300 一般サービス業の平均時給 - 各国でも低めの産業

1. 一般サービス業の平均時給

前回は、平均時給に相当する労働時間あたり雇用者報酬について、建設業の水準を国際比較してみました。
建設業は他の主要国では比較的水準の低い産業と言えますが、日本では近年全産業の平均値を上回り、先進国の中での順位も他の産業よりも上位となります。

今回は、比較的給与水準の低いとされる一般サービス業の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)をご紹介します。

労働時間あたり雇用者報酬 日本

図1 労働時間あたり雇用者報酬 日本
(OECD統計データより)

図1は日本の各産業についての労働時間あたり雇用者報酬の推移です。

一般サービス業(青)は他の産業と比較して低い水準が続いています。
2010年ころから上昇傾向ではありますが、それは他の産業も同様ですね。

2021年では2,500円程度で、全産業平均の2,900円の水準からは1割以上低いようです。

2. 一般サービス業とは何なのか?

OECDの統計上の区分である一般サービス業は、国際標準産業分類(ISIC REV4)におけるいくつかの中分類から構成されています。
OECDの産業区分では、G~I Distributive trade, repairs; transport; accommod., food serv.と表記されます。

日本語表記は下記サイトを参照しながら、対応表をご紹介します。
国際連合 Classification on economic statistics ISIC rev4 Jp

表1 一般サービス業の産業区分

OECD 産業区分ISIC REV4 大分類ISIC REV4 中分類
G-I 一般サービス業
Distributive trade, repairs; transport; accommod., food serv.
G 卸売・小売業;自動車・オートバイ修理業
Wholesale and retail trade; repair of motor vehicles and motorcycles
45 自動車・オートバイ卸売り・小売業及び修理業
46 卸売業
 (自動車及びオートバイを除く)
47 小売業
 (自動車及びオートバイを除く)
H 運輸・保管業
Transportation and storage
49 陸運業及びパイプライン輸送業
50 水運業
51 航空運送業
52 倉庫業及び運輸支援活動
53 郵便・急送宅配業
I 宿泊・飲食業
Accommodation and food service activities
55 宿泊業
56 飲食業

卸売・小売業、運輸・保管業、宿泊・飲食業の一般的なサービス業から構成されていると考えれば良いようです。

3. 一般サービス業の平均時給の推移

それでは、一般サービス業の労働時間あたり雇用者報酬の推移から見ていきましょう。

まずは為替レート換算の数値からです。

労働時間あたり雇用者報酬 一般サービス業 名目 為替レート換算

図2 労働時間あたり雇用者報酬 一般サービス業 為替レート換算
(OECD統計データより)

図2は一般サービス業労働時間あたり雇用者報酬について、為替レート換算値の推移です。

日本(青)は、1990年代にドイツやフランスと同じくらいの水準に達していますが、その後は横ばい傾向が続いています。

2013年あたりからOECDの平均値を下回る傾向となり、イタリアの水準も下回りますね。

日本の一般サービス業は主要先進国の中でも比較的水準が低いという事になりそうです。

労働時間あたり雇用者報酬 一般サービス業 名目 購買力平価換算

図3 労働時間あたり雇用者報酬 一般サービス業 購買力平価換算
(OECD統計データより)

図3はより生活実感に近いとされる購買力平価換算による推移です。

日本はイギリスと共にOECD平均値よりやや高い水準でしたが、2002年ころから平均値を下回るようになり、他国との差がやや開いていきます。

一般サービス業では、アメリカよりもフランスやドイツの水準がかなり高いのも特徴的ですね。
イギリスよりイタリアの水準が高いのも印象的です。

4. 一般サービス業の平均時給の国際比較

最後に、一般サービス業の労働時間あたり雇用者報酬について、国際比較をしてみましょう。

労働時間あたり雇用者報酬 一般サービス業 名目 購買力平価換算 2021年

図4 労働時間あたり雇用者報酬 一般サービス業 購買力平価換算 2021年
(OECD統計データより)

図4はOECD33か国の一般サービス業について、2021年労働時間あたり雇用者報酬を比較したグラフです。
黒丸は全産業平均値を表します。

ほとんどの国で全産業平均値を下回ります。

日本は23.0ドルで、OECD30か国中19位、G7中最下位で、OECD平均値28.5を大きく下回ります。

労働時間あたり雇用者報酬 一般サービス業
購買力平価換算 2021年 単位:ドル 30か国中
1位 48.8 ベルギー
7位 38.9 ドイツ
8位 38.4 ドイツ
10位 36.0 アメリカ
14位 31.1 イタリア
15位 29.5 イギリス
19位 23.0 日本
平均 28.5

5. 一般サービス業の平均時給の特徴

今回は、一般サービス業の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)についてご紹介しました。

日本の一般サービス業は、産業の中でも低い水準となっています。
一般サービス業の労働者数は多く、国内での存在感も大きい産業ですね。
どの国も23~27%のシェアを占めているようです。

産業別 労働者数 シェア 2019年

図5 産業別 労働者数シェア 2019年
(OECD統計データより)

一般サービス業は、主要先進国では23~27%程度を占める非常に規模の大きな産業です。
特に日本では27.1%とかなり高い水準に達しています。

一般サービス業の平均時給は国際比較してみても、30か国中20位で、全産業平均値と比べて順位は変わりません。
国際的に見ても、一般サービス業は相対的に平均時給の低い産業という事が言えそうです。

ボリュームの大きな産業故に、この平均時給の低さが全体に与える影響も大きいのではないでしょうか。
特に宿泊・飲食業などはアルバイトやパートも多く、時給水準が低く抑えられがちと思います。
逆に、この産業の時給水準が上がっていくと全体の底上げにもなりそうですね。

日本の産業は全般的に労働に対する対価が低いように見受けられますが、一般サービス業では特にそれが確認できるのではないでしょうか。

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