152 国富って何だろう? - 停滞する日本全体の正味資産

1. 国全体の正味資産=国富

前回までは、先進国各国の家計、企業、政府、金融機関、海外の経済主体についての、純金融資産(Financial net worth: 金融資産・負債差額)をご紹介しました。
日本は企業の純金融負債が減少し、その代わりに政府と海外の純金融負債が増え、家計の純金融資産が増えているという少し特殊な経済の形をしていることがわかりました。

私達国民や国家の資産とは、金融資産だけでしょうか?
金融資産や負債だけだと、誰かの負債は誰かの資産と言う形で、海外まで含めると経済全体でプラスマイナスゼロとなりますね。

資産とは、金融資産だけではなく、固定資産もあると思います。
GDPは一定期間の国家全体の経済活動(付加価値)の合計でいわゆるフローと呼ばれるものですが、資産負債の蓄積=ストックについてはどういう状況でしょうか。

今回は、日本全体の資産と負債について注目してみたいと思います。
資産には金融資産非金融資産が存在します。
非金融資産は更に、住宅や建物、機械・設備、在庫などの生産資産と、土地や漁場などの非生産資産に分かれます。
生産資産のうち、住宅や建物・設備などが固定資産ですね。
金融資産と非金融資産を合計し、負債を差し引いたものが正味資産です。
特に、一国全体の正味資産を国富と呼ぶそうです。

資産
- 金融資産
- 非金融資産
 - 生産資産
 -非生産資産
- 負債

日本の具体的な正味資産を眺めてみましょう。
出典は、内閣府の国民経済計算です。

日本 資産・負債・正味資産

図1 日本 全体 資産・負債・正味資産
(国民経済計算 より)

図1が日本全体の資産・負債とその差し引きの正味資産(純資産=国富)のグラフです。

基準の違う統計データを繋ぎ合わせているので、ご注意ください。
1969年~1979年が1968SNA、1980年~1993年が1993SNA、1994年~2018年が2008SNAです。

資産側がプラス、負債側がマイナスで示されています。
資産は、①金融資産(青)、②非金融資産のうち非生産資産(緑)、③非金融資産のうち生産資産(水色)で表現しています。

非生産資産は、土地、地下資源、漁場などの生産活動の直接的な成果物ではない固定資産です。
生産資産は、住宅や建造物、機械・設備などの生産活動の成果として蓄積した固定資産です。

日本は直近の2018年では、1.1京円(11,000兆円)の資産を有し、7,500兆円の負債を負っていて、差し引き3,500兆円の正味資産=国富を積み上げているという事になりますね。
このうち、金融資産は7,768兆円、負債は7,426兆円で、純金融資産(対外純資産)が340兆円程となります。

非金融資産は3,116兆円、このうち非生産資産で1,882兆円、生産資産で1,223兆円となります。
グラフ中の正味資産は黒線で表現されていますが、1989年以降横ばいです。
国富はストックを示すものですが、フローであるGDPのグラフともそっくりな点が興味深いですね。

2. 国富停滞の正体とは?

1989年はまさにバブル崩壊の年です。
この時何が起こったのか、国富の詳細推移を眺めてみると見えてきそうです。

日本 資産・正味資産

図2 日本 全体 資産・正味資産 詳細
(国民経済計算 より)

図2が国富のそれぞれの項目ごとの推移グラフです。

金融資産と負債は正味の純金融資産(対外純資産)にまとめています。
それぞれで傾向が異なります。

まず目につくのが緑色のグラフですね。
非生産資産です。
この中の、主に土地が一時期高騰していた状況がわかります。
ストックの評価額は時価で計算されているようです。

非生産資産は、1980年代後半から急激に増大し、1990年をピークにして減少しています。
ピーク時は何と2,500兆円程の規模になります。
これは不動産バブルの状況を示していると考えられますね。

土地の値段は上がり続けるという土地神話により、不動産への投機が集中して、不動産価格が高騰したとされていますが、その様子が表れているようです。
元々土地を所有していた人からすれば、勝手に価値が上がって、勝手に下がっただけなので、バブル期を挟んで差し引きで言うと殆ど意味のない事だと思います。
ただ、土地を投機対象としていた人からすると異なりますね。

最後に土地を買った人は、徐々にその価値が下がり、損失となっているはずです。
うまく利益を得た人は、それを別な対象(例えば海外など)に再投資しているのかもしれません。

非生産資産は2005年を底にしてプラス成長に転じていますので、この辺りで不動産バブルの影響がほぼ解消したと考えて良さそうです。
1980年代前半から2005年の数値を繋いだ線が、本来の推移と言えるかもしれませんね。

純金融資産は、ここでは日本全体での計算となりますので、国内では相殺し、海外に対する対外純資産を示す事になります。
対外純資産は1980年代から徐々に増加し始め、右肩上がりで増大していますね。

生産資産は緩やかですが右肩上がりで増大しています。
(1994年に急増していますが、基準変更によるものと考えられます。新たに足された項目がある事を窺わせます。)

3. 国富の停滞と土地価格の下落

日本の国富はバブル崩壊以降横ばいに見えます。

その内訳を見ると、実際には変化が進んでいる事がわかります。
バブル期に土地価格が急激に高騰した分だけ、非生産資産が割増しで評価されたとみて良いと思います。
つまり、土地が急速に増えて、急速に減っているわけではないですね。

この土地価格の高騰で嵩上げされた分が徐々に目減りしつつ、生産資産や純金融資産が少しずつ増加して、合計すると増加量が相殺しているので、国富としては一定に見えている状況が続いてきたようです。

実質上の国富は少しずつ増加していると見ても良さそうですね。

ただ、対外純資産は日本の家計や企業、政府などが海外に持っている資産という事になりますが、国内で投資されるべき資本が海外に流出している分と見る事も出来ると思います。

最も重要な生産資産はあまり増えていません。

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