133 投資の減る日本 - GDP支出面の詳細推移
日本のGDPは停滞が続いていますが、家計の消費は停滞、政府の消費が増加、投資が減少という内訳の変化があるようです。
1. 日本のGDP支出面の変化
前回は、日本の住宅への支出が減っている事をご紹介しました。
先進国各国との比較をしてみると、GDPに占める住宅の支出の割合が下がっているのはどうやら日本だけのようです。
近年は主要先進国で最低レベルの支出水準である事もわかりました。
日本では住宅だけでなく、全般的に投資が減少しています。
投資とは、有価証券などの金融投資ではなく、家計の住宅購入、企業の設備投資、政府の公共投資など固定資産への支出です。
前回までは家計の住宅についてフォーカスしてきましたので、今回からは企業の設備投資などについても取り上げてみたいと思います。
今回はまず、全体の状況を確認する事から始めましょう。
図1 GDP支出面 詳細 推移
(国民経済計算 より)
図1はGDPの支出面について、その構成要素の金額をグラフにしたものです。
GDPは基準の改定が繰り返されていますので、厳密には一本の線で繋げられないのですが、この図では繋げて表現しています。
1955年~1979年が1968SNA、1980年~1993年が1993SNA、1994年~2018年が2008SNAとなります。
1980年で不自然につながっている部分(例えば政府最終消費支出)がありますが、それが基準変更による影響と思われます。
支出面は本来GDE (Gross Domestic Expenditure)と訳すべきですが、慣習的にGDP支出面と表記します。
GDP支出面は大きく消費と投資に分かれます。
そして、主体も民間(家計+企業)と政府に分かれます。
民間最終消費支出、政府最終消費支出が消費にあたる部分ですね。
そして、総固定資本形成が投資にあたる部分です。
総固定資本形成 公的が、政府による投資ですので、いわゆる公共投資等が該当します。
総固定資本形成 民間が、住宅と企業設備になります。
本来は純輸出(輸出から輸入を引いたもの)が加わりますが、今回は省略します。
日本経済は1991年と1997年が転換点と言えます。
1991年が企業の変質、1997年が全体の停滞の起点と言った感じですが、図1にもそれが良く表れていると思います。
GDP支出面で最も規模が大きいのは、民間最終消費支出(青)ですが、1991年から傾きが緩やかになり、1997年から停滞傾向です。
やや上昇傾向ではありますが、全体で見れば停滞と言って良い状況が続いています。
政府最終消費支出(赤)は右肩上がりです。
総固定資本形成 公的(ピンク)は、1996年をピークに減少しています。
政府最終消費支出と総固定資本形成 公的を合わせた、公的需要が黒い点線となりますが、1996年から横ばい傾向になっています。
政府最終消費支出を増やす代わりに、総固定資本形成 公的が減っているようにも見受けられます。
総固定資本形成 民間(緑)は1991年をピークにアップダウンしつつ、少しずつ減少しているように見受けられます。
総固定資本形成 民間は住宅と企業設備に分かれるわけですが、住宅(オレンジ)は前回見た通りピークから半減しています。
ただし、全体で見ると規模としては小さいようです。
もっと大きな規模で変動しているのが、企業設備(水色)です。
元々が、民間最終消費支出に次ぐ規模の項目でしたが、1991年のピークの後は多少のアップダウンを繰り返しながら横ばいが続きます。
1997年あたりからは政府最終消費支出に追い抜かれて、3番目の項目となりました。
明らかに、企業の設備投資が停滞している事がわかると思います。
2. 日本のGDP支出面のシェア
次に、GDP全体に占める各項目のシェアも見ていきましょう。
図2 GDP支出面 詳細シェア 推移
(国民経済計算 より)
図2がGDPに占める各支出項目の割合の推移です。
1980年で政府最終消費支出が急激に上がり、民間最終消費支出が急激に下がっていますが、これもGDPの基準変更によるものと思われます。
シェアとしては、民間最終消費支出が55~60%と圧倒的に大きいですね。
政府最終消費支出は年々シェアが増大し、直近では20%にもなります。
総固定資本形成 民間が一時期30%程度だったのが、直近では20%程度に減ったのと対照的です。
さらに、総固定資本形成 公的も10%程度から5%程度に減少しています。
総固定資本形成 公的と、政府最終消費支出を合わせた政府支出(公的需要)は、およそ25%で一定しています。
また、総固定資本形成 民間のうち、住宅が3%程度、企業設備が16%程度となります。
総固定資本形成の大部分は企業設備が占めますが、企業設備はアップダウンしつつ横ばい傾向で、減少しているのは住宅ですね。
ただし、企業設備が停滞しているのも大きな課題だと思います。
日本は社会全体として投資をしなくなってしまっています。
3. 日本のGDP支出面の特徴
今回は、日本のGDP支出面について詳細項目の推移やシェアをご紹介しました。
日本のGDPは停滞が続いてきましたが、家計の消費は停滞し、政府の消費が増え、その分投資が減っています。
最大項目の家計最終消費支出はGDPの約55%を占めますが、その消費がほとんど増えていないのが大きな特徴です。
民間の投資でも、企業の投資はアップダウンしながらも横ばい傾向で、家計の住宅投資はやや減少しています。
公的投資は明らかに大きく減少しています。
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