203 平均給与の産業別国際比較 - 日本はどの産業が高い?

主要先進国の産業別の平均給与について国際比較してみます。日本ではどのような産業の給与水準が高いのか、国際比較するとよくわかります。

1. 工業の平均給与

前回は、平均給与に相当する雇用者1人あたり雇用者報酬について、主要先進国の各国通貨建てでの推移をご紹介しました。
金融保険業と情報通信業の水準が高く、工業がこれらに次ぐという共通の特徴があるようです。

日本は全体的に停滞が続いていますが、水準としてはどうなのでしょうか?
今回は、雇用者1人あたり雇用者報酬のドル換算値について国際比較してみたいと思います。

雇用者1人あたり雇用者報酬 = 雇用者報酬 ÷ 雇用者数

まずは日本の最大産業でもある工業の水準から比較してみましょう。

雇用者1人あたり雇用者報酬 工業

図1 雇用者1人あたり雇用者報酬 工業
(OECD統計データより)

図1は工業の雇用者1人あたり雇用者報酬です。
為替レートでドル換算しています。

日本(青)は横ばい傾向で、近年ではイタリアと同じくらいの水準です。

アメリカとイギリス、フランス、ドイツはそれほど水準が離れていないのも特徴的ですね。
他の産業でのアメリカの圧倒感と比べると、意外な結果となっています。
アメリカの工業の水準がやや低めなのかもしれません。

工業 雇用者1人あたり雇用者報酬
2021年 単位:ドル
83,472 アメリカ
76,125 イギリス
70,296 ドイツ
68,142 フランス
53,512 イタリア
51,816 日本

2. 情報通信業の平均給与

続いて、給与水準の高い産業である情報通信業の比較です。

雇用者1人あたり雇用者報酬 情報通信業

図2 雇用者1人あたり雇用者報酬 情報通信業
(OECD統計データより)

図2が情報通信業の雇用者1人あたり雇用者報酬です。

やはりアメリカの水準が高いですが、フランス、イギリス、ドイツも相応の水準に達しています。
日本は横ばい傾向で、近年ではイタリアと同程度です。
日本では情報通信業は給与水準の高い産業ですが、国際比較してみると相対的にはかなり低い事になります。
近年ではイタリアと同じくらいですが、ドイツや他の主要先進国とは差が開いている印象ですね。

情報通信業 雇用者1人あたり雇用者報酬
2021年 単位:ドル
136,786 アメリカ
100,808 フランス
95,588 イギリス
93,269 ドイツ
65,521 日本
64,027 イタリア

3. 金融保険業の平均給与

続いて情報通信業と共に給与水準の高い金融保険業の比較です。

雇用者1人あたり雇用者報酬 金融保険業

図3 雇用者1人あたり雇用者報酬 金融保険業
(OECD統計データより)

図3が金融保険業の雇用者1人あたり雇用者報酬です。

アメリカが非常に高い水準ですが、イギリスも停滞しつつ相応の水準に達しています。
イギリスの金融産業の活発さが良くわかりますね。

日本と一緒に主要先進国で低い水準の産業の多いイタリアは、フランス、ドイツと同程度です。

日本ばかりがかなり低い水準で推移しています。
日本は給与水準の高い産業ほど、相対的には低めの水準となっている点が興味深いですね。

金融保険業 雇用者1人あたり雇用者報酬
2021年 単位:ドル
137,197 アメリカ
118,483 イギリス
91,698 ドイツ
90,277 フランス
87,011 イタリア
63,619 日本

今やアメリカは日本の2倍以上の水準です。
このデータは急激に円高が進む前の2021年の数値ですので、2022年以降は更に差が開いていると思われます。

4. 建設業の平均給与

続いて平均的な水準の建設業の比較です。

雇用者1人あたり雇用者報酬 建設業

図4 雇用者1人あたり雇用者報酬 建設業
(OECD統計データより)

図4が建設業の雇用者1人あたり雇用者報酬です。

工業と同様に、アメリカの水準がやや抑えめなのが特徴的ですね。
日本は停滞気味ですが、近年では主要先進国の中でも高めの水準です。

建設業は国際的にはやや水準の高い産業と言えそうです。

建設業 雇用者1人あたり雇用者報酬
2021年 単位:ドル
66,426 アメリカ
60,574 フランス
56,766 日本
53,647 イギリス
52,978 ドイツ
42,767 イタリア

5. 公務・教育・保健の平均給与

次は公共的な産業である公務・教育・保健の平均給与比較です。

雇用者1人あたり雇用者報酬 公務・教育・保健

図5 雇用者1人あたり雇用者報酬 公務・教育・保健
(OECD統計データより)

図5が公務・教育・保健の雇用者1人あたり雇用者報酬です。

近年では圧倒的にアメリカの水準が高いのが特徴的です。
日本は1990年代の高水準から低下傾向が見られ、近年では主要先進国の中でも最低水準となります。

フランス、イギリス、ドイツ、イタリアが同じくらいの水準なのも特徴的ですね。

公務・教育・保健 雇用者1人あたり雇用者報酬
2021年 単位:ドル
88,593 アメリカ
56,394 フランス
55,863 イギリス
55,031 ドイツ
51,944 フランス
43,752 日本

6. 一般サービス業の平均給与

次は一般サービス業の平均給与です。

雇用者1人あたり雇用者報酬 一般サービス業

図6 雇用者1人あたり雇用者報酬 一般サービス業
(OECD統計データより)

図6が一般サービス業の雇用者1人あたり雇用者報酬です。

やはりアメリカが高い水準ですが、フランスも他の主要先進国よりも一段高い状況が続いているようです。

日本は近年主要先進国では最下位となります。

一般サービス業 雇用者1人あたり雇用者報酬
2021年 単位:ドル
63,749 アメリカ
48,049 フランス
42,465 イギリス
41,991 ドイツ
39,261 イタリア
35,344 日本

7. 専門サービス業の平均給与

最後が専門サービス業の平均給与です。

雇用者1人あたり雇用者報酬 専門サービス業

図7 雇用者1人あたり雇用者報酬 専門サービス業
(OECD統計データより)

図7が専門サービス業の雇用者1人あたり雇用者報酬です。

アメリカが圧倒的な水準で他国との大きな乖離があります。

フランスがやや高め、日本がドイツやイギリスと同程度、イタリアがやや低めですね。

専門サービス業はコンサルタントや士業などの専門的な仕事と、職業紹介業など業務支援的な仕事が含まれます。
アメリカは専門的な仕事の報酬が極端に高かったり、業務支援的な仕事が少ないなどの特徴があるのかもしれませんね。

専門サービス業 雇用者1人あたり雇用者報酬
2021年 単位:ドル
141,435 アメリカ
61,797 フランス
53,216 ドイツ
52,181 イギリス
45,235 日本
40,894 イタリア

アメリカの水準が2位のフランスの2倍以上です。

8. 産業別平均給与の特徴

今回は、平均給与に相当する雇用者1人あたり雇用者報酬について、主要先進国の産業別の比較をご紹介しました。

各国である程度傾向は似通っているものの、産業によって特徴が変わりますね。

総じてアメリカは水準が高く、特に公務・教育・保健や専門サービス業では圧倒的です。
イギリスは金融保険業の高さが特徴的です。
フランスは雇用者報酬では総じて高めの水準ですね。

日本、イタリアは主要先進国の中では低めの産業が多いようです。
特に日本は1990年代の高い水準からすると、停滞傾向が強く、他の主要先進国に抜かれている状況です。

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