200 生産性の高い産業は何か!? - 産業別1人あたり付加価値

1. 産業別の労働生産性を計算してみよう!

前回は、産業ごとの労働者数シェアにフォーカスしてみました。
以前当ブログでは、産業ごとのGDP(付加価値)を取り上げたことがあります。
 参考記事: 工業の縮小する工業立国日本

産業ごとのGDP労働者数労働時間がわかれば、産業ごとの労働生産性を計算する事ができますね。

労働生産性(労働者1人あたり付加価値) = GDP ÷ 労働者数

今回はまず、労働者1人あたり付加価値を取り上げてみたいと思います。

また、今回ご紹介する労働生産性の計算に用いるデータは、OECD公表のデータではありますが、異なるデータベースからの数値となりますので、正確な数値と言えるかどうかは定かではありません。
 産業別GDP:Annual National Account - 1.Gross Domestic Product(output approach)
 産業別労働者数: Annual National Account - 3. Population and employment by main activity

産業別 1人あたり付加価値 日本

図1 産業別 1人あたり付加価値 日本
(OECD 統計データ より)

図1が、日本の産業別のGDPを労働者数で割った、労働者1人あたり付加価値=労働生産性です。
また、不動産業は特殊な事情(家計の帰属家賃がGDPに含まれる)ので除外しています。

日本の場合は、情報通信業、金融業の生産性が高く、次いで工業といった順番です。
工業の生産性は徐々に上がっているように見えます。

一方で、一般サービス業や建設業、公務・教育・保健の生産性が低いようです。
農林水産業の労働生産性は極めて低い事がわかります。
公務・教育・保健は平均並みですね。

産業別 1人あたり付加価値 日本
2019年 単位: ドル
127,743 情報通信業
124,517 金融業
105,395 工業
65,916 公務・教育・保健
57,458 その他サービス業
74,333 全産業平均

2. 右肩上がりで成長を続けるアメリカ

それでは、次にアメリカのデータを見ていきましょう。

産業別 1人あたり付加価値 アメリカ

図2 産業別 1人あたり付加価値 アメリカ
(OECD統計データ より)

図2がアメリカのグラフです。

日本と異なり、全産業が右肩上がりで大きく成長しています。

やはり情報通信業、金融業の生産性が高く、次いで工業、専門サービス業となります。
金融業や情報通信業は、20万ドルを超える極めて高い生産性となります。
また、日本と異なり農林水産業の生産性もそれなりの水準であることが特徴的ですね。

産業別 1人あたり付加価値 アメリカ
2019年 単位: ドル
224,996 情報通信業
219,122 金融業
162,765 工業
157,983 専門サービス業
98,877 公務・教育・保健
129,345 全産業平均

3. ドイツやイギリス、フランスの生産性

それでは、ドル換算した数値で他の国々の生産性も見ていきましょう。

産業別 1人あたり付加価値 ドイツ

図3 産業別 1人あたり付加価値 ドイツ
(OECD統計データ より)

図3がドイツのグラフです。

比較的日本に近い状況ですが、農林水産業の生産性の改善が目立ちます。

リーマンショック以降横ばいのグラフです。
ユーロやポンドはリーマンショック以降ドルに対して通貨安となっている影響も大きそうです。
比較的各産業の差が小さく、まとまって推移している印象ですね。

産業別 1人あたり付加価値 ドイツ
2019年 単位: ドル
124,022 金融業
123,344 情報通信業
104,048 工業
70,562 建設業
64,457 専門サービス業
77,421 全産業平均

産業別 1人あたり付加価値 イギリス

図4 産業別 1人あたり付加価値 イギリス
(OECD統計データ より)

図4がイギリスのグラフです。
リーマンショックを境に停滞気味ではありますが、金融業が極めて高い労働生産性であることがわかります。
情報通信業も高い水準ですが、大きく低下気味です。
工業は横ばいを保っていますね。
農林水産業もそれなりの水準です。

日本やドイツと比べて、産業別で生産性に大きな差があるのが特徴的ですね。

産業別 1人あたり付加価値 イギリス
2019年 単位: ドル
197,576 金融業
120,309 工業
114,787 情報通信業
70,102 建設業
58,505 専門サービス業
78,518 全産業平均

産業別 1人あたり付加価値 フランス

図5 産業別 1人あたり付加価値 フランス
(OECD統計データ より)

図5がフランスのグラフです。
上位3産業が大きく低下または停滞傾向、その他は停滞かやや減少で、農林水産業が上昇傾向ですね。

他国と比べると、専門サービス業の生産性が比較的高い事が特徴的です。
建設業も比較的生産性の高い産業となっています。

産業別 1人あたり付加価値 フランス
2019年 単位: ドル
143,629 情報通信業
117,893 金融業
113,624 工業
77,405 建設業
76,775 専門サービス業
85,223 全産業平均

4. 変調著しいイタリア、カナダ、成長中の韓国

続いてリーマンショック以降経済が変調しているイタリア、カナダと、成長著しい韓国についても見ていきましょう。

産業別 1人あたり付加価値 イタリア

図6 産業別 1人あたり付加価値 イタリア
(OECD統計データ より)

図6がイタリアのグラフです。

金融業と情報通信業が突出して高い水準ですが、情報通信業は大きく低下傾向であることがわかりますね。
リーマンショック以降、全体的に低下傾向が見て取れます。

一般サービス業と専門サービス業が同じくらいの水準です。

産業別 1人あたり付加価値 イタリア
2019年 単位: ドル
138,456 金融業
105,932 情報通信業
82,574 工業
58,783 一般サービス業
55,175 専門サービス業
70,661 全産業平均

産業別 1人あたり付加価値 カナダ

図7 産業別 1人あたり付加価値 カナダ
(OECD統計データ より)

図7がカナダのグラフです。

為替の影響もあると思いますが、ドル換算値だと2012年ごろをピークに減少傾向となっています。

工業が最も生産性が高く、建設業の生産性が比較的高めなのも特徴的ですね。
カナダの建設業は労働者数も増えています。
農林水産業の生産性も非常に高いようです。

産業別 1人あたり付加価値 カナダ
2018年 単位: ドル
142,501 工業
112,655 金融業
109,234 情報通信業
81,660 建設業
75,767 農林水産業
84,325 全産業平均

産業別 1人あたり付加価値 韓国

図6 産業別 労働生産性 韓国
(OECD統計データ より)

図6が韓国のグラフです。

G7各国と比較すると全体的に水準は低いですが、各産業とも右肩上がりに成長をしている事がわかります。
金融業に続いて工業の労働生産性が高いことが特徴的ですね。

一般サービス業が低く、建設業が高めなのも特徴的です。

産業別 労働生産性 韓国
2019年 単位: ドル
111,824 金融業
96,777 工業
82,810 情報通信業
60,973 専門サービス業
50,787 公務・教育・保健
55,766 全産業平均

5. 金融業と情報通信業の生産性が高い

今回は、産業別のGDPと労働者数から、労働者の生産性である1人あたり付加価値を計算してみました。

ほぼ共通しているのが、金融業情報通信業工業の生産性が高く、一般サービス業公務・教育・保健農林水産業の生産性が低いという事ですね。
前回までに見てきた通り、金融業や情報通信業は労働者数の少ない産業です。
一方工業は、労働者数が多い産業ですが、そのシェアは各国とも低下傾向です。

また、リーマンショック以降、労働生産性が低下あるいは停滞している国や産業が多いこともわかりました。
日本では特に、農林水産業の生産性の低さが際立ちますね。
生産性の高い産業が伸びていくのか、低い産業の底上げがされていくのか、各国の今後の推移にも注目していきたいと思います。

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