337 直接投資の収益とバランス - 海外との投資効率
直接投資からの所得について、対外直接投資と対内直接投資の推移やそのバランスを統計データで確認し、国際比較してみます。
1. 対外直接投資所得の推移
前回は、日本の直接投資収益について、対外直接投資所得(受取)と対内直接投資所得(支払)に分けてご紹介しました。
日本は対外直接投資に比べ、対内直接投資が極端に少ないため、その所得も同様に偏っています。
今回は、主要先進国の直接投資所得について、国際比較した結果をご紹介します。
まずは、対外直接投資所得(Foreigin Direct Investment, Income, Outward)です。
海外への直接投資から得られる、配当金などの所得となります。
海外子会社への再投資収益(Reinvested earnings)も含まれます。
図1 対外直接投資 所得(受取)
(OECD統計データより)
図1が主要先進国の対外直接投資所得(受取)の推移です。
主要先進国の他に、直接投資の多いオランダとスイスも掲載しています。
総額となりますので、やはりアメリカが圧倒的ですが、近年では日本が2番目の水準です。
2000年代はイギリスの水準が高かったようですが、横ばい傾向が続いていたようです。
直接投資による所得なので、アップダウンするはずですが、概ね各国とも増加傾向です。
2022年の数値では、アメリカが6,267億ドル、日本2,061億ドル、イギリス1,911億ドル、オランダ1,874億ドル、ドイツ1,563億ドルです。
日本は比較的多い対外直接投資からの所得があるようです。
2. 対内直接投資所得の推移
続いて、対内直接投資所得(支払)です。
海外からの日本企業への直接投資に対して支払う配当金などの所得となります。
図2 対内直接投資 所得
(OECD統計データより)
図2が対内直接投資所得の推移です。
やはりアメリカが圧倒的ですが、近年ではオランダもかなりな水準に達しています。
スイスもイギリスを上回っていますね。
イギリスは横ばい傾向ながら高い水準が続いています。
カナダ、フランス、ドイツ、日本は相対的に少ない水準です。
2022年の水準では、アメリカが3,088億ドル、オランダが1,780億ドル、スイス989億ドル、イギリス798億ドル、日本353億ドルです。
オランダ、スイスは対外直接投資所得と同程度ですが、その他の主要先進国では対外直接投資所得を大きく下回ります。
3. 直接投資収益の推移
続いて、対外直接投資所得から対内直接投資所得を差し引いた、直接投資収益について見てみましょう。
図3 直接投資収益
(OECD統計データより)
図3が直接投資収益の推移です。
直接投資収益 = 対外直接投資所得(受取) - 対内直接投資所得(支払)
海外への投資から得られる所得から、海外からの投資で支払う所得を差し引いた差額となります。
アメリカが大きな水準が続いていますが、続いて日本の水準が高く、かつ増加傾向であることがわかります。
続いて、ドイツ、イギリス、フランスと続きます。
直接投資の規模が大きいオランダ、スイスは所得の差額となるとほぼ相殺してかなり規模が小さくなるようです。
オランダもスイスも、海外への投資所得受取と海外への投資所得受取が拮抗している事を窺わせます。
4. 直接投資所得のバランス
最後に、対外直接投資所得に対する対内直接投資所得の割合についても見てみましょう。
図4 対外直接投資所得に対する対内直接投資所得の比率
(OECD統計データより)
図4が対外直接投資所得に対する対内直接投資所得の比率を計算した結果です。
この数値が100%を超えると、海外へ支払う対内直接投資所得の方が上回っている事を意味します。
この数値が100%を下回り小さいほど、海外からの対外直接投資所得が超過しています。
推移を見ると、やはりオランダ、スイスが100%前後に達していてかなり高い水準となっています。
カナダは100%前後だったのが、近年では70%前後となっています。
図3でもカナダは直接投資収益がゼロ近辺だったのが、近年ではプラス化しています。
イギリスはアップダウンが激しいですが、40~100%の間で推移しています。
アメリカ、フランスドイツは25~50%位ですね。
日本は15~30%ですので、相対的にはかなり低い水準で推移してきたことになります。
5. 直接投資収益の特徴
今回は、直接投資からのリターンとなる直接投資所得についてご紹介しました。
主要先進国では直接投資所得はプラスで推移していて、直接投資残高と比べると海外からの対外直接投資所得の上回り方が大きいようです。
特にアメリカやイギリスは対外直接投資残高に対して対内直接投資残高の方が上回っている国ですが、直接投資収益では大きくプラスです。
ドイツやフランスも、対内直接投資残高は対外直接投資残高の50~60%ですが、対外直接投資所得に対する対内直接投資所得の比率は30~50%です。
残高(ストック)のバランスからすると海外からの所得の方が相対的に多いようです。
一方で、日本は対内直接投資残高は対外直接投資残高の12%程度ですが、対外直接投資所得に対する対内直接投資所得の比率は15~30%で推移しています。
積上げたストックに対して、日本へのリターンが相対的に少ない印象ですね。
あるいは、対内直接投資へのリターンが多すぎるのかもしれません。
投資の効率については次回取り上げてみます。
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