249 就業率の高い日本 - 現役世代の国際比較
日本は失業率が低い国として知られていますが、就業率も高い国になります。特に現役世代の男性は、先進国で最も就業率が高いようです。
1. 就業率とは
前回はOECD各国の失業率についてご紹介しました。
日本は直近では3%弱で先進国の中でも失業率の低い国のようです。
今回は各国の就業率についてご紹介します。
就業率(Employment / population ratio)は、該当年代の全人口に占める就業者(Employment)の割合です。
就業率 = 就業者数 ÷ 人口 x 100
就業率は全人口の中でどれだけの人が実際に働いているかを表した指標と言えます。
労働参加率(Labor force participation rate)は、全人口に占める労働力人口(Labor force)の割合です。
労働参加率 = 労働力人口 ÷ 人口 x 100
労働力人口には、労働者数に加えて失業者数も含まれます。
労働参加率は、全人口の中で実際に働いているか、もしくは働けるのに仕事が無い状態の人の割合を表しています。
完全失業率(Unemployment rate)は、労働力人口に占める完全失業者数の割合です。
完全失業率 = 完全失業者数 ÷ 労働力人口 x 100
仕事をしている人・できる人の中で、仕事ができるのに仕事の無い人の割合が完全失業率となります。
就業自体をあきらめている人は完全失業者や労働力人口にカウントされませんので、完全失業率には含まれない事になります。
2. 現役世代男性の就業率の推移
まずは、現役世代男性の就業率の推移から見てみましょう。
図1 就業率 男性 15~64歳
(OECD統計データ より)
図1が男性の現役世代(15~64歳)についての就業率です。
日本は1970年代から主要先進国中でも高い水準をキープしている様子がわかりますね。
80~85%で推移しているようです。
一方、他の主要国は概ね日本より低い水準です。
1990年以降で見れば、ドイツ、アメリカ、イギリス、カナダ、韓国が70~80%、イタリア、フランスは65~70%程度です。
イタリアやフランスは現役世代のうち、7割弱しか働いていないという事になります。
しかも、他国は減少傾向の国も多いことがわかります。
フランスは1975年には82%で日本ともそれほど差のない状況だったようです。
2020年以降はコロナ禍等の影響とみられる減少・停滞傾向が確認できます。
3. 現役世代男性の就業率の国際比較
続いて、現役世代男性の就業率について国際比較してみましょう。
図2 就業率 2021年 男性 15~64歳
(OECD統計データ より)
図2は2021年の現役世代男性の就業率の比較です。
就業率 男性 15~64歳
2021年 単位:% 38か国中
1位 83.9 日本
7位 79.3 ドイツ
11位 78.0 イギリス
17位 76.3 カナダ
19位 75.2 韓国
23位 74.3 アメリカ
31位 70.1 フランス
37位 67.1 イタリア
平均 75.1
日本は83.9%で最も就業率の高い国になります。
OECDの平均値が75.1%となりますが、フランス(70.1%)、イタリア(67.1%)は平均値を大きく下回ります。
これらの国は失業率が高いことでも知られていますが、そもそも就業率が日本とずいぶん異なる事になります。
前回失業率についてご紹介しましたが、日本は20年間平均で4%程度、イギリス、アメリカ、ドイツが6~7%程度、フランス、イタリアが8~9%程度です。
失業率の差異よりも圧倒的に就業率の差が大きいことは認識しておいた方が良さそうです。
4. 現役世代女性の就業率の推移
続いて現役世代の女性労働者についても確認してみましょう。
図3 就業率 女性 15~64歳
(OECD統計データ より)
図3は女性の就業率の推移です。
主要国では全体的に上昇傾向なのが興味深いですね。
アメリカは2000年ころからやや低下して停滞気味です。
ドイツは2006年ころから急激に状和尚し、日本は2012年ころから上昇しています。
フランスは、男性労働者の就業率は低かったのですが、女性労働者の就業率はアメリカと同程度です。
イタリアは上昇傾向ではありますが、他国と比較してかなり低水準です。
女性労働者の増加は各国共通の傾向という事になりそうです。
5. 現役世代女性の就業率の国際比較
続いて、現役世代女性の就業率について国際比較してみます。
図4 就業率 女性 15~64歳 2021年
(OECD統計データ より)
図4は2021年の現役世代女性の比較です。
日本は71.3%でOECDの平均値よりは高いようですが、ドイツやイギリスよりも低いようです。
男性の就業率がOECDで最も高かった事と比べると、女性はやや水準が低いようです。
韓国が57.7%、イタリアが49.4%とかなり低い水準というのも大変興味深いですね。
就業率 女性 15~64歳
2021年 単位:% 38か国中
1位 76.8 アイスランド
9位 72.2 ドイツ
12位 71.5 イギリス
13位 71.3 日本
15位 70.1 カナダ
26位 64.6 アメリカ
27位 64.5 フランス
31位 57.7 韓国
32位 49.4 イタリア
平均 64.6
6. 現役世代の就業率の特徴
今回はOECD各国の現役世代の就業率についてご紹介しました。
日本の男性労働者は、低下傾向の続く他国に対して、最も高い水準が続いています。
女性労働者では各国とも上昇傾向の中、日本も上昇傾向が続いています。
ただし、女性の場合は比較的高い水準ながらもドイツより低く、イギリスやカナダと同程度です。
労働者数の変化の中で、少子高齢化や失業率などがフォーカスされがちですが、就業率も非常に重要な観点だと思います。
図5 1人あたりGDP 名目値 2019年
(OECD統計データ より)
日本より就業率が低くても、等価可処分所得の高い国はたくさんありますね。
等価可処分所得は、再分配後の可処分所得について、世帯人員の平方根(√)で除して調整した数値です。
日本は給与水準は他国と比較しても低い方ですが、就業率が高いため等価での給与所得は順位の割に高めです。
一方経常移転給付や財産所得が少なく、合計した等価可処分所得では36か国中20番目と下位になります。
日本は、先進国の中で再分配後の可処分所得が低いだけでなく、所得格差が比較的大きく、貧困率が高い国です。
参考記事: 所得格差(ジニ係数)って何?
参考記事: 貧困率の高い日本
フランスは日本よりも就業率が低く、失業率の高い国ですが、再分配後の等価可処分所得は日本より高いですね。
そして再分配後の貧困率が低く、所得格差も小さい特徴があります。
現在の日本は雇用を優先し、価値の低い仕事をあえて多くの労働者で分け合うワークシェアリングをしているような状況に見えます。
それでも再分配後の所得が低く、所得格差が比較的大きく、貧困率が高いというのはどこかバランスを欠いているように思います。
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