217 日本人は本当にお金持ち? - 家計の純金融資産国際比較
1. 豊かだった1990年代の日本
前回は、家計の金融資産のうち年金・保険についてフォーカスしてみました。
日本はOECD36か国中11番目で、主要国としては平均並みの水準のようです。
前回までで、家計の金融資産・負債について項目ごとの詳細をフォーカスしてきました。
それぞれの詳細については、下記の記事をご参照ください。
参考記事: 純金融資産 「お金持ちの国日本」の実力値
参考記事: 金融資産 「過去の資産」が多いだけの日本
参考記事: 負債 「借金」を増やさない日本人
参考記事: 現金・預金 日本人はやっぱり「預金」好き?
参考記事: 株式等 日本人の「株式投資」
参考記事: 保険・年金 気になる日本人の「年金水準」
今回は、それぞれの項目がどの程度のシェアを占めるかなど、全体的なバランスを見ていきたいと思います。

図1 家計 金融資産・負債・純金融資産 1人あたり 1997年
(OECD統計データ より)
図1は1997年の家計の金融資産・負債(1人あたり)の積み上げグラフです。
金融資産はプラス、負債はマイナスとして表現しています。
純金融資産(金融資産・負債差額)の大きい順に並べています。
金融資産(プラス側)のうち、青が現金・預金、黄色が株式等、緑が保険・年金、灰色がその他です。
マイナス側の赤が負債です。
金融資産と負債の差し引きである純金融資産を黒い丸で表現しています。
1997年はGDPや平均所得が最も高くなった日本経済のピークですが、純金融資産でもアメリカに次ぐ高水準だった事がわかります。
その内訳をみると、日本は現金・預金が圧倒的に多く、株式等が極端に少ない構成です。
負債の水準は1位のアメリカを上回る水準だったことがわかります。
1位のアメリカは、現金・預金があまり多くなく、株式等が極端に多い構成で日本とは対照的ですね。
保険・年金もルクセンブルクに次ぐ高水準だったことがわかります。
日本 家計 金融資産・負債・純金融資産
1人あたり 1997年 26か国中
現金・預金 (OECD平均 10,763$)
44,288$ 1位
株式等 (OECD平均 10,178$)
7,606$ 15位
保険・年金 (OECD平均 9,841$)
26,388$ 3位
負債 (OECD平均 9,949$)
22,195$ 2位
純金融資産 (OECD平均 24,698$)
63,890$ 2位
詳細を見てみると、日本は株式等以外の項目ですべてトップ3に入る高水準にあります。
当時日本は、確かに豊かであったことがわかります。
2. ストック面でも存在感が低下
続いて、直近の状況も確認してみましょう。

図2 家計 金融資産・負債・純金融資産 1人あたり 2019年
(OECD統計データ より)
図2が2019年のグラフです。
アメリカが純金融資産ではスイスを抑えて1位をキープしています。
日本は36か国中10位、G7で3位の水準ですね。
純金融資産では比較的高い順位をキープしていますが、徐々に存在感が低下している状況です。
現金・預金はスイスやルクセンブルクに次いで3番目に多い水準ですが、株式等が極端に少ないです。
金融資産全体としては下位のベルギーを下回りますが、負債が少ない分、純金融資産では上回っています。
スイス、ルクセンブルク、ノルウェーの負債水準が高いのが印象的ですね。
また、アイスランド、オランダ、イギリス、イスラエルのあたりは、現金・預金や株式等はそれほど多くありませんが年金・保険が多い国々です。
北欧でも、デンマーク、スウェーデンとフィンランド、ノルウェーでずいぶん異なる事も特徴的です。
日本 家計 金融資産・負債・純金融資産
1人あたり 2019年 36か国中
現金・預金 (OECD平均 26,457$)
75,552$ 3位
株式等 (OECD平均 31,200$)
16,179$ 21位
保険・年金 (OECD平均 34,647$)
38,253$ 11位
負債 (OECD平均 29,522$)
27,910$ 17位
純金融資産 (OECD平均 67,741$)
108,245$ 10位
日本は、現金・預金の水準が極端に高く、それ故に純金融資産ではいまだ上位をキープしている面があります。
ただし、現金・預金の多くは高齢層に大きく偏っていて、その資産も高齢層→高齢層で相続されていく傾向にあります。
平均年齢の高い日本では、相続者の中心年齢も50~60代となるそうです。
3. 「現金・預金」ばかりの日本人
それでは、各国の金融資産の構成バランスについても見てみましょう。

図3 家計 金融資産 シェア 2019年
(OECD統計データ より)
図3が家計の金融資産における各項目のシェアを表すグラフです。
現金・預金のシェアが大きい順に並べています。
日本は現金・預金のシェアが55.5%で、36か国中4番目に大きい国となります。
一方で、株式等については11.9%と極端に小さく、アイスランドに次いで2番目にシェアが小さい国です。
日本はこのように極端に現金・預金が多い偏った資産バランスの国であることがわかりますね。
一方で、アイスランドをはじめ、イスラエル、イギリスなどは極端に年金・保険に偏った国といえそうです。
株式等についてはやはりアメリカのシェアが48.3%と非常に大きいですが、ニュージーランドが72.9%と極端に大きいのが特徴的ですね。
このように、金融資産のシェアをみると、各国の国民の特徴も見えてくるのが興味深いです。
日本は主に高齢層の現金・預金により金融資産が大きく嵩上げ上げされています。
貯蓄の多くは60歳以上の高齢者が所有しているためです。

図4 貯蓄額 シェア
(国民生活基礎調査 より)
図4は日本の年齢階級別の貯蓄額のシェアです。
2019年には、60歳以上の高齢世帯が持つ貯蓄額のシェアが70%以上となります。
残り30%弱を60歳未満の世代で分け合っている状況ですね。

図5 60歳以上 貯蓄額 世帯分布
(国民生活基礎調査)
図5がその60歳以上の貯蓄額の分布です。
世帯数自体が大きく増えているわけですが、貯蓄を多くもつ世帯が増える一方で、ゼロ貯蓄世帯も倍増しています。
高齢層全てが豊かになっているわけではなく、豊かな層と困窮する層で2極化が進んでいるともいえそうです。
一見すると日本人の金融資産は先進国でもまだ多い水準に見えますが、その大部分を占める現金・預金の多くは高齢層に偏っています。
確かに、そのお金はいずれ相続されますが、相続人の中心層も50~60代となります。
結局現役世代にその恩恵が回ってくる事はあまり期待できませんね。
高齢層に偏った金融資産は、当然現在の高齢者が現役時代に稼いだお金です。
現在の現役世代は、今の環境の中で稼げるようになり、より豊かになっていくような変化が必要と思います。
フロー面では、現役世代の平均給与は低下しています。
労働者の平均所得は、日本はOECD36か国中20位と、平均値を下回り下位グループです。
参考記事: 安くなった日本人
家計の金融資産は日本はまだ高めの水準をキープしていますが、上記のようなことも踏まえると、このままだとその順位もさらに低下していくことが容易に予想されますね。
働く人たちの仕事の付加価値を向上し、給与水準も上げていく事が大切だと思います。
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