355 労働生産性の国際比較 - アジア・大洋州

1. 労働者1人あたりGDPの国際比較

前回は、中東・CIS諸国の労働生産性(労働者1人あたりGDP、労働時間あたりGDP)についての国際比較をしてみました。
サウジアラビアやカタールなどの産油国は高い水準に達していますが、時系列で見るとアップダウンが激しく不安定な印象です。
一方、イスラエルやトルコは順調に上昇していて、特に労働者1人あたりGDPでは日本を大きく上回ります。

今回は、日本も属するアジア・大洋州の労働生産性について国際比較してみたいと思います。

人口が多く存在感の増す中国やインド、高い水準が予想されるシンガポール、台湾、香港などが実際にはどの程度なのか、詳細に国際比較してみましょう。

まずは、労働者1人あたりGDPの比較からです。

労働者1人あたりGDP 実質 購買力平価換算値 アジア・大洋州 2023年

図1 労働者1人あたりGDP 実質 購買力平価換算値 アジア・大洋州 2023年
(ILOSTATより)

図1が2023年のアジア・大洋州の国と地域についての労働者1人あたりGDPの比較です。

シンガポール(17.3万ドル)が極めて高い水準に達している以外にも、マカオ(14.2万ドル)がアメリカを超えています。

他にも香港(12.3万ドル)、ブルネイ(12.0万ドル)、ニューカレドニア(11.7万ドル)、台湾(11.2万ドル)、グアム(10.3万ドル)、オーストラリア(10.0万ドル)、韓国(8.3万ドル)、ニュージーランド(8.0万ドル)が日本(8.0万ドル)を超えます。

日本より下位では、ポリネシア(7.2万ドル)、マレーシア(6.0万ドル)、モルディブ(4.8万ドル)、中国(3.6万ドル)と続きます。

タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドなど経済発展中の国も今のところ2万~3万ドルくらいで、日本とはまだ大きく差があるようです。

上位国とそれ以外で差が大きいのも特徴的ですね。

日本はアジア・大洋州地域でも11番目と、上位とは言いにくい立ち位置になりつつあるような印象です。

2. 労働者1人あたりGDPの推移

続いて、アジア・大洋州地域の労働者1人あたりGDPの推移を眺めてみましょう。

労働者1人あたりGDP 実質 購買力平価 アジア・大洋州

図2 労働者1人あたりGDP 実質 購買力平価換算値 アジア・大洋州
(ILOSTATより)

図2がアジア・大洋州地域の労働者1人あたりGDPの推移です。

ブルネイが減少傾向が続いていて、それでもなお2023年で非常に高い水準であるのが印象的です。
シンガポールの上昇具合が非常に大きく、香港も1991年には日本よりも低かったのが2023年には大きく上回る水準です。

他にも、台湾、ニュージーランド、台湾、韓国が日本より低い水準から、日本を上回る水準に変化している事になります。

生産性の順位が下位の国々も少しずつ上昇していますが、その中でも中国の上昇具合は大きいようです。
ただし、2023年の段階でも日本の半分未満とまだ差は大きい事になります。

3. 労働時間あたりGDPの国際比較

続いて、もう1つの労働生産性の指標である労働時間あたりGDPについても国際比較してみましょう。
平均労働時間が長いか短いかで、日本との相対的な水準も変化します。

労働時間あたりGDP 実質 購買力平価換算値 アジア・大洋州 2023年

図3 労働時間あたりGDP 実質 購買力平価換算値 アジア・大洋州 2023年
(ILOSTATより)

図3がアジア・大洋州地域の2023年の労働時間あたりGDPについて国際比較したグラフです。

シンガポール(73.8ドル)がやはり高い水準でアメリカを上回ります。
ニューカレドニア(63.7ドル)、マカオ(60.6ドル)、オーストラリア(58.7ドル)、台湾(57.1ドル)、香港(56.5ドル)、グアム(53.6ドル)、ブルネイ(49.5ドル)、ニュージーランド(45.7ドル)、韓国(42.0ドル)、日本(41.7ドル)と続きます。

日本は労働時間あたりGDPで見ても、アジア・大洋州地域で11番目の水準です。

中国(15.4ドル)、インド(7.9ドル)とこの2か国も生産性の面ではまだ日本と大きな差がある事になります。

タイ(14.7ドル)、インドネシア(13.5ドル)、フィリピン(10.5ドル)、ベトナム(9.8ドル)と比較して、同じ東南アジアのマレーシアが25.9ドルと1段高い水準であるのが印象的です。

4. 労働時間あたりGDPの推移

最後に労働時間あたりGDPの推移についても眺めてみましょう。

労働時間あたりGDP 実質 購買力平価換算値 アジア・大洋州

図4 労働時間あたりGDP 実質 購買力平価換算値 アジア・大洋州
(ILOSTATより)

図4が労働時間あたりGDPの推移です。

ブルネイが減少傾向で、シンガポールの伸びが大きいのは労働者1人あたりGDPと同様ですね。

労働者1人あたりGDPでは日本とほぼ同じくらいの水準だったニュージーランドは、労働時間あたりGDPだと1割ほど日本を上回って推移しています。
平均労働時間がそれだけ短い事が考えられそうです。

香港、台湾、韓国は2005年の時点では日本より低かったようですが、2023年の時点ではいずれも日本を上回っています。

特に香港、台湾とはだいぶ差が開いているようです。

他の国々も上昇傾向が続いていますが、まだ日本との差は大きい事がわかります。

5. アジア・大洋州の労働生産性の特徴

今回は、アジア・大洋州の国・地域についての労働生産性をご紹介しました。

世界的に見ても高い水準に達しているシンガポールや資源国のブルネイは例外としても、台湾、香港、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなど、日本を上回る国が増えている事になります。

日本はこの地域の中でも立ち位置が低下している事になりますが、東南アジア、中央アジア地域との差はまだ大きくすぐに追い抜かれるような差でもなさそうです。

生産性は賃金水準と密接にかかわっていますので、日本の労働者の賃金も必ずしも高い水準とは言えなくなりつつあるのかもしれません。

また、日本の労働生産性は実質で成長してはいますが、他の国々と比較するとかなり緩やかである事もわかります。

普段は主に先進国と呼ばれるOECD諸国での比較をご紹介していますが、このように世界各国と比較すると生産性の観点でも、日本の水準は国際的に低下しつつあることが良くわかりました。

アジア地域の中では、すぐに抜かれるような国は既に無くなりつつありますが、東欧や中東諸国では日本に近い水準まで成長している国も多くあり、今後もジリジリと国際順位が低下していく事が予想されます。

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