142 政府の収入と支出 - 主要先進国の国際比較

政府の収入と支出について、人口1人あたりの水準と対GDP比の推移を可視化し、国際比較してみます。

1. 経済指標の国際比較について

前回は、政府収支負債についてフォーカスしてみました。
各国の通貨ベースの推移と、成長率について取り上げてきました。

経済指標を国際比較するのはとても難しいですね。
本ブログでも、時系列データは以下の4つの方法で比較しています。

① 各国ごとの自国通貨ベースの推移
 特徴: 為替変動に影響されず、実感に近い可視化ができる
 課題:そもそも通貨が異なるので、各国ごとのグラフとなり、水準の高低を比較できない

② ある時点からの成長度合い(倍率、指数)
 特徴: 為替変動に影響されず、成長の度合いという共通した尺度で比較できる
 課題:基準年の取り方で成長の具合が異なって表現される、各国の水準がわからない

ドル換算での比較
 特徴: 各国の水準をドルという共通した尺度で比較できる
 課題:為替レート換算の場合為替変動の影響を受ける、購買力平価換算の場合指数の適用範囲が限られる

対GDP比での比較
 特徴: 各国の水準を経済規模を表すGDPに対する比率という共通した尺度で比較できる
 課題:総量がわからない

さらに1人あたりにするかどうか、物価の影響を考えるかどうか(名目 or 実質)、という選択肢がありますので、比較の仕方も膨大になりますね。
様々な統計データを見た中で、私が最も国際比較に適していると考えるのは1人あたりのドル換算値(名目値、各年の為替レート換算)です。
当ブログでは、この比較方法をメインにして、対GDP比や成長率なども眺めていければと考えています。

実質値も重要な指標ですが、名目値も物価も停滞していて、物価指数の乖離も大きい日本において、実質値や実質成長率にどこまで統計的な意義があるのか、疑問もあります。

SNSでも「実質成長率」や「対GDP比」だけを見て、日本は成長しているとか衰退しているなどと判断している人が散見されますが、もっと多角的に評価した方が良いように思います。

また、経済主体も家計、企業、政府、金融機関、海外と別れ、それぞれの相互関係で経済が成立していますね。
特に「政府の負債」がフォーカスされがちですが、負債もあれば、金融資産もありますので、負債だけ見ていても一面的です。
さらに言えば、金融資産や負債などのお金だけでなく、固定資産という要素もあるはずです。

このブログでは、いずれかの見方に偏ることなく、中立的な目線で、長期的な変化を共有することを目的としていきたいと思います。

今回は、その政府収入支出について国民1人あたりのドル換算値(③)と対GDP比(④)をご紹介していきたいと思います。

IMFのWorld Economic Outlook Databaseより、政府支出(General Government Total Expenditure)と政府収入(General Government Revenue)のデータとなります。

2. 1人あたりの政府収入の推移

まずは人口1人あたりの政府収入(為替レート換算値)の推移から見てみましょう。

政府 収入 1人あたり

図1 1人あたり政府収入
(IMF World Economic Outlook Database より)

図1が人口1人あたり政府収入です。
為替レートによるドル換算値となります。

G7と、北欧代表でスウェーデン、経済成長中の中国と韓国を入れてみました。
日本は2002年あたりまでは他の主要国と同じくらいの水準でしたが、それ以降は横ばい傾向が続いています。

2000年代から主要先進国で最も低い水準が続いています。

他の主要国では更に高い水準で推移していますね。
直近の2019年の数値は以下の通りです。

政府収入 1人あたり 2019年
単位: ドル
2,5058 スウェーデン
2,2020 フランス
21,698 ドイツ
19,176アメリカ
13,842 日本

他の主要国と比べると大きな差がある事がわかりますね。

3. 対GDP比の政府収入の推移

続いて、対GDP比で見た政府収入の推移です。

政府 収入 対GDP比

図2 政府収入 対GDP比
(IMF World Economic Outlook Database より)

図2が政府収入対GDP比のグラフです。
その時々のGDPに対する比率に換算した政府収入の割合です。

アメリカや韓国は税率も低めで20~30%くらいですね。
カナダやドイツなど他の主要先進国は40~55%くらいです。
日本は30~35%程度で推移していて低めの水準である事がわかります。

高負担高福祉と言われるスウェーデンは近年では収入の割合が減ってきていて、現在はフランスよりも低い水準です。
直近では、の2019年の数値は次の通りです。

政府収入 対GDP比 2019年
単位:%
53 フランス
49 スウェーデン
47 ドイツ
41 カナダ
34 日本
29 アメリカ
23 韓国

アメリカは1人あたりGDPが大きいので、金額は大きいですが、GDPに占める割合は小さいようです。
日本は政府の収入が金額としても、割合としても小さい方である、と言う事が言えそうです。

4. 1人あたりの政府支出の推移

次に、政府支出についても見ていきましょう。
日本は収入が少なく負債が増えていますので、相対的に支出が多いかもしれませんね。

政府 支出 1人あたり

図3 1人あたり政府支出
(IMF World Economic Outlook Database より)

図3は人口1人あたり政府支出のグラフです。

政府支出もやはり2002年あたりまでは他の主要国と同程度だったようですが、それ以降はかなり数値が低いようです。

2019年の数値は以下の通りです。

政府支出 1人あたり 2019年
単位:ドル
24,851 スウェーデン
23,319 アメリカ
23,276 フランス
20,991 ドイツ
15,171 日本

日本は支出面でも他の国の水準よりも小さいことがわかりますね。
ただし、収入よりもやや大きい数値である事が確認できます。

5. 対GDP比の政府支出の推移

最後に対GDP比の政府支出の推移です。

政府 支出 対GDP比

図4 政府支出 対GDP比
(IMF World Economic Outlook Database より)

図4は政府支出対GDP比の推移です。

日本は対GDP比でも小さい方ではあるようです。
ただし、1997年と2009年に階段のように上昇している部分がありますね。
1980年代は30%程度だったのが近年では40%近くにまで増大しています。
直近の数値は下記の通りです。

政府支出 対GDP比 2019年
単位: %
56 フランス
48 スウェーデン
45 ドイツ
38 日本
36 アメリカ
23 韓国

やはり日本は支出が少ない方と言えそうですね。

6. 政府収入・支出の特徴

今回は政府収入支出についてご紹介しました。
日本は、金額的にもGDPに対する割合的にも、他の主要先進国と比べると政府の収入も支出も比較的少ない国と言えそうですね。

経済成長率の高い韓国や中国はわかりますが、日本は成熟国家としては政府の役割が小さな国と言えるのかもしれません。
ただし、収入よりも支出の方が大きい状況が続いていますので、収支マイナスが継続し、負債が増え続けている事になりそうです。
また、日本は再分配による格差や貧困の改善効果が低い国という特徴もあるようです。

皆さんはどのように考えますか?

次回は政府の収支と負債についての比較をしていきたいと思います。

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