114 大企業でも賃金減少? - 男性労働者の企業規模別給与中央値
日本においては、男性労働者が1990年代より低所得化しています。企業規模別の所定内給与中央値の変化を確認すると、中小企業だけではなく大企業においても減少しているようです。
1. 中小企業の所定内給与中央値
前回は給与の中央値と格差についてご紹介しました。
今回は企業規模による給与水準の違いについてご紹介したいと思います。
女性労働者は労働者数が増え平均給与も増えていますが、男性労働者は1990年代からすると低所得化しています。
今回は男性労働者にフォーカスしてみましょう。
今回は賃金構造基本統計調査のデータです。
企業規模は10~99人規模を中小企業、100~999人規模を中堅企業、1000人以上を大企業としました。
これまでの区分や正式な区分とはやや異なるのでご注意ください。
図1 所定内給与 中央値 中小企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)
図1が中小企業の所定内給与の中央値です。
年齢階級ごとの月額の数値で、単位は[千円]です。
青が2001年、赤が2019年のグラフです。
前回の記事でご紹介した全規模の年齢計の数値が、2019年で29.8万円だったので、平均からするとやはり金額は少ないようです。
年齢計では、27.7万円から25.0万円に1割ほど減少しています。
年齢層別で見ても、20~24歳を除いて全ての年齢層で中央値が下がっていますね。
特に35~54歳までの層で減少額が大きいようです。
45~49歳では、33.1万円→28.2万円と4.9万円も下がっています。
割合にすると、約15%も減ってることになります。
この数値は所定内給与ですので、休日出勤や時間外労働は含まれていません。
総労働時間(時間外労働)は減少傾向にありますので、総額にすると以前よりも更に下がっている可能性がありそうです。
もちろん、この間消費税は上がり、社会保障負担も増えて可処分所得は更に減っているので、実際に使えるお金は相当減少している事になりますね。
統計データが2001年からしかなかったのですが、日本経済の転換点である1997年にはもっと所得水準が高かったはずです。
1997年のピークから比べると更に中央値が下がっている事が想定されます。
年齢階級が上がるにつれて中央値も上がる傾向ですが、55歳以降では減少しています。
定年後の嘱託勤務などで、所得が減少するケースが多いためと思われます。
2019年で最も高い所得水準となる50~54歳の給与水準が、2001年における35~39歳の水準に及びません。
ここまで給与水準が落ち込んでいるというのは、本当に厳しいですね。
2. 中堅企業の所定内給与中央値
次に中堅企業についても見てみましょう。
図2 所定内給与 中央値 中堅企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)
図2が中堅企業のグラフです。
中小企業よりも、年齢層が上がる毎に大きく給与水準が上がっている事がわかります。
やはり20代でやや給与水準上がっているものの、それ以外の年齢階級(ただし55~59歳は微増)では給与水準が下がっていますね。
40~44歳でも最も減少が大きく、36.0万円→31.9万円と4.1万円減少しています。
割合にして11%程です。
60~64歳は中小企業と変わらない水準である事も興味深いですね。
中小企業程は落ち込みは大きくありませんが、中堅企業と言えども低所得化している状況です。
3. 大企業の所定内給与中央値
最後に大企業についても見てみましょう。
図3 所定内給与 中央値 大企業 男性
(賃金構造基本統計調査 より)
図3が大企業のグラフです。
大企業は所得が上がっていると思った方もいるかもしれませんが、大企業と言えども低所得化しているようです。
金額だけでなく、割合としても中堅企業よりも所得が減っているという特徴もありそうです。
例えば最も落ち込みの大きい40~44歳では、43.1万円→37.7万円と金額で6.4万円、割合で約15%減少しています。
60~64歳の年齢階級でも大きな減額(6.1万円、マイナス24%)です。
反対に、20代の給与水準はそれなりに上昇していますね。
大企業は企業数も男性労働者の従業員数も減っています。
4. 男性の所定内給与中央値の特徴
今回は、企業規模別にみた、男性労働者の所定内給与の中央値をご紹介しました。
中央値は平均値よりも、実態に近いと言われています。
中小企業だけでなく、中堅企業、大企業でも労働者の給与水準が下がっている事は意外と感じた人も多いのではないでしょうか。
特に働き盛りの世代が最も給与が下がっています。
そして、割合で見ると中小企業の労働者の方が大きく給与水準が落ち込んでいるわけですね。
男性の労働者数で見ると、大企業は減少していて、中小企業は増えています。
20代を除いて全ての年齢層で給与が下がっています。
20代の若手の給与水準は微増していますが、少子化の影響もあり圧倒的に就業者数が少ない層となります。
逆に現在最も給与の減っている40代が、最も就業者数の多い層ですね。
就業者数については、下記記事も是非ご参照ください。
参考記事: 働き盛りが貧困化する日本
社会保障負担等の増大で可処分所得は減っていますし、消費する際の消費税も増えていますから、実質的に使えるお金は更に減っています。
日本以外の先進国は、給与水準が上昇しています。
例えば2005年からの平均給与(名目)の変化では、ドイツで1.5倍、アメリカで1.4倍、韓国で1.8倍になっています。
(日本は1.07倍です)
全体の平均値で見れば、やや上がっていますが、世界で見ればほとんど変化がない事になります。
中身を見ると、女性労働者は賃金が上昇している反面、男性労働者の賃金が下がっている状況です。
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