258 家計の金融資産・負債残高 - 現金・預金の多い日本

1. 家計の金融資産・負債残高:日本

前回までは、OECD各国の純金融資産(金融資産・負債差額)、資金過不足について眺めてきました。
経済主体ごとの金融資産・負債の変化について、フロー面とストック面での挙動が、国によって多様性があることがわかりました。
とりわけ、日本は企業の変化が特徴的です。
1998年から負債を減らす挙動が見られ、大きく黒字主体化しています。
企業がこれだけ黒字主体化しているのは、先進国の中ではオランダ、スペイン、デンマークくらいです。

今回から、主要国についての経済主体ごとの詳細な変化を見ていきましょう。
家計、企業、政府、海外、金融機関の順に金融資産・負債残高を眺めていきたいと思います。

今回は、家計の金融資産・負債残高です。
人口1人あたりのドル換算値については下記記事について記事化していますので、是非そちらもご一読ください。
 純金融資産: お金持ちの国日本の実力値
 金融資産 : 過去の資産が多いだけの日本
 負   債: 借金を増やさない日本人
 現金・預金: 日本人はやっぱり預金好き?
 株 式 等: 日本人の株式投資
 年金・保険: 気になる日本人の年金水準

上記記事では、ドル換算値でしたので、為替レートの影響を受けた数値での比較でした。
今回は、各国の自国通貨ベースでの数値を眺めてみたいと思います。
各項目の増え方や、構成比などに注目してみましょう。

まずは、日本の家計からです。

金融資産・負債残高 家計 日本
金融資産・負債残高 家計 日本 詳細

図1 金融資産・負債残高 家計 日本
(OECD統計データ より)

図1が日本の家計の金融資産・負債残高です。
左が積上グラフ、右が各項目ごとの推移です。
金融資産はプラス側、負債はマイナス側としています。

日本の家計は1990年代時点の現金・預金の水準が極めて高いのが特徴ですね。
詳細推移をみると、現金・預金は2008年頃から増加傾向ですが、年金・保険は停滞が続いています。

株式等はアップダウンしつつも、近年増加傾向ですね。
負債は横ばいが続いていますが、近年やや増加しつつあるようです。

日本 家計 対金融資産比
2021年 単位:%
現金・預金: 54.8
株 式 等: 15.3
年金・保険: 26.0
負   債: 19.5

金融資産の中で現金・預金の占める割合が54.8%です。

このような日本の家計の傾向に対して、他国はどのような状況でしょうか?

2. 家計の金融資産・負債残高:アメリカ

続いてアメリカの家計について眺めてみましょう。

金融資産・負債残高 家計 アメリカ
金融資産・負債残高 家計 アメリカ 詳細

図2 金融資産・負債残高 家計 アメリカ
(OECD統計データ より)

図2がアメリカの家計の金融資産・負債残高のグラフです。

図1の日本のグラフと比べると大きく傾向が異なります。

純金融資産の増加傾向が大きいのが目につきます。
そして、圧倒的に現金・預金が少なく、株式等の比率が大きいですね。
年金・保険の割合も比較的大きいようです。

負債を見ると2008年から停滞が続いていましたが、2013年頃からまた増加傾向になっています。

2021年の金融資産に対する各項目の割合は次の通りです。

アメリカ 家計 対金融資産比
2021年 単位:%
現金・預金: 13.2
株 式 等: 53.1
年金・保険: 29.8
負   債: 15.6

金融資産の中で現金・預金の占める割合は13.2%、一方で株式等の占める割合は53.1%にもなります。
ちょうど日本と真逆に近い比率ですね。

アメリカは家計が積極的に株式投資をしている国という特徴がありそうです。
当然合計値ですので、全ての国民の資産が多いというわけではなく、限られた富裕層の占める割合が大きいという事も留意が必要ですね。

3. 家計の金融資産・負債残高:ドイツ

続いてドイツの家計について見てみましょう。

金融資産・負債残高 家計 ドイツ
金融資産・負債残高 家計 ドイツ 詳細

図3 金融資産・負債残高 家計 ドイツ
(OECD統計データ より)

図3がドイツの家計の金融資産・負債のグラフです。

現金・預金と年金・保険が同じくらいの水準で推移しているのが印象的ですね。
株式等もリーマンショックで一時減少していますが、その後右肩上がりで増加しています。

負債は停滞傾向が続いていましたが、近年増加傾向です。

ドイツ 家計 対金融資産比
2021年 単位:%
現金・預金: 39.2
株 式 等: 25.8
年金・保険: 32.9
負   債: 26.3

金融資産に占める現金・預金の割合は39.2%、株式等の割合は25.8%です。
日本とアメリカの中間くらいの比率ですね。

年金・保険が32.9%、負債が26.3%とやや割合が大きめです。

4. 家計の金融資産・負債残高:イギリス

続いてイギリスです。

金融資産・負債残高 家計 イギリス
金融資産・負債残高 家計 イギリス 詳細

図4 金融資産・負債残高 家計 イギリス
(OECD統計データ より)

図4がイギリスの家計の金融資産・負債残高のグラフです。

イギリスが特徴的なのは、年金・保険が多いという事ですね。
株式等はむしろ少ない方になります。

年金・保険の増加量は大きいですが、現金・預金もそれなりに増えています。
負債はリーマンショックの影響も見られますが、2012年以降増加傾向です。

イギリス 家計 対金融資産比
2021年 単位:%
現金・預金: 25.7
株 式 等: 14.9
年金・保険: 56.7
負   債: 24.9

年金・保険の割合が56.7%と圧倒的です。
一方で株式等は14.9%と割合としては日本よりも低い水準です。

5. 家計の金融資産・負債残高:フランス

続いてフランスのデータです。

金融資産・負債残高 家計 フランス
金融資産・負債残高 家計 フランス 詳細

図5 金融資産・負債残高 家計 フランス
(OECD統計データ より)

図5がフランスの家計の金融資産・負債残高のグラフです。

現金・預金、株式等、年金・保険がほぼ同水準でバランスよく増えているのが印象的です。

負債の増え方も他国のようにリーマンショックを機にした停滞が少ない特徴もありますね。

フランス 家計 対金融資産比
2021年 単位:%
現金・預金: 29.5
株 式 等: 29.0
年金・保険: 34.6
負   債: 25.4

現金・預金、株式等、年金・保険がそれぞれ3割前後のバランスというのが興味深いです。
負債もやや多めですね。

6. 家計の金融資産・負債残高:カナダ

続いてカナダのデータです。

金融資産・負債残高 家計 カナダ
金融資産・負債残高 家計 カナダ 詳細

図6 金融資産・負債残高 家計 カナダ
(OECD統計データ より)

図6がカナダの家計の金融資産・負債残高のグラフです。

アメリカほど極端ではないですが、近年株式等の増加が大きいですね。
現金・預金もそれなりの水準で増加しています。

負債の増え方が直線的なのも特徴的ですね。
カナダは家計の負債が増え続けている国という事がここでも確認できます。

カナダ 家計 対金融資産比
2021年 単位:%
現金・預金: 19.9
株 式 等: 42.3
年金・保険: 33.9
負   債: 27.9

株式等の割合が42.3%とかなり高い水準です。
年金・保険は33.9%でフランスやドイツと同程度です。

負債が27.9%で、主要国の中では最も高い水準になります。

7. 家計の金融資産・負債残高:イタリア

最後にイタリアのデータです。

金融資産・負債残高 家計 イタリア
金融資産・負債残高 家計 イタリア 詳細

図7 金融資産・負債残高 家計 イタリア
(OECD統計データ より)

図7がイタリアの家計の金融資産・負債残高のグラフです。

他の主要国と比較すると、大きく傾向が異なりますね。

そもそも純金融資産が2006年を機に減少している時期があります。

また、全体に占める株式等の割合が大きく、アップダウンしています。
そして、他国には見られなかった債務証券の比率が大きかったのが特徴的です。

企業の状況を見るとこれは企業の社債等ではなく、海外または政府の債務証券のようです。
他の主要国には見られない珍しい特徴ですね。

近年では株式等の割合が大きく、次いで現金・預金となります。

イタリア 家計 対金融資産比
2021年 単位:%
現金・預金: 31.0
株 式 等: 38.5
年金・保険: 23.1
負   債: 19.1

2021年の状況としては、現金・預金が31.0%、株式等が38.5%、年金・保険が23.1%です。
年金・保険が低い割合のようです。

負債が19.1%でやや低めですね。

8. 家計の金融資産・負債残高の特徴

今回はG7各国の家計の金融資産・負債残高について眺めてみました。

家計の純金融資産は、自国通貨ベースで見ればイタリア以外は順調に増え続けています。
一方で、各国で保有する金融資産の割合が異なるのが興味深いですね。

現金・預金の割合が圧倒的に多い日本、株式等が多いアメリカ、カナダ、年金・保険が多いイギリスという特徴があるようです。
ドイツ、フランスは比較的バランスが取れているような印象です。

家計はこのように純金融資産がプラスで、なおかつ金融資産が増え続けている主体です。
経済全体で見れば、その分企業、政府、海外、金融機関が負債を増やしていることになります。

次回以降は、これら家計以外の主体についても金融資産・負債残高を眺めていきたいと思います。

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