110 稼げず儲かる日本企業 - 付加価値と純利益

1. 稼げなくなった日本企業?

前回は日本企業のうち、中小零細企業中堅企業大企業の企業規模ごとに、企業数従業員数付加価値を比較してみました。
日本の中小零細企業は、企業数では99%、従業員数では7割、付加価値では5割を占めます。
まさに、国内経済の主役と言っても良い存在だと思います。
これから少しの間、この企業規模間での比較をしながら、企業活動の全体像を追ってみましょう。

今回は企業活動のフローの状況を可視化してみたいと思います。
まずは事業活動の規模そのものを表す、売上高のグラフから見ていきましょう。

日本 法人企業 売上高

図1 売上高 企業規模別
(法人企業統計調査)


図1が法人企業の売上高です。

青が中小零細企業、緑が中堅企業、赤が大企業、黒が全規模の合計値となります。
直近では、全規模合計で1,535兆円の売上高です。
このうち中小零細企業は647兆円、中堅企業は298兆円、大企業は590兆円です。
売上高では、中小零細企業と大企業ではかなり近い水準である事が特徴的ですね。

注目すべきはやはり1991年のバブル崩壊を機に、一気に売上高が停滞し始めた事だと思います。
大企業も中小零細企業も停滞しています。
その後の動きは興味深いですね。

大企業も中小零細企業も停滞している中で、その差は徐々に詰まっているような状況です。
この間、中小零細企業の従業員数は増え続け、大企業の従業員数はほぼ変化が無く停滞している事にも注意が必要ですね。
約30年に渡って売上高が変わっていないというのは、驚くべき事態です。

今まで先進国の国際比較もしてきましたが、このような停滞が続く国は日本くらいなものではないでしょうか。

日本 法人企業 売上高 シェア

図2 売上高シェア 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図2が売上高シェアです。

1960年の時点では中小零細企業が60%のシェアを誇りましたが、徐々に減少していき直近では42%程度です。
大企業は少しずつ増加傾向で直近では39%と、中小零細企業に迫ります。

中堅企業は1995年頃まで横ばいでしたが、その後徐々に増加していて、直近では20%程度のシェアになります。

2. 営業利益はどれくらいか?

それでは、売上高から、人件費や企業活動に関わる諸経費を差し引いた営業利益はどのような状況でしょうか。
営業利益は、それぞれの企業が本業とするビジネスの儲けと言えますね。

日本 法人企業 営業利益

図3 営業利益 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図3が営業利益のグラフです。

さすがにアップダウンが激しいですね。
明確なピークと言えるのが、1991年と、2007年です。
1990-1991年はバブル崩壊の年です。

そして、2008年はリーマンショックの年ですので急激に落ち込んでいますね。
ただその後は急激に右肩上がりに上昇しています。
大企業だけでなく、中小零細企業も、中堅企業も営業利益が増大しています。

直近では、全体で68兆円、中小零細企業で18兆円、中堅企業で12兆円、大企業で38兆円です。
売上高は停滞しているのに、利益を上げられるようになっているわけですね。
大企業では1990年のピークを大きく超えていますが、中小零細企業ではまだピークを超えられていません。

営業利益では、大企業は中小企業の2倍以上になります。

日本 法人企業 営業利益 シェア

図4 営業利益シェア 企業規模別(法人企業統計調査)

図4は営業利益シェアです。

1993年までは中小零細企業と大企業とで同じくらいの水準だったようですが、その後急激に差が広がっています。
大企業では本業での利益を出しやすくなり、中小零細企業では利益を出しにくくなっているわけですね。

当然中小企業はこの間従業員数も増えているわけですから、1人当たりの利益はかなり減少していることになります。
従業員1人当たりの指標は、今後取り上げていきたいと思います。

直近では、中小零細企業が27%、中堅企業が18%、大企業が55%のシェアとなります。

3. 最終的な利益はどれくらい?

次に、税金も納め終わった後の税引後当期純利益についても見てみましょう。

日本 法人企業 当期純利益

図5 当期純利益 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図5が当期純利益のグラフです。

2010年以降で凄まじい勢いで増加していますね。
大企業の伸びがかなり大きいですが、中小零細企業も中堅企業も大きく増加しています。

比較的この期間は堅調に成長が進んだことと、法人税率が引き下げられたこと、海外展開による営業外収入が増加したことなどが要因として考えられそうです。
直近では全体で62兆円、中小零細企業で14兆円、中堅企業で9兆円、大企業で39兆円となります。

驚きなのが、大企業の営業利益が38兆円なのに、税引き後の当期純利益が39兆円と営業利益よりも大きいという点ですね。
営業外収益がどれだけ大きいかという事が良くわかるのではないでしょうか。

ちなみに、大企業の営業外損益は直近でプラス11兆円に上ります。
バブル崩壊後30年近くに渡って売上高が停滞している中、利益が出せるようになっているわけですね。

日本 法人企業 当期純利益 シェア

図6 当期純利益シェア 企業規模別
(法人企業統計調査 より)

図6が当期純利益シェアになります。

当期純利益は年によってはマイナスの場合もあり、シェアを正しく表現できないため、除外してあります。
直近では概ね中小零細企業が25%、中堅企業が15%、大企業が60%程度となります。

営業利益よりも大企業のシェアが大きいというのがポイントですね。

4. バランスの悪い企業活動?

今回は、日本企業の規模別の事業活動についてご紹介しました。
売上高が30年間横ばいという信じがたい状況が続いていますが、その中でも色々な変化が読み取れそうです。

まず、中小零細企業よりも大企業が儲かるようになっている事が考えられそうです。
中堅企業が少しずつ存在感を強めてきています。
海外展開を積極的に進める大企業に対して、国内ビジネスに集中しがちな中小零細企業という構図がそうさせている部分もあると思います。

働く人の数で言えば、大多数は中小零細企業ですね。

一方で、企業の当期純利益がここまで増大しているという側面も見逃せません。
これだけ経済停滞が続き、売上高や付加価値が伸びず稼げなくなっている中で、利益が増え儲かるようになっています。

図1の売上高と図5の当期純利益のピークの数値の比較をすると歴然です。
1991年 売上高1,465兆円 当期純利益8兆円 (1989年は18兆円)
2018年 売上高1,535兆円 当期純利益62兆円

殆ど売上規模が変わらないのに、利益は何倍にもなっているわけです。
中小零細企業も当期純利益は大幅に増大しています。

つまり、企業は売上げや付加価値が稼げなくなっても、儲かるようになっています。

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