210 家計が消費を減らす理由とは- 持家率・共働き増と小遣い減少
日本の家計は共働きも増えて、家計収入としては少しずつ増えています。持家率が上昇していますが、こづかいや交際費が大きく減少しているという特徴もあるようです。
目 次
1. 年齢階級別の共働き率の変化
前回は、日本の家計(2人以上の勤労世帯)について、資産と負債のバランスを可視化してみました。
実はどの年代でも負債(多くは住宅ローン)が増えているという興味深い変化が見て取れました。
今回はこのような家計の変化について、その他にもどのような変化が起こったのか確認していきたいと思います。
図1 日本 家計 世帯主の配偶者のうち女性の有業率
(家計調査 家計収支編 より)
図1が共働きの割合となります。
40歳未満の若年世帯を中心に、大きく共働き率が増加していますね。
世帯主の収入が低下している事も大きいと思いますが、持家率の増加も関係ありそうです。
また、高齢世帯でも共働き率が大幅に増加しています。
2. 年齢階級別の持家率の変化
持家率についてもチェックしてみましょう。
図2 日本 家計 持家率
(家計調査 家計収支編 より)
図2が持家率のグラフです。
どの年代でも持家率が上昇していて、平均で68.4%から79.0%に上昇しています。
特に40歳未満での若年世代での上昇が大きいですね。
30歳未満の世帯で19.7%→33.6%と7割ほど増加しています。
30代も46.0%→65.0%と4割ほど増加です。
共働きが増えた若年世代で特に持家率が増加している点がポイントと言えそうですね。
図3 日本 家計 住宅ローンを支払っている世帯の割合
(家計調査 家計収支編 より)
図3が住宅ローンを支払っている世帯の割合です。
持家率が増加している若年世代で大きく増えているのはわかりますが、実はそれ以上の年齢層でも増加しています。
以前ほど頭金やボーナスでの繰上げ返済が多くなく、住宅ローン返済が残ったままの世帯が増えているという事が窺えますね。
特に70歳以上の世代でも増加しているのが気になります。
3. 年齢階級別のローン返済額の変化
住宅ローンの返済額についても確認してみましょう。
図4 日本 家計 土地家屋借金返済
(家計調査 家計収支編 より)
図4が家計収支の土地家屋借金返済の金額です。
この項目は実支出には含まれません。
また、各年代の世帯平均値で、ローンを抱えている人の返済額の平均値ではありませんのでご承知おきください。
やはり、持家率が上昇している40歳未満の若年世代で大きく増加しています。
40代がやや減少しているのは気になりますが、それ以上の世代では増加していますね。
ローン残高が以前よりも多く残りがちな傾向ながここでも確認できます。
特に70歳以上の世代では金額は少ないながらも倍増しています。
高齢になってもローン返済が終わっていない世帯が増え、その結果共働きが増えているようにも見受けられます。
4. 年齢階級別の子供の数の変化
それでは、少子高齢化が叫ばれる中、子供の数はどのような変化があるのでしょうか?
図5 日本 家計 18歳未満人員
(家計調査 家計収支編)
図5が18歳未満人員のグラフです。
つまり、同居する家族の中で18歳未満の人(基本的には子供)の数を表します。
30歳未満の世代で0.93人→1.00人、30代で1.51→1.65人とわずかながら増加傾向のようです。
一方で40代は1.54人→1.48人と減少しています。
50代は0.31人→0.49人です。
18歳未満の人数なので、晩婚化によりこの年代で18歳未満の子供の割合が増えている可能性もありますね。
この統計データはあくまでも2人以上の勤労者世帯で、基本的には結婚している世帯が前提となります。
少子化が進んでいる事は事実ですが、このように結婚している世帯では子供の数はむしろ増加しているという事は非常に重要な事実ではないでしょうか。
逆に言えば、それだけ非婚化が進んでいるという事も考えられますね。
そして、なぜ結婚しないかと言えば、価値観の多様化もありますが、経済的な不安などから結婚しない人が増えている面もあるようです。
参考記事: 結婚は贅沢なのか!?
5. 年齢階級別のこづかいの変化
日本の家計では、このように若年世代の持家率、共働き率の上昇が顕著にみられます。
これにより、確かに実支出外のローン返済が増えているという面が考えられますね。
ただ、前々回見た通り、それ以上に日本の家計は支出を絞っているようです。
そのうちで大きな項目がこづかいと交際費です。
図6 日本 家計 こづかい
(家計調査 家計収支編 より)
図6がこづかい(使途不明)のグラフです。
なんと全ての世代で激減しています。。。
合っているかどうか何度も確認したのですが、間違いはなさそうです。
全世代平均で20,000円以上減少しています。
実際には「こづかい制」の家計が減っているのかもしれません。
ただ、他の支出がそれほど大きく変化がない中で、こづかい的な用途の支出がこれだけ減っているのも事実ですね。
支出の中で絞れる部分は絞っている、という印象を受けます。
6. 年齢階級別の交際費の変化
続いて、交際費の変化についても見てみましょう。
図7 日本 家計 交際費
(家計調査 家計収支編 より)
図7は交際費のグラフです。
こちらも全年代で激減しています。
特に高齢層で顕著ですね。
もちろん2021年はコロナ禍の真っ最中ですので、一層交際費の減少が目立ったとは思います。
2019年のデータも確認してみましたが、大きく減少している傾向は同じなようです。
もちろん、サブスクサービスの普及で都度課金から一括払いとなり、トータルとして支出が減っているといった面もあると思います。
あるは、無料や安価で楽しめるサービスなども増え、余暇の楽しみ方が変化しているかもしれませんね。
特に携帯電話やSNS、オンラインミーティングの普及でわざわざ会いに行かなくても、自宅で手軽にコミュニケーションできるようになった結果、それにかかわる支出が不要になったという面もあるかもしれません。
7. 家計の変化の特徴
家計の変化は大きく次のような傾向にあります。
・ 世帯主の収入減少
・ 共働きの増加
・ 世帯収入の増加
・ 社会保険料等の非消費支出の増加
・ 消費支出の減少(こづかい、交際費など)
・ 特に若年世代の持家率と住宅ローンの増加
家計の消費が大きく減少している要因の一つは、持家率の増加によって住宅ローン返済が増えている事が考えられます。
ただし、それ以上に家計収入が増えているにもかかわらず、消費支出が減少しています。
世帯主の収入が減り、将来不安もある中で、絞れる支出は絞ろうというマインドが強まっている可能性もあるかもしれませんね。
節約をしながら、貯蓄を増やそうという傾向が強まっているように見受けられます。
世帯主の所得向上と安定した雇用という、将来への安心感が必要なのかもしれませんね。
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