183 人口と豊かさの関係とは? - 人口変化とGDP成長率の相関
日本は少子高齢化し人口が減少する人口オーナス期にあるので、経済成長する事が難しいと言われます。統計データから、人口とGDPの関係について可視化してみます。
1. 人口とGDPの関係
前回は、OECDとBRICS各国について、人口に占める若年人口(20歳未満)、生産年齢人口(20~64歳)、高齢人口(65歳以上)の比率を可視化してみました。
日本は少子高齢化が進み、人口減少が他国よりも大きな割合で進むと予想されています。
一方で、高齢者の割合が増え、若年層の割合が減るので、差し引きの生産年齢人口は思っていたよりも極端に低下するわけではなさそうです。
全人口に占める生産年齢人口の比率は、2050年の時点で48~56%程度に収斂していき、各国の事情としては大きく差異が無いという事になりそうです。
今回は改めて、人口増加と経済規模の関係について確認してみたいと思います。
まずは、現在の人口と経済規模を示すGDPとの関係を可視化してみましょう。
図1 人口-GDP 2018年 OECD+BRICS
図1が2018年時点での、人口(横軸)、GDP(縦軸)を表したバブルチャートです。
バブルの大きさは1人あたりGDP(名目、為替レート換算)を表します。
横軸、縦軸共に対数表記としている点にご注意ください。
図1の通り人口と経済規模には明らかな相関関係がある事がわかりますね。
人口が多い方が、経済規模が大きいという当然の関係ではあります。
また、どの領域にも1人あたりGDPの大きい(バブルの大きい)国が存在していますので、人口と1人あたりGDPには明確な関係はなさそうです。
右上の領域にG7やBRICS各国が集中している事が確認できます。
2. 人口増減率と1人あたりGDP成長率の関係
それでは、人口が増えるほど経済成長しやすく(人口ボーナス期)、逆に人口が減ると経済成長しにくい(人口オーナス期)という指摘もあるようです。
人口の増減率と1人あたりGDPの成長率の関係から、可視化してみましょう。
これから人口が減っていく事が確実な日本では、国民1人1人が豊かになれるかどうかが重要ですね。
図2 人口- 1人あたりGDP (1997年→2018年)
図2は人口の増減率と1人あたりGDPの成長率についてのバブルチャートです。
1997年から2018年の変化量を倍率として表現しています。
バブルの大きさは2018年の1人あたりGDP(名目、為替レート換算)を表します。
日本は人口の増減率も、1人あたりGDPの成長率もほぼ変化がありません。
ラトビア、リトアニア、エストニアや、ハンガリー、ポーランドなど、人口が減少したり停滞している国もあります。
これらの国も1人あたりGDPが大きく成長している事がわかります。
もちろん、これら東欧諸国は、旧ソ連崩壊後からの経済の急激な変化と人口流出が並行している点には注意が必要ですね。
これらの人口停滞・減少している国と日本を外れ値としてみた場合、その他の国の傾向としては、人口の増加率と1人あたりGDPの成長率にはやや緩い正の相関が見て取れると思います。
ドイツも日本と同様人口の変化はほぼゼロですが、1.7倍ほどとなります。
ポルトガル、イタリア、フィンランドなども人口が停滞気味ですが、1人あたりGDPは1.5~2倍程度です。
このグラフから見て取れる事は、確かに人口増加率が高い方が、経済的に豊かになりやすい傾向はあるという事ですね。
一方で、人口が減少していたり、停滞していても豊かになっている国がいくつもあるという事も事実のようです。
もちろん、国ごとに事情は異なるため一概には言えませんが、1人あたりの指標で見た場合、人口が増加しないと豊かになれないとは言い切れないですね。
いずれにしろ、日本の位置は特殊です。
3. 人口とGDPの関係の特徴
今回は、人口とGDPの関係について整理してみました。
日本は少子高齢化が進み、人口も減少局面に入っています。
1997年以降経済停滞も続いてきました。
経済停滞が人口減少と結び付けて語られがちですが、これまでの統計データで見てきた通り、必ずしもそれだけではないようです。
もちろん、人口が増え、労働世代人口の割合も増加していく人口ボーナス期において、経済成長しやすい事は事実と思います。
日本の高度成長期がまさにそうだったのではないでしょうか。
一方で、今後は少子高齢化しつつ、人口も減っていく事が確実視されています。
これまで多くの統計データを見てきて分かったのは、バブル・バブル崩壊の後遺症が長引いてきた事と、並行して極端に円高が続いてきた可能性です。
近年ではこれら2つの要素が解消されつつあり、日本が抱えてきた特殊な状況が改善されつつあります。
特に2010年以降は、GDP、物価、平均給与、投資など様々な面で上昇傾向が観察されます。
当然リーマンショック時の下落が大きかった反動もあると思いますが、近年では1997年のピーク時の水準を超える指標も出始めました。
これらの変化は、既に人口が減少し始めているにもかかわらず起こっている変化です。
これから日本が人口動態の変化と共に、どのように経済的な推移を辿るのか、引き続き共有していきたいと思います。
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