147 純金融資産と海外投資 - 東欧・西欧の金融資産・負債差額
ポーランドなど東欧諸国や、所得水準の高いスイス、ルクセンブルクなどの国々についての経済主体ごとの純金融資産(金融資産・負債差額)をご紹介します。
1. ポーランドの純金融資産
前回は、ヨーロッパ諸国の家計、企業、政府、金融機関、海外の主体ごとの純金融資産(Financial net worth: 金融資産・負債差額)を見る事で、金融バランスシート(Financial balance sheets)を可視化してみました。
家計、企業、政府、金融機関、海外の経済主体間で、全体の金融資産と負債はバランスします。
家計が基本的に金融資産を増やす主体ですので、その代わりに負債を増やす主体が必要となります。
多くの国でそれは企業であり、政府や海外も負債を増やす主体となりえる事がわかりました。
今回は海外との関係に注目しつつ、もう少し別な国々についても眺めてみましょう。
まずは経済が大きく拡大している東欧諸国です。
ポーランドから見ていきましょう。
![純金融資産 ポーランド](https://ogawa-tech.jp/wp-content/uploads/economy/純金融資産-ポーランド-1.jpg)
図1 ポーランド 純金融資産
(OECD 統計データ より)
図1はポーランドのグラフです。
家計、企業、政府、金融機関、海外の経済主体ごとの純金融資産をグラフ化しています。
家計の純金融資産が増えているのはこれまで見てきた国々と共通しています。
特徴的なのは海外の存在感ですね。
家計に相応に近いレベルで海外の純金融資産がプラスです。
企業と政府の純金融負債は増大しています。
海外からの投資が集まりつつ、政府と企業が純金融負債を増やしながら、家計の純金融資産が増加している状況のようです。
南欧諸国と同様で、海外の純金融資産の増加が停滞していますが、企業の純金融負債が増え続けている点が異なるようです。
2. ハンガリーの純金融資産
つづいて、ハンガリーの純金融資産です。
![純金融資産 ハンガリー](https://ogawa-tech.jp/wp-content/uploads/economy/純金融資産-ハンガリー-1.jpg)
図2 ハンガリー 純金融資産
(OECD 統計データ より)
図2はハンガリーのグラフです。
ポーランドと似たような推移ですが、それぞれの変化がより際立っています。
2010年あたりから、海外の純金融資産が停滞した半面、企業の純金融負債が増えていますね。
海外からの直接投資から、企業が自力で純金融負債を増やし、事業を拡大し始めているという解釈ができるかもしれません。
先進国の中では経済発展中の典型的な経済の形と言えるかもしれませんね。
3. エストニアの純金融資産
つづいて、バルト三国のうちエストニアの経済主体ごとの純金融資産です。
![純金融資産 エストニア](https://ogawa-tech.jp/wp-content/uploads/economy/純金融資産-エストニア-1.jpg)
図5 エストニア 純金融資産(OECD 統計データ より)
図5が人口が減少する国でもあるエストニアのグラフです。
特徴的なのは、企業だけが一方的に純金融負債を増大させていて、家計も政府も海外も純金融資産がプラスな点ですね。
海外からの投資も集めながら、大きく成長していると言えそうです。
状況としてはポーランドやハンガリーなどに近いと思われますが、政府の純金融資産がプラスという北欧的な特徴もありそうです。
海外の純金融資産がリーマンショック以降やや目減りしているのも特徴的ですね。
4. スイスの純金融資産
OECDで特に所得水準の高いスイスやルクセンブルクの経済の形も見てみましょう。
この両国は1人あたりGDPや、平均所得が高い国でもありますね。
まずはスイスからです。
![純金融資産 スイス](https://ogawa-tech.jp/wp-content/uploads/economy/純金融資産-スイス-1.jpg)
図3 スイス 純金融資産 推移
(OECD 統計データ より)
図3はスイスのグラフです。
家計の純金融資産が増えつつ、企業が純金融負債を増やしています。
政府と金融機関はほぼゼロですが、禁煙はややプラスなのも特徴的ですね
。
海外はかなりの規模の純金融負債を負っていますが、横ばい傾向が続いています。
基本的には企業と家計が対称的に推移するアメリカやスウェーデンに近い状況に見受けられます。
5. ルクセンブルクの純金融資産
つづいて、ルクセンブルクの経済主体ごとの純金融資産です。
![純金融資産 ルクセンブルク](https://ogawa-tech.jp/wp-content/uploads/economy/純金融資産-ルクセンブルク-1.jpg)
図4 ルクセンブルク 純金融資産 推移
(OECD 統計データ より)
図4はルクセンブルクのグラフです。
スイスとは少し傾向は違いますが、海外の純金融資産が大きくマイナスな点が特徴的ですね。
2010年頃まで主たる純金融負債を負う存在だったようです。
やはりリーマンショックを機に状況がが変化しているようです。
純金融負債を増やす主体が、海外から企業に移っているようですね。
2010年以降海外の純金融負債が目減りしています。
海外への投資から海外からの投資が超過する状況に変化している事になります。
あるいは、海外への投資を減らして、国内への投資へ振り替えている可能性もあるかもしれませんね。
ルクセンブルクは税率の低い国として有名なようですが、政府の純金融資産が大きくプラスです。
この部分はフィンランドと似ています。
6. 先進国の純金融資産の特徴
この数回でOECD各国の金融バランスシートについて、経済主体ごとの純金融資産の推移で見てきました。
通常は企業が純金融負債を増大させて、家計が純金融資産を増やす、というのが基本形と言う事が言えそうです。
政府と海外については、その国の事情によって、プラスだったりマイナスだったりしますね。
経済的に変調のみられる国は、企業の純金融負債が停滞し、政府の純金融負債が増大しています。
更にそのような国は、海外の純金融資産がプラスになっていますね。
日本は、企業の純金融負債が停滞し、政府の純金融負債が増大していますが、海外の純金融資産はマイナスです。
経済的に不安視されているギリシャやスペイン等とは、明らかに状況が異なるようです。
日本の金融バランスの状況は、先進国の中では異質と言えるかもしれませんね。
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