106 日本の最低賃金は低いのか? - 購買力平価換算値の国際比較

日本の最低賃金は年々上昇していますが、先進国での水準をOECDの統計データで国際比較してみます。

1. 最低賃金の国際比較

前回は、所得の分布から、各国の所得格差について考察してみました。
日本は比較的所得格差の小さい国ではありますが、男性労働者の場合徐々に低所得者層の割合が増える形で所得格差が開いているようです。

賃金の低下に歯止めをかけるのに、最低賃金が大きな役割を果たしますね。
最低賃金が低ければ、最貧層の所得水準も下がってしまいます。
逆に、最低賃金が高ければ、底上げができるはずですね。

今回は、OECD各国の最低賃金について取り上げてみたいと思います。

最低賃金 実質 購買力平価換算 2018年

図1 最低賃金 各国比較
(OECD 統計データ より)

図1がOECDで公開されている各国の最低賃金(Real minimum wages)を、高い方から並べたグラフになります。
1時間あたりの数値で、単位はドル、購買力平価換算の実質値となります。
購買力平価で換算するという事は、物価をアメリカ並みに揃えた場合の数値比較となります。

イタリアや、スウェーデン、フィンランドなど比較的格差の小さい国々のデータが公表されていないのが残念ですが、ある程度の傾向が見えるかと思います。
アメリカは州ごとで最低賃金が別に定められていて大きく異なるようですが、今回は国として定められている最低賃金という事になります。
(アメリカの最低賃金については後述します。)

ルクセンブルク~アイルランドまでで、おおよそ10ドル以上の国々と、それ以下の国々でギャップが大きいようです。
この中での一位はルクセンブルクで12.4ドルです。

フランス(12.0ドル)やドイツ(11.5ドル)もかなり高い水準ですね。
イギリス(10.2ドル)、カナダ(10.1ドル)も10ドルを超えます。

日本は8.0ドルで一段下がったところに位置し、OECD平均の7.6ドルを若干上回る程度です。
OECD28か国中11位、イタリアを除くG7(6か国)中5位となります。
先進国の中では中間的な水準と言えますが、主要先進国の中では大きく見劣りすることになります。

韓国(7.8ドル)が後に続きます。

2. 最低賃金の推移

続いて、各国の最低賃金の推移を見てみましょう。

最低賃金 推移

図2 最低賃金 推移
(OECD 統計データ より)

図2は時系列でみた、各国の最低賃金の推移です。
データのあるものは1970年からのグラフ化をしています。

日本(青)は確かに徐々に増加していますが、近年では韓国(茶)の上昇具合が大きく直近の2019年には抜かれているようです。
さらに、日本よりも下に位置するOECDの他の国々でも、かなりな勢いで最低賃金を増加させている国が多いようです。

アメリカはむしろ昔から比べると減少して、停滞しているような状況ですね。
カナダも近年は上昇傾向ですが、停滞気味のように見えます。

フランス、イギリスは右肩上がりで上昇しているようです。

3. 最低賃金の特徴

今回はOECD各国の最低賃金についてご紹介しました。
日本は、2018年の時点では先進国の中で中間的な水準ですが、このままの推移が続くと、他国に抜かれ、最低賃金の比較的低い国になるかもしれませんね。
所得格差と貧困を考えたときに、最低賃金は大きな影響を与える要素となると思います。

例えば、日本人の平均給与422万円(2019年の数値)を、年間の総実労働時間1,781時間で割ると、2,370円/時間です。
これが日本人の平均時給と言えますね。
一方で、例えば同じ労働時間働いたとして、それぞれの時給で年収がどれくらいになるのか計算してみましょう。
(賞与はないものとします)

1,000円/時間 → 年収178万円
1,200円/時間 → 年収214万円
1,500円/時間 → 年収267万円

1,200円/時間の時給でも、1年間で平均年収の半分程度にしかなりませんね。
現在(2020年)のところ東京で1,000円/時間くらい、最低額は秋田や沖縄などで800円/時間弱との事です。

最低賃金を上げることに反対する専門家や企業経営者も多いようです。
理由は労働力を安く使えるから成立しているビジネスが多く最低賃金が上昇すると人件費が上がり、企業経営が圧迫されるからという事のようです。

本当に、そのようなビジネスばかりで良いのでしょうか??
安い労働力に頼らないと維持できない経済というのは、やはりどこかバランスを欠いているのではないでしょうか。

皆さんはどのように考えますか?

参考:アメリカの最低賃金

労働政策研究・研修機構のレポートによれば、アメリカの最低賃金は連邦政府の定める最低賃金(おそらくOECDデータの数値)の他に、各州や州内の主な市などが独自に最低賃金を設定していて、それぞれの地域で最も高い最低賃金が適用されるとの事です。

例えば2023年6~9月では、コネチカット州15.0ドル、フロリダ州12.0ドル、サンフランシスコ市18.07ドルなど、連邦政府の最低賃金を大幅に上回る金額が設定されているようです。

2019年のアメリカ全体の最低賃金の加重平均は11.80ドルとの計算結果もあるようです。

参考:最新データ

(2023年12月追記)

図3 最低賃金 実質 購買力平価換算 2022年
(OECD統計データより)

図3が2022年の比較です。

日本は8.5ドルで、2018年より上がっていますが、相対的な順位は下がっているようです。
OECD30か国中15位で、OECD平均値を下回り、韓国やスロベニア、トルコに抜かれているようです。

フランスやドイツの上昇具合も大きいですね。

平均時給

図4 平均時給 名目 購買力平価換算 2021年
(OECD統計データより)

各国の平均時給を計算してみると、図4のようになります。

アメリカ、ドイツが高く1時間40ドル前後という水準ですが、日本は22.1ドルで先進国ではかなり低い方になります。
スペイン、リトアニア、韓国を下回るようです。


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