197 消費者物価指数とデフレータ - 長期推移で見る各国の特徴
1. 各国の物価推移を見てみよう!
前回は、代表的な物価指標であるGDPデフレータと消費者物価指数(CPI)について、1997年を起点とした変動を各国比較してみました。
日本は物価が停滞していますが、さらに消費者物価指数に対してGDPデフレータが大きく下振れしています。
他国はこれら指標がほぼ一致するか、多少の乖離があっても大きく上昇を続けています。
1997年は日本経済の転換点ですが、バブル崩壊後に極端に物価水準が高まった時期でもあります。
今回は、それらのバブルの影響を受ける前の1970年を起点とした長期の物価推移について可視化してみたいと思います。

図1 物価指数の比較 カナダ
(OECD統計データ より)
図1はカナダのグラフです。
青がGDPデフレータ、赤が消費者物価指数です。
両者とも見事に右肩上がりでほぼ一致して推移していることがわかりますね。
現在は1970年時点に比べて約7倍の物価となっています。

図2 物価指数の比較 アメリカ
(OECD統計データ より)
図2はアメリカのグラフです。
両指数とも右肩上がりではありますが、GDPデフレータの方がやや下振れしています。
直近値ではGDPデフレータが約5倍、消費者物価指数が約6.5倍といった水準ですね。
1997年基準でみても、アメリカはややGDPデフレータが下振れしていました。

図3 物価指数の比較 イギリス
(OECD統計データ より)
図3がイギリスのグラフです。
イギリスの場合は、1994年までほぼ一致していますが、1995年にGDPデフレータが急激に増大し、それ以降は消費者物価指数よりも上振れして推移しています。
直近値も1970年に対して、消費者物価指数で約13倍、GDPデフレータで約15倍の高水準です。
元の1970年の水準が低すぎたのかもしれませんが、他2国と比べると物価の上昇が大きいことがわかりますね。
これら3国は主要国の中でも人口が増え、GDPの成長率も高い国です。
2. 低成長な国の長期物価推移
それでは、ドイツ、フランス、イタリアなど比較的低成長な主要国についても見てみましょう。

図4 物価指数の比較 フランス
図4がフランスのグラフです。
先述の3国が直線的に推移していたのに対して、フランスの場合はちょっと雰囲気が異なりますね。
両指標とも1984年まで急激に物価上昇が進み、その後上昇率は緩やかとなっています。
また、1990年あたりまでは両者はぴったりと一致して推移していますが、その後はGDPデフレータの方がやや下振れしています。
1984年の時点で1970年の4倍程度の水準ですが、この時はアメリカで2.5倍程度、カナダで3倍程度だったので、やや物価上昇の割合が高かったようです。
直近値では1970年に対して7倍程度です。

図5 物価指数の比較 ドイツ
(OECD統計データ より)
図5がドイツのグラフです。
他国と比べると物価の上昇が緩やかであるのが特徴的ですね。
1996年からGDPデフレータが下振れし始めます。
直近値では、1970年に対して約3.5倍の水準です。

図6 物価水準の比較 イタリア
(OECD統計データ より)
図6がイタリアのグラフです。
他国と異なり、極めて高い物価上昇があった事がわかります。
また、消費者物価指数よりもGDPデフレータの方が上振れしていますね。
1985年くらいまでは急激な上昇がみられますが、その後はやや上昇率が緩やかとなっているようです。
直近値では、GDPデフレータで22倍、消費者物価指数で18倍もの高水準です。
3. 経済成長著しい韓国の物価上昇とは
次に韓国のグラフについても確認してみましょう。

図7 物価指数の比較 韓国
(OECD統計データ より)
図7が韓国のグラフです。
イギリスやイタリア以上に物価上昇していることになりますね。
1982年までは急激な上昇、その後1986年頃まで停滞し、その後は急激に上昇から、やや緩やかとなっている状況です。
消費者物価指数よりもGDPデフレータの方が上振れしています。
2020年の時点では、1970年に対してGDPデフレータで27倍、消費者物価指数で21倍の高水準です。
イギリス、イタリア、韓国と物価上昇が大きい国ほど、長期で見た場合にGDPデフレータの方が上振れしているという特徴がありそうです。
4. 日本の物価の特徴とは
それでは日本のグラフを見ていきましょう。

図8 物価指数の比較 日本
(OECD統計データ より)
図8が日本のグラフです。
明らかに他国と異なりますね。
1980年ころから上昇率が緩やかとなっていて、1998年をピークにしてやや減少した後に停滞している状況です。
近年やや上昇傾向ではあります。
1985年から1990年がバブル期と言われますが、多少の物価上昇がみられますがそれほど大きくはありません。
1975年あたりからGDPデフレータが下振れしていて、その乖離は大きくなっていきます。
2020年には、GDPデフレータで2.5倍、消費者物価指数で3倍強といった状況です。
低成長のドイツよりもさらに低いですね。
消費者物価指数は停滞していますが、GDPデフレータがピークから大きくマイナスしている点が特徴的です。
直近値で1980年時点とほとんど変わらない物価というのも驚きですね。
他国では1980年を基準にしても数倍の物価上昇です。
今回はGDPデフレータと消費者物価指数(CPI)の代表的な2つの物価指数について長期時系列を比較してみました。
日本は物価が安定しているという事も言えますが、長期的に見て停滞していることは間違いないようです。
この点から見ても日本経済の特殊性が垣間見れるのではないでしょうか。
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