054 大手企業でも半分が赤字!? - 企業規模別の欠損法人割合
企業の7割が欠損法人と言われる中で、企業規模別に見た傾向について可視化してみます。実は大企業でも半分は欠損法人であったようです。
1. 零細企業の欠損法人割合
前回は、国税庁の統計データから、日本に多く存在する赤字企業(欠損法人)の実態について取り上げてみました。
日本企業の実に7割以上が欠損法人という事実に驚かれた方も多いのではないでしょうか。
(私は驚きました!)
もちろん、この欠損法人の中には当期純利益がプラスでも、前期の赤字を繰越すとマイナスになる企業も含まれます。
この前期分の赤字を繰越して差し引きする事を繰越欠損金の控除と呼ぶそうです。
必ずしも当期の赤字企業数そのものを表すわけではないので、数値の読み方に注意が必要です
とはいえ、繰越欠損金の控除でマイナスということは、やはり全体としては赤字の事業ということになりますね。
赤字の事業と聞くと中小企業が多いように思われるかもしれません。
今回は、企業規模別にその実態を見てみましょう。
図1 利益計上法人・欠損法人数 1000万円未満
(国税庁統計データ より)
図1が資本金1000万円未満の零細企業についての黒字企業(利益計上法人:青色)と赤字企業(欠損法人:赤色)をグラフ化したものです。
残念ながら2011年以降のデータは、企業規模の区分の仕方が変更されているため、継続的な時系列データは2010までとなります。
今回は主にバブル期(1985~1990年)とポストバブル期(1991~1997年)の変化に着目していきましょう。
緑色の折れ線グラフが、欠損法人の割合(右軸)です。
前回取り上げた全ての企業規模のデータでは、全体で約270万社のうち、2010年では約72%の企業が欠損法人でした。
資本金1000万円未満(零細企業)では2010年で約150万社で約8割が欠損法人となります。
1990年頃を境に企業数の減少とともに、利益計上法人が極端に減少していることも特徴的ですね。
もちろん、当年度が決算上黒字でも、前年度の赤字を控除したら赤字になるという繰越欠損も含まれます。
2. 中小企業の欠損法人割合
図2 利益計上法人・欠損法人数 1000万円以上 1億円未満
(国税庁統計データ より)
図2は資本金1000万円以上 1億円未満の多くの中小企業についてのグラフです。
2010年の時点では、約110万社で、欠損法人の割合も趨勢的に増加傾向となり約7割が欠損法人となります。
1995年まで急激に企業数が増加し、1995年あたりから減少傾向となり、利益計上法人の数が減少しています。
やはり圧倒的に中小企業が欠損法人が多いという事がわかりますね。
1991年から1995年までで、1000万円未満の零細企業が減少し、1000万円以上1億円未満の中小企業が急増しているのも興味深いです。
それでは規模の大きな企業はどうでしょうか。
3. 中堅企業の欠損法人割合
続いて、資本金が1億円以上100億円未満の中堅企業(大企業)の欠損法人割合を見てみましょう。
図3 利益計上法人・欠損法人数 1億円以上 100億円未満
(国税庁統計データ より)
図3は資本金1億円以上 100億円未満の多くの大企業についてのグラフです。
2010年の時点では、約3.5万社で、欠損法人の割合も傾向的に増加傾向となり約5割となります。
この頃までは企業規模が大きくても約半分が赤字事業というのも驚きですね。
1990年頃までは30%未満の割合で、利益計上法人が順調に増加しています。
しかし1991年あたりから、企業数は増え続けるものの、利益計上法人は横ばいになっています。
バブルの崩壊を機に、大企業であれど事業環境が悪化し、稼げなくなっているという事を示していると思います。
4. 大手企業の欠損法人割合
続いて、資本金100億円以上の大手企業(大企業)の欠損法人割合です。
図4 利益計上法人・欠損法人数 100億円以上
(国税庁統計データ より)
図4は資本金100億円以上のいわゆる大手企業のデータとなります。
2010年の時点では約1300社ほどあり、やはり約5割が欠損法人です。
欠損法人の割合は1990年ころまでは10~20%程度で推移していたのが、1991年から急激に増加し始めていますね。
つまり大手企業と言えどバブルの崩壊を機に赤字体質となっていたようです。
5. 企業規模による比較
最新のデータは企業規模の区分が変更されていますので、2021年の規模別の比較をしてみましょう。
図5 利益計上法人・欠損法人 2021年
(財務省 会社標本調査結果より)
図5が2021年の企業別に比較したデータです。
2021年はコロナ禍の中ではありますが、コロナ禍前の2018年と比較してもあまり変化がありません。
特徴的なのは資本金1億円未満の中小零細企業で欠損法人の割合が50~65%で高い状態なのに対して、1億円以上の中堅企業、大企業では極端に割合が低い事です。
規模の大きな企業は概ね20~25%程度の範囲となっています。
バブル崩壊後、赤字体質となっていた企業が、中小零細企業ではある程度そのままの状態が続き、規模の大きな企業では改善が進んだと見れそうです。
6. 日本の欠損法人割合の特徴
2010年頃には大企業や大手企業ですら約半分が欠損法人だったというのは驚きの結果ではないでしょうか。
やはり、バブルとバブル崩壊による影響をかなりな時期まで引きずっていたと見れそうですね。
その後大企業は利益が出るようになり、中小零細企業は多少の改善がありつつも、欠損法人の割合が高い状態が続いているようです。
中小零細企業が事業の価値を上げ、十分な対価を得られるよう変化していく必要性がありそうですね。
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