044 日本人の生産性とは? - 1人あたりGDPの国際比較

国民の平均的な生産性とも言える1人あたりGDPについて、各国比較をしてみます。

1. 1人あたりGDPとは

前回は、これまでの統計データを元に、中小企業経営者が日本経済を変えるキーパーソンではないかという記事を書かせていただきました。
特に国産事業において、中小企業経営者が高付加価値ビジネスに事業転換を図り、投資により生産性を向上させながら、従業員の給与を継続的に上昇させる事が重要ではないかと思います。

今回は日本人の平均的な生産性とは現在どの程度のものなのかを確認してみたいと思います。
先日取り上げた以下の2つの記事は、各国のGDPと人口です。
 参考記事: 世界シェアで見る日本経済
 参考記事: 主要国の経済的存在感の低下

GDPを人口で割れば、人口1人あたりのGDPの平均値となります。
1人あたりGDPは、国民1人あたりの平均的な生産性とも言えます。(労働生産性とは異なります)
もちろん、子供や高齢者など働いていない人も含みますので、人口動態も含めた人口1人あたりの平均値という意味です。

安全保障など総合的な国力が必要な場合にGDP(経済規模)はとても大切な指標だとは思いますが、それぞれの個人としての豊かさを表す指標としてはやはり1人あたりの指標が重要だと思います。

今回は、この1人あたりGDPについてご紹介したいと思います。

2. 1970年の1人あたりGDP

まずは、1970年の1人あたりGDPから国際比較してみましょう。

1人あたりGDP 1970年

図1 1人あたりGDP 1970年
(Penn World Table 9.1 より)

図1に世界の国と地域(統計データが掲載されている限り)の1人あたりGDPを示します。

数値が高い順に並べています。
単位はドルです。
色を付けて着目しているのは、日本を含むG7とロシア(1990年以前はソ連)、ブラジル、中国、インドのBRICs、韓国です。
青が日本、赤がアメリカ、緑がドイツ、紫がフランス、水色がイギリス、ピンクがカナダ、黄色がイタリアです。
最上位グループは、モナコ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルクなどの小人口国家となります。

1人あたりGDP 1970年
単位:ドル
4位 5,121 アメリカ
13位 4,097 カナダ
19位 3,331 ソ連
23位 2,853 フランス
25位 2,737 ドイツ
31位 2,349 イギリス
35位 2,110 イタリア
37位 2,026 日本
112位 369ブラジル
131位 279 韓国
164位 112 中国
166位 109 インド

この頃からアメリカの水準はかなり高かったことがわかります。
日本は先進国の末端、韓国は下位グループ、中国、インドは最下位グループといった位置です。
ソ連もこの頃は19位と高い水準だったようです。

3. 1985年の1人あたりGDP

続いて、バブルが始まる年である1985年の1人あたりGDPについて眺めてみましょう。

1人あたりGDP 1985年

図2 1人あたりGDP 1985年
(Penn World Table 9.1 より)

図2は1985年のグラフです。

1人あたりGDP 1985年
単位:ドル
7位 18,018 アメリカ
11位 14,098 カナダ
20位 11,476 日本
26位 9,737 フランス
28位 9,390 ドイツ
31位 8,665 イギリス
33位 7,905 イタリア
42位 6,394 ソ連
75位 2,457 韓国
100位 1,382 ブラジル
167位 289 中国
168位 285 インド

1970年からの15年間で各国何倍もの成長となっていますが、特に日本が大きく伸びた時期となります。
この頃既にドイツやイギリスなどを抜いて20位にまで急上昇しました。
韓国も下位グループから中位グループに躍進しています。

ソ連がかなり落ち込んでいます。
中国、インドは数値としては3倍近くに増えてはいますが、最下位グループのままです。

4. 1995年の1人あたりGDP

続いて、日本の経済水準がドル換算で最も高くなった1995年の1人あたりGDPについて国際比較してみましょう。

1人あたりGDP 1995年

図3 1人あたりGDP 1995年
(Penn World Table 9.1 より)

図3は1995年のグラフです。

1人あたりGDP 1995年
単位:ドル
5位 42,118 日本
11位 31,898 ドイツ
15位 28,758 アメリカ
18位 26,707 フランス
25位 23,042 イギリス
28位 20,594 カナダ
30位 20,449 イタリア
47位 12,277 韓国
70位 4,794 ブラジル
108位 2,128 ロシア
164位 592 中国
180位 378 インド

日本、ドイツがアメリカを抜いて5位、11位となっています。
韓国の躍進が目を見張るものがありますね、75位から47位に急上昇しています。

わずかですが中国も順位を上げ、インドとの差が開いています。
ロシアは中位グループです。

5. 2005年の1人あたりGDP

つづいて、日本の経済水準が落ち始める2005年の1人あたりGDPの国際比較です。

1人あたりGDP 2005年

図4 1人あたりGDP 2005年
(Penn World Table 9.1 より)

図4は2005年のグラフです。

1人あたりGDP 2005年
単位:ドル
13位 44,173 アメリカ
15位 41,883 イギリス
22位 37,054 日本
25位 36,218 カナダ
27位 35,035 ドイツ
28位 34,724 フランス
30位 31,503 イタリア
49位 18,439 韓国
86位 5,372 ロシア
93位 4,770 ブラジル
140位 1,730 中国
172位 720 インド

日本の順位が一気に20位まで後退します。
韓国は停滞しており、中国が順位を大幅に上げ始めています。

インドも少し順位を上げてきました。

6. 2017年の1人あたりGDP

最後が近年の1人あたりGDPの国際比較です。

1人あたりGDP 2017年

図5 1人あたりGDP 2017年
(Penn World Table 9.1 より)

図5は2017年のグラフです。

1人あたりGDP 2017年
単位:ドル
11位 60,055 アメリカ
22位 44,976 ドイツ
23位 44,974 カナダ
28位 39,758 イギリス
30位 38,415 フランス
31位 38,220 日本
33位 32,747 イタリア
35位 30,025 韓国
79位 10,956 ロシア
87位 9,821 ブラジル
92位 8,682 中国
163位 1,923 インド

日本は31位まで落ち込んでいます。
一方で同じ工業立国として比較されるドイツは、22位に留まり主要先進国(G7)の中でも第2位です。
韓国は35位まで順位を上げ、日本との差もかなり縮んできています。

ロシア、ブラジル、インドもそれぞれ順位を上げていますが、中国の躍進がすごいですね。
2005年からの12年間で、1人あたりGDPが1,730→8,682で約5倍になり、順位も140位から一気に92位にまで上昇しています。
ロシアやブラジルと共に、中位グループに入っています。

7. 世界の1人あたりGDPの特徴

今回は世界各国の1人あたりGDPについて国際比較してみました。

各国の水準が年々上昇する中で、日本は1995年以降ほとんど変化していません。
世界の中での日本の立ち位置も少しずつ低下し、近年では1970年代に逆戻りしたような順位となっています。

1人あたりGDPは、私たち一人一人の豊かさを表す代表的な指標といえます。
本来もっとメディアなどで取り上げられるべきと思いますが、何故かあまり取り上げられません。
特に日本は人口が比較的多い国ですので、その分だけGDPは大きくなり、中国に抜かれたとはいえ世界3位の経済大国と呼ばれています。

ただ、今回の記事でもご紹介した通り、1人あたりGDPでは決して高い順位ではありません。
人口が減っていく中で、GDPではなく1人あたりGDPをどう上げていくかをもっと考えていけると良いですね。

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