334 直接投資の多い国の特徴 - オランダ、イギリス、カナダ

直接投資の多いオランダ、イギリス、カナダについて、相手国別の対外直接投資残高、対内直接投資残高を統計データにより可視化してみます。

1. オランダの対外直接投資残高

前回は、日本、アメリカ、ドイツの相手国別直接投資のシェアについてご紹介しました。
アメリカにとってもドイツにとっても、日本は対内直接投資では大きな存在感ですが、対外直接投資では上位国に入りません。
各国に対する日本の立ち位置の非対称さが良くわかりました。

直接投資では、アメリカ、ドイツ以外にも、オランダ、カナダ、イギリスの規模が大きい特徴です。
この3国は近年ではドイツを上回る対外・対内国設投資残高に達しています。
参考記事:日本の直接投資は少ないのか?

今回は、この3国の相手国別直接投資のシェアに着目し、それぞれの国で日本がどのような存在なのかを確認していきたいと思います。

まずは、直接投資ではアメリカに次いで規模の大きいオランダからです。
オランダは直接投資の規模だけでなく、パートタイム雇用率や、企業の純金融負債が減っている点等、先進国の中でも特徴的な国ですね。

対外直接投資 2022年 オランダ

図1 対外直接投資残高 2022年 オランダ
(OECD統計データより)

図1が2022年のオランダの相手国別対外直接投資残高です。

上位国はイギリス、アメリカ、スイス、ドイツと欧米諸国が並びます。

アジア圏ではシンガポールが入っていますが、基本的には欧州中心に投資をしている事がわかりますね。
日本は400億ドルで、20番目の水準です。

アメリカよりもイギリスに多く投資しているのが特徴的ですね。
また、スイスへの投資もかなり多いようです。

2. オランダの対内直接投資残高

続いて、オランダの相手国別対内直接投資残高です。

対内直接投資残高 2022年 オランダ

図2 対内直接投資残高 2022年 オランダ
(OECD統計データより)

図2が2022年のオランダの相手国別対内直接投資残高です。

アメリカ(21%)、イギリス(20%)、ドイツ(11%)の3か国だけで50%を超えます。
その他も欧州諸国からの投資が多いようです。

日本からの直接投資は800億ドルで3%となります。
やはり日本に対しては、対外直接投資よりも対内直接投資の方が大幅に超過しているようです。

3. イギリスの対外直接投資残高

続いて、イギリスの直接投資残高です。
イギリスも先進国の中では対外・対内直接投資の多い国です。

対外直接投資 2021年 イギリス

図3 対外直接投資残高 2021年 イギリス
(OECD統計データより)

図3が2021年のイギリスの相手国別対外直接投資残高です。

イギリスの場合はアメリカ(29%)への投資がかなり多く、続いてオランダ(9%)、ルクセンブルク(6%)、スペイン(6%)と欧州各国が続きます。
スペインへの投資がフランスよりも多いというのが特徴的です。
逆にドイツへの投資はかなり少ないようです。

日本への対外直接投資残高は50億ドル程度で38番目の水準です。
日本への投資がかなり少ないですね。

4. イギリスの対内直接投資残高

続いて、イギリスの対内直接投資残高です。

対内直接投資残高 2021年 イギリス

図4 対内直接投資残高 2021年 イギリス
(OECD統計データより)

図4が2021年のイギリスの相手国別対内直接投資残高です。

やはりアメリカ(32%)からの投資が圧倒的ですね。
2番目はジャージー(8%)というのが特徴的です。
ジャージーはあまり聞かない地域名ですが、イギリス南部のイギリス王室属領との事です。

続いて、オランダ(7%)、ベルギー(6%)、ルクセンブルク(6%)、フランス(5%)、日本(5%)と続きます。
イギリスにおいても、日本は対内直接投資上位国ですが、対外直接投資ではかなり存在感の低い国という事になります。

5. カナダの対外直接投資残高

最後はカナダです。
カナダも近年直接投資がかなり多い国です。

対外直接投資残高 2022年 カナダ

図5 対外直接投資残高 2022年 カナダ
(OECD統計データより)

図5が2022年のカナダの相手国別対外直接投資残高です。

カナダの場合はアメリカへの対外直接投資が圧倒的ですね。
対アメリカだけで52%ものシェアになります。

続いてバミューダ諸島やバルバトス等の周辺地域や欧州地域が多いようです。

日本に対しては17億ドル程度で、41番目とかなり小さな投資規模となります。

6. カナダの対内直接投資残高

次がカナダの相手国別対内直接投資残高です。

対内直接投資残高 2022年 カナダ

図6 対内直接投資残高 2022年 カナダ
(OECD統計データより)

図6が2022年のカナダの相手国別対内直接投資残高です。

やはりアメリカが圧倒的で約半分を占めますが、続いてカナダ(7%)、イギリス(6%)、日本(3%)、中国(3%)と続きます。

ここでも日本は一定の存在感があるようですね。

7. 先進国の相手国別直接投資の特徴

今回は、直接投資の規模の大きいオランダ、イギリス、カナダの3か国について、相手国別の対外・対内直接投資残高をご紹介しました。

基本的に各国とも、相手国別に見ても双方向的な直接投資が基本となっているように見受けられます。

概ね対外直接投資残高の上位国は、対内直接投資残高の上位国となっていますね。

日本に対しては、直接投資が活発などの国も対内直接投資の上位国となっていますが、対外直接投資では上位国から外れています。
日本は自国に投資する存在だけれども、投資をする相手ではないといった見方もできるかもしれませんね。

日本は対外純資産が世界一という言われ方をしますが、実態を見てみると他国に投資ばかりしていて、他国からの投資が極端に少ないため、差引の純資産が多くなるという事のようです。

これは喜ばしい事なのかどうかは私にはわかりませんが、片思い的な印象を受けたのが正直なところです。
双方向的に投資を行って合理化を図るのがスタンダードなグローバル化だとすれば、日本は異質なグローバル化が進んでいると言えそうです。

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