206 家計の収入構造とは - 世代別に見る収入モデル

1. 世代別の収入構造

前回は、工業統計調査から日本の製造業について事業所規模別の事業所数従業者数付加価値額などの変化を可視化しました。
日本の製造業では、事業所規模が小さいほど大きく淘汰が進み、小規模事業者は半分以下にまで減っています。
日本では産業の多様性が失われてしまったと言える状況ですね。

今回は目線を変えて、家計収入構造に着目してみたいと思います。
近年盛んに株式投資などの金融投資が盛り上がっているようですが、家計の収入に対してどのような影響があるのでしょうか。
労働者としての収入以外のこれらの収入についても見てみましょう。

今回は総務省の全国家計構造調査の結果から、年代別の収入構造を可視化してみます。

年間収入額 2019年 全世帯

図1 年間収入額 2019年 世帯主の年齢階級別 全世帯
(全国家計構造調査 より)

図1が全世帯の年齢階級別の年間収入額です。
全世帯の平均値で単位は[千円]となります。

60歳未満までは、世帯主収入(青、主に勤め先からの給与所得)が主たる収入源で、次いで配偶者収入事業・内職収入となります。
事業収入は、農林漁業収入、農林漁業以外の事業収入、家賃・地代です。
60歳以上になってくると、世帯主収入は大きく減少し、公的年金・恩給給付が主たる収入源となっていきます。
また、他の世帯構成員の収入の割合も増えていきますね。

合計の収入額を見ると、全世代平均で550万円ほど、30代未満が400万円弱、30代が600万円弱、40代が700万円弱といった分布をしています。
現役世代では世帯主収入以外にも、配偶者収入や事業・内職収入も意外と多いようです。

利子・配当金については、平均値で年間2.8万円程度のようです。
全世帯平均で見ると、金融投資によるインカムゲインはせいぜいこの程度という事ですね。
ちなみに、株式等の売却によるキャピタルゲインはこの統計データではその他に含まれるようです。
家計調査によれば、2019年の勤労世帯平均値で有価証券売却が月額527円というデータがあります。

日本では、金融投資による収入(含み益ではなく実収入)は極めて少ないと言えそうです。

2. 2人以上の世帯の収入構造

全国家計構造調査では、2人以上の世帯と単身世帯でデータが分かれているようですので、それぞれについてもご紹介していきます。

年間収入額 2019年 2人以上の世帯

図2 年間収入額 2019年 世帯主の年齢階級別 2人以上の世帯
(全国家計構造調査 より)

図2が2人以上の世帯のグラフです。
配偶者収入や他の世帯員収入が足されますので、全世帯平均値より総じて高収入となりますね。

興味深いのは、70歳未満までは利子・配当金が全世帯平均よりも低く、70歳以上で高くなる点です。
また、世帯主収入は全世帯平均値より総じて高いこともわかりますね。

3. 単身世帯の収入構造

続いて、単身世帯の収入構造です。

年間収入額 2019年 単身世帯

図3 年間収入額 2019年 世帯主の年齢階級別 単身世帯
(全国家計構造調査 より)

図3が単身世帯のグラフです。

当然ですが、配偶者収入、他の世帯員収入はありません。

世帯主収入そのものも2人以上世帯の平均値と比べると、大きく差があるようです。
特に40~49歳の世代では年収に100万円以上、50~59歳の世代では150万円以上の差があるようです。

公的年金・恩給給付でも100万円以上の差があるのがわかります。
(配偶者分がないため当然ですが)

4. 日本の収入構造の特徴

今回は家計の収入構造について可視化してみました。

現役世代では世帯主収入が主たる収入減で、60歳以降で公的年金・恩給給付が主たる収入源に変化していく様子が見て取れたと思います。
また、家計の収入源としては、全世帯平均で見れば金融投資による収入は極めて限定的です。

2人以上の世帯の世帯主収入が単身世帯の世帯主収入よりも大きいことも特徴ですね。
以前の投稿で、日本の少子化は非婚化と大きく関係があり、非婚化は労働者の低所得化による影響も大きいことを取り上げました。
 参考記事: 結婚は贅沢なのか?

このような構造の中で、労働者の収入が減っているわけですから、家計の金融投資を進めるよりも、まずは主たる収入源である労働者の所得を向上させる重要性の方が高いように思います。

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