235 可処分所得が高い国の特徴 - 等価可処分所得の国際比較

先進国の等価可処分所得詳細項目について国際比較してみます。給与水準、その他の所得水準、再分配などの傾向が可視化できます。

1. 現役世代の等価可処分所得の国際比較

前回は家計の世帯人員で調整して一般化し等価可処分所得の詳細について、主要国での比較をしてみました。
日本は給与所得が大半を占めますが、他の主要国は財産所得や経常移転給付も多いという事がわかりました。

今回はせっかくですのでOECD各国の等価可処分所得の詳細について比較していきましょう。
可処分所得は、給与所得や事業所得などの収入から、税金や社会保険料などの経常移転負担を差し引き、社会保障費などの経常移転給付を加えた差し引きの所得となります。
等価可処分所得は、可処分所得を世帯人員の平方根(√)で割って、一般化した指標です。

今回は高齢世代の等価可処分所得についてもご紹介していきます。

等価可処分所得 平均値 18~65歳 2018年

図1 等価可処分所得 平均値 18~65歳 2018年
(OECD統計データ より)

図1はOECD各国の等価可処分所得について、詳細項目を積みあげたグラフです。
18~65歳の現役世代についての数値で、為替レートによるドル換算値での比較となります。

●が差し引きの等価可処分所得を表します。

スイスやルクセンブルク、ノルウェーなどはやはり水準が高いですね。
次いでアメリカが5番目、カナダが8番目の水準です。
これらの所得水準の高い国々の特徴は、やはり給与水準そのものが高い事ですね。
さらに財産所得や経常移転給付も日本よりかなり多いようです。

日本は28,717ドルで、37か国中21番目と下位となります。
フランスや韓国、OECDの平均値(30,427ドル)を下回ります。

等価可処分所得 平均値 18~65歳
2018年 単位:ドル 37か国中
1位 66,393 スイス
5位 51,980 アメリカ
8位 42,265 カナダ
16位 34,487 ドイツ
17位 33,912 イギリス
18位 32,760 フランス
20位 31,486 イタリア
21位 28,717 日本
22位 26,675 イタリア
平均 30,427

それぞれの項目の日本の数値(単位:ドル)は以下の通りとなります。
参考までにドイツの数値を( )内に記載します。

日本 等価可処分所得 現役世代 詳細
2018年 単位:ドル
給与所得  31,343 19位 (39,648)
財産所得   869 21位 (1,756)
事業所得   1,766 29位 (4,443)
経常移転給付 3,595 24位 (4,623)
経常移転負担 8,843 20位 (15,985)

日本は給与所得自体が低めですが、更に財産所得、事業所得、経常移転給付も平均未満です。
少子高齢化で負担が増えているとはいえ、経常移転負担が以外にも少ない水準なのも特徴的ですね。

2. 現役世代の等価可処分所得の項目別シェア

次に等価可処分所得のバランスについてみてみましょう。

等価可処分所得 シェア 18~65歳 2018年

図2 等価可処分所得 シェア 18~65歳 2018年
(OECD統計データ より)

図2が等価可処分所得について、総所得を100%とした場合の各項目のシェアを表したグラフです。
給与所得のシェアが高い順に並べています。

どの国も、給与所得が収入の大部分を占めています。
日本はアイスランドに次いで2番目に給与所得の割合が大きいようです。

等価可処分所得 シェア
18~65歳 単位:%
A 給与所得
B 財産所得
C 事業所得
D 経常移転給付
E 経常移転負担
A/B/C/D/E
83/ 2/ 5/ 9/31 日本
82/ 6/ 4/ 9/21 アメリカ
79/ 4/ 9/ 9/32 ドイツ
77/11/ 5/ 8/21 カナダ
74/ 4/10/13/28 イギリス
69/ 7/ 6/18/17 フランス
69/ 6/21/ 5/16 韓国
58/ 3/21/18/26 イタリア

カナダは財産所得が比較的多く、イギリス、フランス、イタリアは経常移転給付が比較的多いようです。
韓国とイタリアは事業所得が多いのも特徴的ですね。
イタリアは個人事業主が多い事でも知られています。

フランスやイタリアは失業率が高い事でも知られていますが、その分給付が多くなっているのが特徴的ですね。

各国の特徴がよくわかり興味深いです。

3. 高齢世代の等価可処分所得の国際比較

次に65歳以上の高齢世代についても見てみましょう。

等価可処分所得 平均値 65歳以上 2018年

図3 等価可処分所得 平均値 65歳以上 2018年
(OECD統計データ より)

図3が65歳以上の高齢世代等価可処分所得です。

やはり各国とも経常移転給付が最も多く、次いで財産所得や給与所得といった順番となっているようです。

日本は比較的給与所得が多く、財産所得や経常移転給付が少ない特徴がありそうです。
差引の等価可処分所得は2,2015ドルで、37か国中21番目の水準です。
OECDの平均値25,121ドルを1割ほど下回ります。

等価可処分所得 平均値 65歳以上
2018年 単位:ドル 37か国中
1位 61,485 スイス
5位 46,820 アメリカ
6位 36,854 カナダ
12位 31,531 フランス
15位 29,321 ドイツ
19位 26,487 イギリス
20位 25,778 イタリア
21位 22,015 日本
23位 19,197 イタリア
平均 25,121

それぞれの項目の日本の数値は以下の通りです。
( )内はドイツの数値です。

日本 等価可処分所得 高齢世代 詳細
2018年 単位:ドル
給与所得    9,418 7位 (4,209)
財産所得    1,811 21位 (3,178)
事業所得    1,268 19位 (2,051)
経常移転給付 14,001 23位 (25,457)

日本の場合高齢世代でも働く人が多く給与所得が多めですが、逆に経常移転給付がかなり少ないようです。
財産所得や事業所得も少ない方ですね。

4. 高齢世代の等価可処分所得の項目別シェア

続いて、高齢世代の等価可処分所得について項目別シェアを見てみましょう。

等価可処分所得 シェア 65歳以上 2018年

図4 等価可処分所得 65歳以上 シェア 2018年
(OECD統計データ より)

図4が高齢世代の等価可処分所得について、総所得を100%とした時の各項目のシェアを表したグラフです。
給与所得のシェアが高い順位並べてあります。

日本は給与所得の割合が比較的高く37か国中4番目です。

フランス、イギリス、イタリア、ドイツなどは給与所得の割合がかなり小さいですね。
カナダは経常移転給付のシェアが小さいですが、財産所得のシェアが極端に大きいのが特徴的です。
カナダは家計の株式投資が多い国でもありますので、その傾向がここでも確認できます。

等価可処分所得 シェア
65歳以上 単位:%
A 給与所得
B 財産所得
C 事業所得
D 経常移転給付
E 経常移転負担
A/B/C/D/E
36/15/17/33/12 韓国
36/ 7/ 5/53/17 日本
31/21/ 3/45/14 アメリカ
20/43/ 3/34/14 カナダ
12/ 9/ 6/74/16 ドイツ
11/ 5/ 9/75/21 イタリア
11/11/ 4/74/20 イギリス
5/15/ 1/78/15 フランス

5. 世代別の等価可処分所得の特徴

今回は等価可処分所得について、現役世代高齢世代の各国比較をしてみました。

日本は現役世代では給与所得も含めて多くの項目で所得水準が低い傾向で、経常移転給付も負担も少なめです。
高齢世代は高齢労働者が多い事もあり給与所得は高めですが、経常移転給付や財産所得が少ないようです。

日本は主要国の中では極端に高齢の労働者が多い国でもあります。
 参考記事: 高齢者の働く国

逆に給付だけでは十分な生活ができないため、働いている高齢世代が多いという事も窺わせますね。
他の主要国は、給付も多く高齢者の所得水準はかなり高いようです。

皆さんはどのように考えますか?

参考:最新データ

(2024年11月追記)

各国の等価可処分所得について、最新の2021年の国際比較です。
生活実感に近い購買力平価での換算値となります。

等価可処分所得 18~65歳 購買力平価換算値 2021年

図5 等価可処分所得 18~65歳 購買力平価換算 2021年
(OECD.Statより)

日本は29,914ドルで、OECDの中では25番目の水準となります。

日本は失業率が低く就業率が高い事から給与所得が順位の割には高めです。
イタリアは失業率が高く、個人事業主が多い事から相対的に事業所得が多い構成となっています。

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