201 産業別の平均給与 - 産業間格差の小さい日本
1. 産業別の給与所得
前回は、産業別のGDPと労働者数から、生産性(1人あたり付加価値)を計算し、主要国で比較してみました。
各国で共通しているのは、情報通信業や金融業の労働生産性が高く、次いで工業や専門サービス業といった順番です。
一方で、一般サービス業や公務・教育・保健は比較的生産性が低い傾向のようです。
GDPの分配面には、労働者の雇用者報酬(Compensation of Employees)が含まれ、産業別のデータが公開されています。
今回は、前回同様産業別の雇用者報酬と労働者数から、平均給与を計算し比較してみたいと思います。
産業別平均給与= 産業別雇用者報酬 ÷ 産業別労働者数
まずは日本から確認していきましょう。

図1 産業別 平均給与 日本
(OECD統計データ より)
図1が日本の産業別平均給与の推移です。
ドル換算値なので為替に影響されますが、概ね横ばい傾向ですね。
金融業や専門サービス業、情報通信業、工業が比較的高いようです。
公務・教育・保健も高い水準なのが特徴的です。
平均値では40,000$程度です。
他国と比較してみるとわかりますが、日本は産業間の差異が比較的小さいのも特徴です。
逆に言えば、生産性の高い産業でも、給与水準が低めに抑えられています。
産業別 平均給与 日本
2019年 単位: $
62,064 情報通信業
57,788 金融業
48,696 工業
44,770 建設業
38,342 全産業平均
3. 上昇を続けるアメリカの給与
それでは、生産性が高まり続けているアメリカはどうでしょうか?

図2 産業別 平均給与 アメリカ
(OECD統計データ より)
図2がアメリカのグラフです。
どの産業でも大きく給与水準が増加しています。
特に、金融業、情報通信業、専門サービス業の水準が高いですね。
公務・教育・保健が工業よりも高い水準であるのも特徴的です。
やはり生産性の高い産業ほど、給与水準も高い傾向ですね。
産業間の格差も大きいようです。
産業別 平均給与 アメリカ
2019年 単位: $
113,932 金融業
109,503 情報通信業
105,844 専門サービス業
78,467 公務・教育・保健
73,838 工業
71,653 全産業平均
3. 他の主要国の平均給与は?
それでは、他国についても同様に確認していきましょう。

図3 産業別 平均給与 イギリス
(OECD統計データ より)
図3がイギリスのグラフです。
金融業や情報通信業、工業の水準が高く、他の産業と大きく差があることがわかります。
特に金融業は群を抜いていますね。
労働者数のシェアが大きい公務・教育・保健は平均値程度となります。
リーマンショック以降は、全体的に横ばい傾向です。
産業別 平均給与 イギリス
2019年 単位: $
95,541 金融業
72,984 情報通信業
63,667 工業
44,741 公務・教育・保健
40,408 不動産業
42,706 全産業平均

図4 産業別 平均給与 フランス
(OECD統計データ より)
図4がフランスのグラフです。
ドル換算値だとリーマンショック以降のデータという事もあり、全体的にやや減少傾向ですね。
フランスも金融業と情報通信業、工業の給与水準が高いようです。
専門サービス業もやや高めなのが特徴ですね。
産業別 平均給与 フランス
2019年 単位: $
85,006 情報通信業
76,925 金融業
61,240 工業
52,833 専門サービス業
48,062 不動産業
48,828 全産業平均

図5 産業別 平均給与 ドイツ
(OECD統計データ より)
図5がドイツのグラフです。
情報通信業、金融業が高いのに加え工業の水準が非常に高いのが特徴的です。
次いで公務・教育・保健といった順番です。
リーマンショック以降、全体的に横ばい傾向です。
産業別 平均給与 ドイツ
2019年 単位: $
74,183 情報通信業
73,997 金融業
63,916 工業
46,764 公務・教育・保健
40,983 専門サービス業
45,821 全産業平均
3. イタリアや韓国の給与は上がっているのか?
それでは、経済の変調が著しいイタリアと、近年急激に成長している韓国についても同様に見ていきましょう。

図6 産業別 平均給与 イタリア
(OECD統計データ より)
図6がイタリアのグラフです。
リーマンショック以降に全体的に減少傾向であることが見て取れます。
また、金融業の平均給与が突出して高く、公務・教育・保健の水準も非常に高い事が特徴的ですね。
他国の場合は公務・教育・保健は平均値ど同程度かやや下回る水準ですが、イタリアの場合は大きく上回っています。
一方で工業の平均給与は平均値異常ではありますが、やや低い水準のようです。
産業別 平均給与 イタリア
2019年 単位: $
65,024 金融業
48,825 情報通信業
44,187 公務・教育・保健
43,368 工業
25,817 一般サービス業
31,674 全産業平均

図7 産業別 平均給与 韓国
(OECD統計データ より)
図7が韓国のグラフです。
全体的他の主要国よりも低い水準です。
リーマンショックで一度落ち込みますが、その後も着実に上昇している事がわかります。
金融業が高く、次いで専門サービス業、工業、建設業、公務・教育・保健、情報通信業といった順番ですね。
産業別 平均給与 韓国
2019年 単位: $
48,181 金融業
40,586 専門サービス業
39,524 工業
37,070 建設業
36,888 公務・教育・保健
28,898 全産業平均
4. 平均給与の高い産業とは?
今回は、主要国の産業別の平均給与をご紹介してきました。
情報通信業、金融業、工業といったあたりが共通して平均給与が高い産業と言えそうです。
もちろんこれらは、労働生産性が高い産業でもありますね。
リーマンショック以降は、概ね各国とも平均給与は停滞気味のようです。
労働生産性も同様なので、生産性と給与の相関も感じられる結果ではないでしょうか。
特に、ユーロ、ポンド、カナダドルなどは、リーマンショック以降ドルに対して通貨安になっているので、その影響もあると思います。
日本は他国と比較すると、産業間の給与格差が小さいように見えます。
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