136 日本は先行投資しすぎたのか? - 総資本形成の国際比較

1. バブル期で投資を増やした日本

前回は、公共投資とも関連の深いその他の建物・構築物の投資(総固定資本形成)について国際比較をしてみました。
住居、機械・設備、その他の建物・構築物と順に見てきましたが、いずれも1990年代にピークとなってからは、停滞・縮小しています。

ただ、国際比較をしてみると、このピークまでが、極めて高い水準であった事もわかりました。
そこから停滞する事で、現在は他国と同水準(住宅は低い方)にまで落ち込んでいるという事になります。

固定資産などへの投資総資本形成と言われますね。

OECDの統計区分では、以下のように分類されます。
住宅 (Dwellings) - 主に家計
機械・設備 (Machinery and equipment and weapon system) - 主に企業
その他の建物・構築物 (Other buildings and structures) - 主に政府(公共投資)と企業(工場など)
農耕資源 (Cultivated biological resources)
知的財産生産物 (Intellectual property product)

これらの5つの項目を総合して、総資本形成(Gross capital formation)となっています。
消費(Consumption)に対して、投資という位置づけですね。

今回は、総資本形成についての国際比較をしてみたいと思います。

総資本形成 1人あたり 2018年

図1 総資本形成 1人あたり 2018年
(OECD 統計データ より)

図1が1人あたりの総資本形成をドル換算(為替レート)したグラフです。

北欧諸国が軒並み上位に位置しますが、アメリカが13,255$で9番目と高い水準です。
カナダが10,779$で14番目、韓国が10,518$で15番目、ドイツが10,316$で16番目、フランスが9,942$で18番目と続き、日本が9,532$で19番目です。

イギリス(7,695$)やイタリア(6,411$)よりは多いものの、全体としては中位グループでどちらかと言うと水準が小さい方に属するようです。

総資本形成 1人あたり

図2 総資本形成 1人あたり 推移
(OECD 統計データ より)

図2が主要国の1人あたりの総資本形成の推移となります。

バブル発生と言われる1985年から急激に増加し始め、1995年にピークとなり、減少→横ばいとなります。
興味深いのは、バブル崩壊後も増加が止まっていない点ですね。
自国通貨ベースでは1990年のバブル崩壊から1998年頃まで同じくらいの水準が継続しているのですが、為替レートが1990年以降も円高傾向が続いたことでこのようなグラフとなっています。
1990年は144.8円/ドル、1995年は94.1円/ドルです。

1995年前後は日本の物価水準が極めて高かった時期ではありますが、この辺りで日本は非常に高い水準の投資を行っていた事がわかりますね。

まさに先行投資を行ったわけですが、その後はずるずると停滞が続き今に至るわけですね。
現在は、どちらかと言うと他国並みか若干少ない程度です。

2. GDPの中でも大きな割合を占めていた総資本形成

それでは、金額だけでなく、GDPに占めるシェアでも比較してみましょう。

総資本形成 対GDP比 2017年

図3 総資本形成 対GDP比 2017年
(OECD 統計データ より)


図3が総資本形成 対GDP比の2017年のグラフです。
日本は総資本形成がGDPに占める割合が24.0%で、12番目の水準です。
金額としては、19番目でしたが、GDPに占めるシェアとしてはそれよりも順位が高いですね。
GDP全体が停滞する中で、金額としては削減されつつも、いまだ高い割合を占めているという事だと思います。

韓国が突出して高く、32.3%です。韓国の高度成長を投資によって支えている側面がありそうですね。
カナダ、フランスは日本と近い水準ですが、ドイツ(20.9%)やアメリカ(20.6%)は少し割合が小さいですね。
ただし、図2のように、金額としては右肩上がりです。

アメリカは、家計の消費支出が大きいので、相対的に総資本形成が小さな割合となっているかもしれません。

総資本形成 対GDP比

図4 総資本形成 対GDP比 推移
(OECD 統計データ より)

図4が総資本形成 対GDP比推移グラフです。

やはり日本は1980年代~200年代前半くらいまでかなり大きな割合だったことがわかります。
GDPの中で総資本形成が大きな割合を占め、投資が先行していたとも理解できそうですね。
それが徐々に減少して、現在は25%弱で他の先進国よりやや大きいくらいの水準で推移しています。

一方で、そのほかの先進国は横ばいかやや減少傾向ですね。
ドイツ、イタリア、イギリスのあたりは減少傾向、アメリカ、フランス、カナダは横ばいといった印象です。
韓国は極めて高い水準をキープしています。

3. 日本は転換点を迎えつつある?

今回は社会への投資とも言える、総資本形成について国際比較をしてみました。
日本は特に総資本形成が大きかった1980年代~2000年代前半までが、物価水準も高まった時期と重なりますね。
プラザ合意を機に急激に円高が進んだ時期でもあります。

他国よりも先行して投資を行った事がわかりますが、一方でその時のモノは現在からみれば割高な時期に投資していた、と言う事になります。

その後の経済停滞と共に、物価水準も、総資本形成の水準も他の先進国並みまで落ち込んできました。
それと同期して、経済も30年近くに渡り停滞して、労働者も低所得化しています。

1980年代から続くバブル期のツケを、バブル崩壊からの停滞とデフレによって払わされ続けてきた、という見立てになるのかもしれません。
例えばスイスのように、物価水準も所得水準も高い、経済的に強い国であり続ける事はできなかったと解釈できるのではないでしょうか。

物価水準総資本形成は他の先進国並みに落ち着いてきました、並行して消費は停滞し、労働生産性平均給与は既に先進国としては下位になります。
バブル時代も含めて、特別な国だった日本ですが、バブル崩壊を機にそれを維持できなくなり、長期的なデフレと共に停滞し、現在は普通並みの先進国の水準まで立ち位置を低下させたと理解できるのではないでしょうか。

現在は他国と比べて、技術や産業のレベルからすると安い国になってしまったが故に、これから先経済を好転させていける転換期だと捉える事もできそうですね。

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