目に働いている人が極めて多いと思います。
単に、その「仕事を安く売っているだけ」の企業があまりにも多いのではないでしょうか。

今だに4,500円/時間というと、当社よりも何倍も大きい会社でも「高すぎる!」と言わざるを得ない状況に辟易とします。
当社ですら4,500円/時間なのだから、それよりも規模が大きいのなら、もっと高い値付け感で当たり前と、どんと余裕を見せてほしいところです。

新しい技術や、手法、システムで、既存のビジネスが陳腐化し、衰退していくというのは仕方のない事だと思います。
私たち企業経営者は、そのような競争に対しては真摯に向き合わなければいけませんね。
AIや自働化により、このような傾向にも拍車がかかるものと予想されます。
ただ、現在日本で起こっているのは、このような「時代」との競争ではなくで、「身を削ってでも誰が最安値で仕事を取るか」といった安値競争がほとんどですね。
このような事を平成時代を通じて継続してしまったがために、日本経済は衰退してしまっているようにも感じます。

実は、付加価値は、一瞬にして高めることができます。
つまり、「売値を上げる事」です。

本当はその余地が大いにあるのに、ずっと値段を上げてこなかったのは、今までの企業経営者の責任と言えるのではないでしょうか。
物価が停滞しているとは、売値が上がっていないという事を示しますね。
「値段を相応に上げる事」をタブー視し、「値段は顧客が決めるモノ」として責任から逃れてきた経営者も多いのではないでしょうか。
必要以上に高価な売値にすることは必要ありませんが、安すぎる対価を適正化する事は、むしろ企業の義務でもあると思います。
自ら進んで自分たちのビジネスの価値を下げてしまっている企業も多いと思います。

3.3 日本の経済を好転させよう!

日本経済を好転させる、まず一番に議論されるのが消費税廃止や財政支出の拡大などの政策面かもしれません。
現在のようにデフレによって物の価値が下がり、企業の力だけではどうにもならないという状況が続く中では、政府が国民の負担を減らしたり、支出を増やしたりして、経済を好循環に導く必要がある、という意見が多いようです。
デフレは総需要の不足ですから、供給に対して需要が不足してる状況ですね。

企業も、家計も需要が減っているのであれば、もう一つの経済主体である政府が一時的にでも需要を創出するしかない、という事なのだと思います。
それで、需要=仕事が増えて、企業が利益を上げ、労働者=国民の所得が上がり、消費が増えて、需要が増えて、、、というように経済が拡大する循環に乗せなおそうという事なのだと思います。
ただ、私が危惧するのは、政府がいくら財政支出を増やしても、企業が労働者の所得を上げたり、投資をしなければ、やはりそこで循環が止まってしまうのではないかと言う事です。

コスト削減、節税、節約などの習慣が染み付いてしまった人が、その習慣をすぐに改めるとは思えません。
いくら政府が財政支出を増やしても、企業の内部留保が増えるだけでは、今の衰退傾向が進むだけになります。

良い循環に戻すためには、企業経営者が付加価値を労働者に分配するという意識に変わる必要があるのではないでしょうか。
現在の日本経済は、規模の経済、安価で大量なモノやサービス、安価な労働力を求めるグローバルビジネスと、国民の所得相応の多様性や柔軟性を求められる国内ビジネスに分かれつつように感じます。

グローバルビジネスは、国内の事業者や労働者として関わらなくても、消費者としては恩恵を受けますね。
なので、私はグローバルビジネスそのものを否定するつもりはありません。
むしろ積極的にその恩恵に与って、安価なモノやサービスという便益を享受すれば良いのだと思います。

問題はもう一方の、国内ビジネスにあるのではないでしょうか。
この国内ビジネスが、日本の場合は何故かグローバルビジネスの価値観に引きずられてしまっているように見えますね。
つまり、国内で不毛な価格競争をしながら、従業員をコストと見做して賃金を過剰に抑制しようというマインドが働いているように見えます。

大企業が海外展開を加速する中で、国内ビジネスはもはや中小企業が主体となる経済なのかもしれません。
すなわち、中小企業経営者が大きな役割を担いますね。
その値付け感は、私たち労働者=消費者に直接的に関わるものです。
なので、中小企業経営者が、足並みを揃えて改めて国内ビジネスの市場を創り直すという動きを進めることができれば、日本経済が復活して成長軌道に戻る可能性は大いにあるのではないでしょうか。

値付けに関して委縮してしまっている中小企業の経営者の方が多いと思いますが、まずは企業の付加価値を高めて、従業員に還元していく事で、国内消費が増えることに結びついていく、という経済活動の基本をもう一度チャレンジしていけると良いと思います。
私が、これまでの経済統計を整理していくなかで、ひとまずたどり着いたポイントが以下のようなことです。
・ 企業経営者が、「人の仕事」に付加価値を認め高めていく事
・ 企業経営者が、値付け感を改めて、相応の対価を顧客に要求する事
・ 企業経営者が、従業員の給与を段階的に上げていく事
・ 企業経営者が、投資を行う事(設備投資、技術投資だけでなく、”人材投資”も)

そして、企業経営者が最も大切にするべきなのは、「人のする仕事に価値を認める事」なのではないでしょうか。

当社は最も属人的な仕事の一つとも言える、職人の世界です。
この業界は、最も人手不足とも言えますが、そのおかげて今は比較的当社の値付け感も受け入れられやすい状況です。
新しい仕事のお話が増えていますし、受注に繋がるケースも増えてきました。

「人の仕事」にお客様が価値を認めてくれるようになったからだと思います。
「人の仕事」は、ビジネスによって様々だと思いますが、今まではむしろ軽んじられ、蔑ろにされる存在だったと思います。

介護士や保育士が低所得の代名詞的な職業のままというのが、それを裏付けているように思います。
当然、企業経営ですから、技術や仕組みによって合理化、省人化できる部分はするべきだと思います。
しかし、省人化できない部分、つまりは人がやらなければいけない仕事にこそ、そのビジネスの真の付加価値があるのではないでしょうか。

是非多くの経営者様が、国内ビジネスで「規模の経済を追い求めて利益を追う事」だけでなく、「人の仕事の付加価値を高める事」にもフォーカスしていただければと願っています。

平均給与所得 推移

図1 平均給与の推移

最後に、折角ですので1つだけ経済統計に関するグラフを紹介いたします。
一番最初のエントリーで取り上げた、日本人の平均給与の推移です。

ここまでも色々な統計データを見てきましたが、やはりこの平均給与の推移は異常ですね。
消費者でもある労働者が低所得化していしまっているという事が根本的な課題ではないかと思います。

「私たちは低所得化し衰退しかかっている」という事実をスタートラインに、その上で「私たちには何ができるだろうか」を一緒に考えてもらえればと思います。

これからも引き続き、経済統計についての発信を続けていきたいと思いますので、どうぞお付き合いいただければ幸いです。

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