188 企業の「借金」は増えるもの!?

1. 企業の「借金」とは

前回は、企業の「負債」に着目してみました。
企業は「負債」を増やして事業投資を行い、付加価値を増大させて、労働者の所得を上げていく主体です。
家計、企業、政府、金融機関、海外の経済主体で考えた場合に、企業は「純金融負債」を増やし、家計が「純金融資産」を増やしていきますね。

通常は、負債の中でも、主に「借入」(Loans)=借金が大きな割合を占めます。
今回は、企業の借入について着目してみたいと思います。

企業 負債 借入 ドル換算 推移

図1 企業 負債 借入

図1はOECD各国の企業の負債のうち借入のドル換算値の推移をグラフ化したものです。
非常に特徴的なグラフです。

1990年代に日本はアメリカ企業全体の2倍以上の借入をしていた計算ですが、その後明らかに目減りしています。
一方でアメリカはリーマンショックの期間を除き、基本的には右肩上がりに増大していますね。
他の主要国も増加基調ですが、フランスの存在感が大きいようです。

また、ドイツや、イギリス、イタリアはリーマンショック以降停滞気味か、やや減少傾向のようです。
アメリカは大きな存在感ですが、負債の総額で圧倒的な存在感を示していた事と比べると、負債そのものは控えめなようです。

2. 借入の成長率を見てみよう

それでは、各国の借入について、どれくらいの成長率なのかを見てみましょう。

企業 負債 借入 成長率

図2 企業 負債 借入 成長率

図2は企業の借入(各国通貨ベース)について、1995年を基準(1.0)とした場合の成長率を示したものです。
日本は7~8割程度と目減りして停滞しています。
ドイツ、フランス、カナダ、アメリrかは増加基調で、イタリア、イギリスは停滞気味です。

スペインやギリシャに至っては、リーマンショックあたりを境に「へ」の字状に大きく減少へ転移てえいます。
基本的には企業の借入は増加基調な国が多いながらも、「経済が変調している国」ほど負債が減っている事が見て取れます。

3. 1人あたりの借入額は?

企業の借入について、人口当たりの水準で比較してみましょう。

企業 負債 借入 1人あたり 推移

図3 企業 負債 借入 1人あたり 推移

図3は人口1人あたりの企業の借入の推移です。
実は1人あたりにするとアメリカは比較的小さな数値となる事がわかります。
日本は1990年代半ばに最も大きな水準から、停滞しながらも減少し直近ではフランスやカナダよりも低い水準となっています。

アメリカを始め他の主要国との差もかなり縮まっているようです。

4. 企業の借入の水準は!?

1人あたりの企業の借入は多いのか、少ないのか、順位を明確に見てみましょう。

まずは1997年の順位です。

企業 負債 借入 1人あたり 1997年

図4 企業 負債 借入 1人あたり 1997年

図4は1997年の水準が高い順に並べたグラフです。

日本は人口1人あたり企業の借入が38,164$で、ルクセンブルクに次ぐ高水準でした。
フランスの約2倍、ドイツ、カナダ、イギリス、アメリカ、イタリアの約3倍です。

逆に極端に「高すぎる」水準とも見て取れますね。
バブル崩壊後のこの時期、企業の借入や、機械設備、政府の公共投資が非常に高い水準でした。
バブル崩壊に伴ってだぶついた投資資金の行き先が、企業の設備に向いていたのかもしれませんね。
その結果、企業の負債と固定資産が大きく膨らみ、円高も相まって物価水準の高騰と、その後の投資抑制→経済停滞へと繋がっていったのかもしれません。

企業 負債 借入 1人あたり 2019年

図5 企業 負債 借入 1人あたり 2019年

図5が2019年のグラフです。
日本は35,465$と、36か国中15番目の水準まで後退します。
OECDの平均値やフランスよりも大きく下回り、アメリカとも大分近い水準ですね。
ただし、ドイツや韓国よりもまだ1.5倍くらいはあります。

今回は企業の負債のうち、「借入」について着目してみました。
日本ではバブル崩壊を機に企業の変質が進んでいます。

付加価値や人件費が横ばいで、利益や純資産が増加しています。
一方で、借入が目減りしている状況ですが、そもそもバブル崩壊前後で、他国に比べると極めて高い水準にあったという事が今回わかりました。
実はこの企業の変質も、負債の水準が減っていく過程と捉える事ができるのかもしれません。

そして、直近では大分他国並みに負債の水準が低下してきています。

日本経済の特徴は、1990年代中ばの「極めて高い水準」から停滞が続き、直近では「他国並み」に落ち着いてきている事です。
この企業の借入についても、同様の傾向が見て取れます。

大切なのは今後だと思います。
企業がまた借入を増やし、事業投資を増やすと共に、付加価値(GDP)の上昇と、労働者の所得向上という循環に入れるかどうかなのではないでしょうか。

企業の借入が増えるかどうか、はこの循環に入るかどうかを端的に判断するのに非常にわかりやすい指標ではないかと思います

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