115 男性労働者の低所得化と格差拡大

1. 企業規模間での格差の広がり

前回は日本企業のうち、中小零細企業、中堅企業、大企業の企業規模ごとに、年齢層別の給与の中央値とについてご紹介しました。
どの企業規模でも、男性では20代の若手以外では、給与水準が大幅に減少しています。

特に中小企業や、働き盛りの40代で減少が大きい事がわかりました。
また、大企業と言えども給与水準が減少しているという驚愕の事実も明らかとなりました。

今回は、もう少し詳しく、給与格差について取り上げてみます。
まずは、企業規模間の格差を見てみましょう。

各年齢層で、中小企業の給与中央値を1.0とした場合の、中堅企業、大企業がどの水準なのかをグラフ化してみました。

所定内給与 企業規模間格差 中堅企業 男性

図1 所定内給与 企業規模間格差 中堅企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)

図1が、各年齢層で中小企業の給与中央値を1.0とした場合の、中堅企業の企業規模間格差を示すグラフです。
この数値が、中小企業に対して何倍の水準か、を示す指数と言えます。
青が2001年、赤が2019年です。

どの年齢層でも、2001年に比べて2019年の方が大きな数値になっていますね。
元々あった企業規模間格差が更に開いていることがわかります。

さらに、年齢が上がるにつれて、格差が大きくなるわけですね。
極端なのは55~59歳の層でしょうか。

2001年には、1.18倍の格差だったのが、2019年には1.33倍まで開いています。
また、60~64歳では逆に殆ど格差が無いのも象徴的ですね。

所定内給与 企業規模間格差 大企業 男性

図2 所定内給与 企業規模間格差 大企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)

図2が大企業と中小企業を比較した企業規模間格差のグラフです。
中堅企業のグラフと比べると、やはり格差が大きいですね。
2019年では、50~54歳で1.63倍もの開きがあります。

今回のデータは所定内給与ですので、賞与は含まれません。
大企業程賞与額は大きいはずですので、賞与まで入れたら、この差がさらに開く可能性が高いと思います。

2001年と2019年を比較すると、やはり2019年の方が格差が大きくなっています。
各企業で給与水準は低下していますが、その中でも企業規模間での格差が開いているという状況ですね。

企業規模、年齢層関係なく給与水準が下がる中で、中小企業がいち早く貧しくなっているという事を示していると思います。

2. 同一規模内での格差の広がり

次に、同一規模内での格差についても見てみましょう。
ある分布の中で、下位25%の人数を区切る線の値を第1四分位数、上位25%の人数を区切る線の値を第3四分位数と呼びます。

人数が丁度2等分となる線の値が中央値(第2四分位数)ですね。
この第3四分位数と第1四分位数の比をとると、その分布の格差を数値化できますね。

ここではこの比を、格差(第3/第1四分位数)と呼ぶことにします。

所定内給与 格差 中小企業 男性

図3 所定内給与格差 中小企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)

図3が中小企業の格差のグラフです。

例えば、2019年の年齢計で見れば、数値は1.60ですね。
上位25%を決める給与水準が、下位25%を決める給与水準の1.6倍という事を意味します。

20~24歳、60~64歳で小さくなっていますが、それ以外の年齢層では全て2001年よりも2019年で数値が大きくなっていますね。
同一規模内での格差が拡がっていると解釈できそうです。

また、年齢が上がるほど格差が大きくなっています。

所定内給与 格差 中堅企業 男性

図4 所定内給与 格差 中堅企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)

図4が中堅企業のグラフです。
やはり55~64歳では格差が小さくなっていますが、他の年齢層では格差が拡がっています。

60歳以上の格差が小さくなっているのは、高齢者が総じて低賃金化しているためと考えられますね。

所定内給与 格差 大企業 男性

図5 所定内給与 格差 大企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)

図5が大企業のグラフです。

60~64歳の格差がそもそもとんでもない数値だったのですが、それが大分小さくなっています。
それ以外の年齢層では、総じて格差が拡がっています。

しかも、格差の広がり方は他の企業規模よりも大きそうですね。
例えば35~39歳で見ると、中堅企業では1.39→1.42と微増なのに対して、大企業では1.48→1.60と大きく変化しています。
他の年齢層でも同様の事が言えそうです。
大企業ほど、低所得層と高所得層の2極化が進んでいるのかもしれません。

3. 全体で貧しくなりながら拡がる格差

今回は男性の労働者について、企業規模間の給与格差、同一規模内の給与格差について取り上げてみました。
企業規模間でも、同一規模内でも格差は広がっています。

給与中央値はどの層でも減少していますので、全体として貧しくなりながらも、格差が拡がっているという状況ですね。
そして、相対的に最も勝ち組とも言える、「大企業」の男性労働者は、人数が減っています。
逆に、最も貧しくなっている「中小企業」の男性労働者は、人数が増加しています。

労働者は消費者でもありますね。
その労働者が貧しくなれば、当然消費も停滞し、経済成長が阻害されます。

一方で、企業は空前の利益水準に達しています。
つまり、労働者への分配を減らして、企業が利益を増やすという構造になっているわけですね。

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