236 所得格差(ジニ係数)って何?

1. 格差の指標「ジニ係数」とは

前回はOECD各国の等価可処分所得についてフォーカスしてみました。
現役世代では、日本はそもそも給与所得が少なく、さらに財産所得や経常移転給付も少ないという事がわかりました。
合計の等価可処分所得ではOECDで21番目の下位に属する水準です。

等価可処分所得によって標準的な所得水準の比較もできますが、所得格差を算出する際にも利用されるようです。

今回は格差の指標である「ジニ係数」について取り上げてみたいと思います。
以前もジニ係数については触れたことがありましたが、全世代の平均値でしたので、今回は労働世代(18~65歳)に絞って考えてみたいと思います。
 参考記事: 私たちはどれだけ貧困化したのか

ジニ係数は、所得格差を表す指標ですが、まずはその意味を整理してみましょう。
全国家計構造調査 用語の解説によれば、ジニ係数及びその考え方は次の通りとなります。

<ジニ係数>
年間収入等の分布の均等度を表す指標の一つ。0~1の値をとり,0は均等を示し,1に近づくほど不均等となる

<ジニ係数の考え方>
世帯員を所得等の低い順に並べ,世帯人員数の累積百分率を横軸に,所得等の累積百分率を縦軸にした散布図を描く。この散布図の点を結ぶ弓形の曲線をローレンツ曲線という。全ての世帯員の年間収入等が完全に同じであれば,ローレンツ曲線は,原点を通る傾斜45度の直線(均等分布線という。)となる。
均等分布線とローレンツ曲線で囲まれる弓形の面積が,均等分布線より下の三角形の面積に占める割合がジニ係数である。

ジニ係数の考え方

図1 ジニ係数のイメージ図
(全国家計構造調査 用語の解説 別紙2を参照)

上の説明だけではちょっとわかりにくいと思いますので、自分なりの説明を試みます。
図1には原点を示すO、世帯人員の総数を表すN、世帯所得の合計値を表すTを追記しています。

ローレンツ曲線は、所得水準の低い順に所得の累積値を繋いでいった青色の線として表されます。
このローレンツ曲線と赤色の均等分布線に囲まれる部分の面積(S)が、O-N-Tの三角形の面積に占める割合がジニ係数という事です。

仮にすべての人の所得が同一(例えばIとします)であれば、この状態を図1中に表現すると単純にN x Iの原点を通る直線(角度は45度)となりますね。
この直線が均等分布線(赤線)という事になります。
この場合、ローレンツ曲線は均等分布線と一致し、面積S=0となります。
このためO-N-Tに占める割合はゼロという事になりますね。
全ての人の所得が等しく、格差が無いという状態を数値的に表現できることになります。

一方で、1人の人がすべての所得を独占していて、他の人の所得がゼロの独り占め状態であれば、世帯人員数NのところでTという所得だけが1本立ち上がるグラフになります。
したがって、ローレンツ曲線はO→NとN→TのL字状となり、その面積Sは、O-N-Tの面積と等しくなります。
つまり、S=O-N-Tの面積となるため、ジニ係数は1という事になりますね。
究極の格差である「所得の独り占め」はジニ係数=1.0という数値として表現できるようになります。

現実には、この両者の間を通るようなローレンツ曲線となります。
そして、ローレンツ曲線が均等分布線に近づくほどジニ係数は小さくなり格差が小さく、O-N-Tのラインに近づくほどジニ係数は1に近づき格差が大きい事を表す事になるわけですね。

2. 日本のジニ係数を見てみよう

それではまず、日本のジニ係数についてみてみましょう。
OECDでは、ジニ係数は所得の額面の値である市場所得と、再分配後の可処分所得で評価されています。

ジニ係数 18~65歳 日本

図1 ジニ係数 日本 18~65歳
(OECD統計データ より)

図1が日本の18~65歳のジニ係数の推移です。
市場所得も可処分所得も1985年から見るとやや増加していますね。
市場所得では0.34から0.39に、可処分所得では0.30から0.32にそれぞれ増加しています。

市場所得よりも可処分所得の方が数値が小さいのは、税金や社会保障給付など経常移転による再分配によって所得格差が改善されたとみる事ができます。

3. 日本の所得格差は大きいのか?

それでは、日本の所得格差は大きいのでしょうか?
市場所得と可処分所得のそれぞれについてジニ係数を比較してみましょう。

ジニ係数 市場所得 18~65歳 2018年

図3 ジニ係数 市場所得 18~65歳 2018年
(OECD統計データ より)

図3は市場所得(Market income)のジニ係数をOECD37か国で比較したグラフです。
日本のジニ係数は0.392で、37か国中26番目の水準です。
OECDの平均値0.412を下回り、G7中最も所得格差の小さい国と言えそうです。

ジニ係数 市場所得 18~65歳
2018年 37か国中
1位 0.507 コスタリカ
4位 0.470 アメリカ
6位 0.459 イギリス
7位 0.458 フランス
12位 0.433 イタリア
21位 0.405 ドイツ
25位 0.398 カナダ
27位 0.392 日本
31位 0.366 韓国
平均 0.412

日本は労働者の所得格差が少ない国というのは何度か取り上げましたが、ジニ係数としても格差の小ささが確認できますね。
 参考記事: 日本人の所得格差は大きいのか?

ジニ係数 可処分所得 18~65歳 2018年

図4 ジニ係数 可処分所得 18~65歳 2018年
(OECD統計データ より)

図4は可処分所得のジニ係数です。

図3と比べるとずいぶんと順位が異なっていますね。

ジニ係数 可処分所得 18~65歳
2018年 37か国中
1位 0.468 コスタリカ
5位 0.387 アメリカ
6位 0.361 イギリス
9位 0.333 イタリア
12位 0.325 韓国
13位 0.324 日本
19位 0.309 カナダ
20位 0.307 フランス
23位 0.294 ドイツ
平均 0.315

日本は0.324で37か国中13番目、G7で4番目の水準です。
市場所得では格差が平均値以下で小さい方だったのですが、再分配後の可処分所得では平均値(0.315)を上回り格差の大きな国となっています。

市場所得では格差の大きかったフランスやイタリアが、可処分所得では大きく改善されている様子もわかります。
これらの国は失業率が高い事でも知られていますが、経常移転給付により格差改善が図られているようですね。

フランスは再分配によって日本よりも格差が小さくなっており、イタリアも日本よりはやや大きいですがかなり近い水準にまで改善されています。

日本では労働世代の再分配により格差自体は小さくなっていますが、その効果は他国よりも小さい事が窺えます。

4. 日本は労働世代への再分配が少ない?

それでは、再分配による所得格差の改善効果はどの程度なのでしょうか?

ジニ係数 市場所得とジニ係数 可処分所得の差分を再分配効果として比較してみましょう。

ジニ係数 再分配効果 18~65歳 2018年

図5 ジニ係数 再分配効果 18~65歳 2018年
(OECD統計データ より)

図5は、ジニ係数の再分配効果を比較したグラフです。

特にフランスで再分配効果が大きいのが目を引きますね。
ドイツやイタリアも大きいようです。
日本は0.068で37か国中31番目、G7中最下位の水準です。

ジニ係数 再分配効果 18~65歳
2018年 37か国中
1位 0.172 アイルランド
4位 0.151 フランス
14位 0.111 ドイツ
19位 0.100 イタリア
20位 0.098 イギリス
23位 0.089 カナダ
27位 0.083 アメリカ
31位 0.068 日本
34位 0.041 韓国
平均 0.098

もともとの平均給与自体が少なめで、更に再分配も少ないという事になりますね。

5. 稼ぎと再分配のバランス

今回は、所得格差を表すジニ係数について労働世代に絞って着目してみました。

日本の労働世代は、再分配前の市場所得では格差の小さい方になりますが、再分配後の可処分所得では格差が比較的大きいようです。
経常移転給付などの再分配による格差縮小の度合いが他国と比べると小さいという事が言えそうです。

等価可処分所得 平均値 2018年

図6 等価可処分所得 平均値 詳細積上げ 18~65歳 2018年
(OECD統計データ より)

図6は以前ご紹介した主要国の等価可処分所得の比較です。
日本は現役世代への経常移転給付が少ないという特徴があります。
経常移転負担と給付によって再分配されているという事ですね。
 参考記事: 給与以外の収入も少ない日本

日本は失業率の小さい国で皆が働ける国と言えそうですが、一方で平均給与の水準が低く再分配も少ない状況です。
 参考記事: 安くなった日本人

好対照なのはフランスです。
フランスは平均給与が日本よりもやや高く、失業率も高い国です。
図6のなかで給与所得が日本よりも低いのは失業率の高さが反映されたものと思われますが、その分経常移転給付が多く合計の等価可処分所得では日本を上回ります。
再分配後の格差も日本よりも小さいです。

働く人の稼ぎや給与の水準と、再分配による格差是正のバランスや考え方が各国で特徴がありそうですね。
とても興味深く、示唆に富んだ統計データではないでしょうか。

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