035 日本人の生活実感 - 充実感や悩み・不安と生活の見通し

生活満足度意外に、日本人の生活の充実感や、悩み・不安、生活の見通しなどについての傾向を統計データで確認してみます。

1. 現在の生活の充実感

前回は、私達日本人が感じる満足度のうち、食生活、住生活、余暇の過ごし方などについて取り上げました。
いずれも金銭面とは反対に、満足度が高い水準である事がわかりました。

国民生活に関する世論調査では、満足度以外にも興味深い統計調査結果がありましたのでご紹介いたします。

まずは、現在の生活の充実感についての集計結果です。

生活の充実感

図1 現在の生活の充実感
(国民生活に関する世論調査 より)

図1に、現在の生活の充実感を示します。

1975年からの比較的長期の結果が示されていますが、「充実感を感じている」が60~75%程度と高い水準で推移しています。
充実感を感じていない」は20~30%くらいです。

DIも常にプラスで30~50%といったところでしょうか。

都市規模別に見ると、「充実感を感じていない」の割合は小都市で高くなっているそうです。
性別に見ると、「充実感を感じている」の割合は女性で、「充実感を感じていない」の割合は男性で、それぞれ高くなっているようです。
年齢別に見ると、「充実感を感じている」の割合は18~29歳から40歳代で、「充実感を感じていない」の割合は60歳代、70歳以上で、それぞれ高くなっているようです。

性・年齢別に見ると、「充実感を感じている」の割合は女性の18~29歳から40歳代で、「充実感を感じていない」の割合は男性の60歳代、70歳以上で、それぞれ高くなっているようです。

都市部の40歳未満の若い世代、特に女性で充実感が高いという事ですね。

職業別に見ると、「充実感を感じている」の割合は管理・専門技術・事務職で、「充実感を感じていない」の割合は生産・輸送・建設・労務職で、それぞれ高くなっているようです。

2. 日常生活での悩みや不安

続いて、日本人の感じる日常生活での悩みや不安の集計結果です。

日常生活での悩みや不安

図2 日常生活での悩みや不安
(国民生活に関する世論調査 より)

図2に、日常生活での悩みや不安を示します。

1991年頃までは、「悩みや不安を感じていない」と「悩みや不安を感じている」は拮抗しているように見えますが、その後は徐々に差が広がっているように見えます。
近年では「悩みや不安を感じている」が60~70%と高い水準で、DIも大きくマイナスになっています。

2009年あたりから徐々に「悩みや不安を感じている」が減少傾向、「悩みや不安を感じていない」が上昇傾向になっているようです。

性別に見ると、「悩みや不安を感じている」の割合は女性で、「悩みや不安を感じていない」の割合は男性で、それぞれ高くなっていそうです。

年齢別に見ると、「悩みや不安を感じている」の割合は50歳代で、「悩みや不安を感じていない」の割合は18~29歳、30歳代で、それぞれ高くなっているようです。

性・年齢別に見ると、「悩みや不安を感じている」の割合は女性の50歳代、60歳代で、「悩みや不安を感じていない」の割合は男性の18~29歳、30歳代、70歳以上で、それぞれ高くなっているようです。

職業別に見ると、「悩みや不安を感じている」の割合は販売・サービス・保安職で高くなっているようです。

高齢の女性で特に悩みや不安を抱えている人が多いという事ですね。

3. 生活の程度

続いて、自分たちの生活がどの程度の水準と認識しているかという生活の程度についての集計結果です。

生活の程度

図3 生活の程度
(国民生活に関する世論調査 より)

図3は、生活の程度をグラフ化したものです。

中の中」が圧倒的に多いのですが、次いで「中の下」、「中の上」という順です。
近年では「中の中」が横ばいの中、徐々に「中の上」が増え、「中の下」が減る事で、DIはマイナスながらも徐々にマイナス幅が縮小しています。
微小ながらも「」が増えて、「」が減少している点にも注目したいところです。

都市規模別に見ると、「中の上」の割合は大都市、中都市で、「中の中」の割合は小都市で、それぞれ高くなっているそうです。
性別に見ると、「中の中」の割合は女性で、「中の下」の割合は男性で、それぞれ高くなっているようです。

年齢別に見ると、「中の上」の割合は18~29歳、40歳代、50歳代で、「中の中」の割合は30歳代で、「中の下」の割合は60歳代で、それぞれ高くなっているようです。

従業上の地位別に見ると、「中の中」の割合は主婦で、「中の下」の割合はその他の無職で、それぞれ高くなっているようです。
男性はやはり平均給与が下がっている事もあるのでしょうか、「中の下」と感じる事が多いのですね。

また、実際には所得が低くなっている若い世代で「中の中」と感じているのは興味深いです。

この設問は生活の程度を聞いているので、恐らく「同世代の中で相対的に」というイメージで回答しているのでしょうから、「昔の同年代と比べて」というよりも、現在の同じような年齢階層内で「中の中」と考えていると思われます。

既に低所得の状態が「普通」「当たり前」になっているという事でもあるのかもしれません。
 参考記事: サラリーマンの貧困化

4. 生活の見通し

最後に、今後の生活の見通しをどのようにとらえているかの集計結果です。

生活の見通し

図4 生活の見通し
(国民生活に関する世論調査 より)

図4に、生活の見通しを示します。
やはり圧倒的に「同じようなもの」が多いようです。

1973年のオイルショック前までは、「同じようなもの」に次いで「良くなっていく」が多く、DIも大きくプラスです。
その後は「良くなっていく」が徐々に減り、「悪くなっていく」が増加して、ある一定範囲で推移しています。
1997年から「悪くなっていく」が「良くなっていく」を上回り、差が開いたところで、同じような間隔で推移しています。

1997年ですから、消費税3→5%への引き上げの影響もあるのでしょうか。
また、1997年は平均所得や色々な経済的な指標のピークで、以降は下がり続けているというのは今までも触れてきた部分ですね。

DIも1997年以降はマイナスが続きます。

性別に見ると、「悪くなっていく」の割合は男性で高くなっているそうです。
年齢別に見ると、「同じようなもの」の割合は40歳代で、「悪くなっていく」の割合は50歳代から70歳以上で、それぞれ高くなっているようです。

従業上の地位別に見ると、「悪くなっていく」の割合はその他の無職で高くなっているようです。
職業別に見ると、「同じようなもの」の割合は管理・専門技術・事務職で高くなっているようです。

高齢層の特に男性で、「悪くなっていく」と考える割合が多いようですね。
高齢層の単身世帯も増えていますので、今後の生活に対する不安もあっての事でしょうか。

5. 日本人の生活実感の特徴

上記をまとめると、充実感があり、中くらいの生活程度と感じる人が多い中で、不安や悩みが多く、今後の生活は同じくらいか悪くなると思っている人が多いという事がわかります。

実際には平均所得は下がっていますが、自分以外の皆も所得が低くなっているわけですから、自分は「中の中」と感じる人が多いのでしょうか。

それでも充実感を感じられる人が多いわけですから、お金以外(あるいは少ないお金)で充実した生活を送れる環境が整っているわけですね。

前回見た通り、食生活、住生活、余暇や自己啓発などでは満足度が高いわけですから、充実感が高いというのも頷けます。

もちろん、前々回からの指摘のように、国民生活に関する世論調査は調査対象が①高齢層が多い、②比較的裕福な層が多い、③単身世帯が少ないという特徴があり、必ずしも満遍なく調査対象を抽出し、国民の総合的な統計調査としての性格を有しているわけではないという点には留意しなくてはいけないと思います。

逆にこのような層でも不安が大きい、今後の生活が悪くなると感じる人の割合が多いという事は、低~中所得層、単身世帯では更にネガティブな方な割合が高くなるのかもしれません。

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