246 失業率って何? - 労働力人口・就業者数・完全失業者数
日本は失業率の低い国として知られていますが、その定義や具体的な計算方法、推移などをご紹介します。
1. 失業率とは
前回は日本の就業者数や就業率について取り上げてみました。
日本の男性労働者は高齢世代が増えていますが、現役世代が減っていて全体としては減少傾向です。
女性は各世代で就業率が上がり、少子高齢化が進みながらも全体としては増加傾向のようです。
今回は、失業率についてフォーカスしてみます。
日本は失業率が低い国として有名ですね。
「労働力調査 用語の定義」によれば、「失業率」は次のように定義されています。
完全失業率 : 「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合
労働力人口 : 15歳以上の人口のうち,「就業者」と「完全失業者」を合わせたもの
完全失業者 : 次の3つの条件を満たす者
1. 仕事がなくて調査週間中に少しも仕事をしなかった(就業者ではない。)。
2. 仕事があればすぐ就くことができる。
3. 調査週間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む。)。
例えば仕事をしたいと思っていても、求職活動をしていなければ完全失業者と看做されないことになります。
やむを得ない事情があって仕事や求職活動をあきらめている人は、完全失業者とはなりませんね。
日本は介護などによってこのように隠れた失業者が多い事も指摘されているようです。
就業者 : 「従業者」と「休業者」を合わせたもの
従業者 : 調査週間中に賃金,給料,諸手当,内職収入などの収入を伴う仕事(以下「仕事」という。)を1時間以上した者。
なお,家族従業者は,無給であっても仕事をしたとする。
休業者 : 仕事を持ちながら,調査週間中に少しも仕事をしなかった者のうち,
1.雇用者で,給料・賃金(休業手当を含む。)の支払を受けている者又は受けることになっている者。
なお,職場の就業規則などで定められている育児(介護)休業期間中の者も,職場から給料・賃金をもらうことになっている場合は休業者となる。雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づく育児休業基本給付金や介護休業給付金をもらうことになっている場合も休業者に含む。
2.自営業主で,自分の経営する事業を持ったままで,その仕事を休み始めてから30日にならない者
2. 日本の労働力人口
日本の失業率を確認するにあたって、労働力人口や完全失業者数について把握していきましょう。
まずは日本の労働力人口からです。
図1 日本 労働力人口
(総務省統計局 労働力調査 より)
図1が日本の労働力人口の推移です。
前回の就業者数にかなり近いですが、完全失業者数がプラスされているだけやや傾向が異なります。
1997年にピークとなった後は、やや減少気味になりましたが、2013年頃から増加傾向です。
直近では6,907万人になります。
日本 労働力人口
単位: 万人
全体 / 男性 / 女性 / 男性比率(%)
1970年 5,153 / 3,058 / 2,024 / 59.3
1980年 5,650 / 3,465 / 2,185 / 61.3
1990年 6,384 / 3,791 / 2,593 / 59.4
2000年 6,766 / 4,014 / 2,753 / 59.3
2010年 6,632 / 3,850 / 2,783 / 58.0
2021年 6,907 / 3,827 / 3,080 / 55.4
男性の労働力人口は近年徐々に減少していて、女性の労働力人口の割合が少しずつ高まっているようです。
3. 日本の完全失業者数
次に日本の完全失業者数の推移です。
図2 日本 完全失業者数
(総務省統計局 労働力調査 より)
図1は日本の完全失業者数の推移です。
1990年代後半から急激に立ち上がり始め、途中減少する時期を含みますが、2018年ころまでやや高い水準が続きます。
2012年から減少傾向が進み、2019年を底にして若干増加傾向です。
2020年以降の上昇は、コロナ禍等によるものと見れそうですね。
日本 完全失業者数
単位: 万人
全体 / 男性 / 女性 / 男性比率(%)
1970年 59 / 38 / 21 / 64.4
1980年 114 / 71 / 43 / 62.3
1990年 134 / 77 / 57 / 57.5
2000年 320 / 196 / 123 / 61.3
2010年 334 / 207 / 128 / 62.0
2020年 192 / 115 / 76 / 59.9
男性の失業者数の方が多いようです。
4. 労働力人口と就業者数の違い
次に、労働力人口、就業者数、失業者数の推移を1つのグラフに重ね合わせて眺めてみましょう。
図3 日本 労働力人口・就業者数・失業者数
(総務省統計局 労働力調査 より)
図3は日本の労働力人口(青)、就業者数(赤)、失業者数(緑:右軸)をまとめたグラフです。
1990年代から2018年頃にかけて労働力人口と就業者数の差が開き、完全失業者数の多い時期が確認できます。
2018年以降は1980年代に近い水準です。
5. 日本の完全失業率
続いて日本の完全失業率についてみてみましょう。
完全失業率 = 完全失業者数 ÷ 労働力人口 x 100
図4 日本 完全失業率
(総務省統計局 労働力調査 より)
図4が日本の完全失業率です。
やはり1990年代から2010年代まで高い水準が続きましたが、ここ数年ほどはバブル前くらいの水準になっていたようです。
バブル期にやや減少し、バブル崩壊により増加傾向に転じた様子が良くわかります。
2004年あたりからまた下がり始めますが、2008年のリーマンショックでまた増加しています。
2012年から再度下がり始め、2019年を底にしてコロナ禍により少し増加しているといった推移ですね。
日本 完全失業率
単位: %
総数 / 男性 / 女性
1970年 1.1 / 1.2 / 1.0
1980年 2.0 / 2.0 / 2.0
1990年 2.1 / 2.0 / 2.2
2000年 4.7 / 4.9 / 4.5
2010年 5.1 / 5.4 / 4.6
2020年 2.8 / 3.0 / 2.5
男性も女性もほぼ連動して推移していますね。
よく見ると、1998年以降は男性の方が完全失業率が高くなっている点です。
女性労働者の人数が増えている事もあり、女性の雇用の方が優先されているような印象がりますね。
6. 日本の失業率の特徴
今回は、労働力人口と、完全失業者数、完全失業率についてご紹介しました。
日本は失業率が低いと言われますが、近年では3%未満程度で推移しているようです。
1990年代から2010年代にかけて比較的高い水準が続いた時期があったようです。
また、男性と女性では極端な差がなく、連動して推移しているのも特徴と言えそうです。
高齢の労働者が増えつつも、失業率がかなり抑えられているのは大変興味深いですね。
一方で、世代別の平均給与は下がっているのが日本の特殊なところです。
参考記事: 豊かになれない日本の労働者
みんなが働けるけれども、対価は下がってしまっているわけですね。
そして、労働世代の再分配も含めた可処分所得は少なく、格差や貧困率が高いのが日本の特徴です。
参考記事: 可処分所得が高い国の特徴
参考記事: 所得格差(ジニ係数)って何?
参考記事: 貧困率の高い日本
雇用ばかりを優先して、仕事の価値を高められていないという指摘もあるようです。
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