303 専門サービス業の平均時給 - 平均的な給与水準の産業

専門サービス業の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)について、為替レート換算値と購買力平価換算値の国際比較をしてみます。

1. 専門サービス業の平均時給

前回金融保険業の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)についてご紹介しました。
国内で比較すると最も高い水準ながら、国際比較してみると最も順位の低い産業であるという特徴がわかりました。
情報通信業も同様の傾向が見られましたので、エリート産業程、報酬が低めに抑えられているという印象がありますね。

今回は、専門サービス業の労働時間あたり雇用者報酬についてご紹介します。

労働時間あたり雇用者報酬 日本

図1 労働時間あたり雇用者報酬 日本
(OECD統計データより)

図1は日本の産業別の労働時間あたり雇用者報酬の推移です。

専門サービス業(紫)は、全産業平均値と同じくらいで推移していて、近年ではやや高いくらいの水準のようです。

コンサルタントや士業など、比較的給与水準の高い職業を含む割には思ったほど高くないようですね。

近年では他の産業同様にやや上昇傾向のようです。

2. 専門サービス業とは

専門サービス業は、OECDで複数の産業を総合して扱っているものです。
データベースの中では、M-N Prof., scientific, techn.; admin., support serv.と表記されています。

ここでは、国際標準産業分類(ISIC REV4)における項目との対応をご紹介します。

なお、日本語表記は下記サイトを参照しています。
国際連合 Classification on economic statistics ISIC rev4 Jp

表1 専門サービス業の産業区分

OECD 産業区分ISIC REV4 大分類ISIC REV4 中分類
M-N 専門サービス業
Prof., scientific, techn.; admin., support serv.
M 専門、科学及び技術サービス業
Professional, scientific and technical activities
69 法律および会計サービス業
70 本社;経営コンサルタント業
71 建築・エンジニアリング業及び技術試験・分析業
72 科学研究・開発業
73 広告・市場調査業
74 その他の専門、科学および技術サービス業
75 獣医業
N 管理・支援サービス業
Administrative and support service activities
77 物品賃貸・リース業
78 職業紹介業
79 旅行代理店業、旅行業、予約サービス業及び関連活動
80 警備・調査業
81 建物・景観サービス業
82 事務管理、事務支援及びその他の事業支援サービス業

専門サービス業は、コンサルタントや法律・会計サービスなどのいわゆる士業などの専門、科学および技術サービス業と、業務支援的な管理・支援サービス業から構成されているのが特徴ですね。

この2つの分野は求められる能力や対価の水準としては大きく異なると思いますが、区分としては合計して扱っているようです。

ISIC REV4の産業分類については、下記サイトにもまとめていますのでご参照いただければ幸いです。
 参考記事: 国際標準産業分類

3. 専門サービス業の平均時給の推移

それでは、専門サービス業の労働時間あたり雇用者報酬の推移について眺めてみましょう。

労働時間あたり雇用者報酬 専門サービス業 名目 為替レート換算

図2 労働時間あたり雇用者報酬 専門サービス業 為替レート換算
(OECD統計データより)

図2が専門サービス業労働時間あたり雇用者報酬について、為替レートでドル換算した推移です。

日本(青)は1990年代に高い水準に達した後横ばい傾向です。
近年では、イタリアやイギリスと同じくらいの水準で、OECD平均値を下回ります。

専門サービス業ではイギリスがかなり低い水準なのが特徴的ですね。

労働時間あたり雇用者報酬 専門サービス業 名目 購買力平価換算

図3 労働時間あたり雇用者報酬 専門サービス業 購買力平価換算
(OECD統計データより)

図3はより生活実感に近いとされる購買力平価によるドル換算値です。

日本はイギリスと同じくらいで、OECD平均値を下回る水準が続いていますね。
他のアメリカ、ドイツ、フランスなどとの差が大きく広がっています。

4. 専門サービス業の平均時給の国際比較

最後に、専門サービス業の労働時間あたり雇用者報酬について、国際比較してみましょう。

労働時間あたり雇用者報酬 専門サービス業 名目 購買力平価換算 2021年

図4 労働時間あたり雇用者報酬 専門サービス業 購買力平価換算 2021年
(OECD統計データより)

図4は、専門サービス業労働時間あたり雇用者報酬について、2021年の比較をしたグラフです。

日本は26.2ドルで、OECD30か国中21位、G7中最下位、OECD平均値を大きく下回ります。
この産業はイギリスも比較的水準が低いのが特徴的ですね。
全産業平均値と比べると、日本の専門サービス業は同じくらいの水準ですが、イギリスはかなり下回るようです。

全体的に、全産業平均値の近辺の給与水準である国が多いようですが、アメリカは全産業平均値を上回ります。

労働時間あたり雇用者報酬 専門サービス業
購買力平価換算 2021年 単位:ドル 30か国中
1位 58.8 ルクセンブルク
2位 55.6 アメリカ
5位 47.9 ドイツ
7位 46.2 フランス
14位 33.6 イタリア
19位 29.5 イギリス
21位 26.2 日本
平均 33.9

5. 専門サービス業の平均時給の特徴

今回は専門サービス業の平均時給に相当する労働時間あたり雇用者報酬についてご紹介しました。

日本では専門サービス業の時給水準は、全産業平均値とそれほど変わりません。

他の先進国でも概ね全産業平均値の近辺の水準の国が多いようです。

産業別 労働者数 シェア 2019年

図5 産業別 労働者数シェア 2019年
(OECD統計データより)

産業別の労働者数シェアを見ると、専門サービス業(紫)は比較的労働者数が多い産業です。
さらに、公務・教育・保健と共に、労働者数の増えている分野でもありますね。

日本は11.2%程度で、ドイツやフランスなどと比べるとやや割合の小さい状況です。

自社業務をアウトソーシングするような機会が増えてきていますが、このような場合にその業務を引き受ける産業がこの専門サービス業になると思います。

例えば製造業では労働者が減少していますが、製造業への派遣労働者や業務請負業者は増えているものと思います。
このような業態で働く人は、製造業ではなく専門サービス業の労働者としてカウントされると考えられますね。

仕事は誰かの価値創出の代行業と考えた場合、業務単位で切り分けて専門化していく傾向が進んできたことが窺えます。

今後もこの分野が成長していくのか、とても興味深いところです。

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