092 人口の減る社会 - 世代別人口と労働者数の各国推移
先進国では少子高齢化が進んでいると言われています。主要先進国における世代別人口と労働者数の推移を可視化してみます。
目 次
1. 世代別人口と労働者数
前回は、G7各国のGDP分配面の成長率についての比較を行いました。
稼いだ付加価値を国民、企業、政府での分配がどのように変化しているかを可視化しました。
主要国が比較的足並みを揃えて右肩上がりで分配を増やしているのに対して、日本では企業、国民への分配が停滞し、政府への分配だけ増えている状況です。
今までGDPの支出、生産、分配についてそれぞれ詳細項目まで取り上げてきました。
基本的にいずれの主要先進国も右肩上がりで成長しています。
日本だけが、1991年の成長鈍化→1997年のピークから減少→停滞という状況が続いています。
経済は人口に大きく影響されるという事をよく聞きます。
確かにGDPは国民全員の稼ぎ出す付加価値を合算したものですね。
人口の増えている国は当然人口増加分だけ成長は加速されますし、人口の減っている国はその逆にGDPが減っていてもおかしくはありません。
先進国は少子高齢化が進んでいるという話をよく聞きますが、現在はどのような状況なのでしょうか。
今回から人口について取り上げてみたいと思います。
OECDでは、人口に関する統計データも公開されています。
各国の総人口だけでなく、20歳未満の若年世代人口、20~64歳の労働世代人口、65歳以上の高齢世代人口に分けて集計されています。
また、労働者数(Total employment)も集計されていますので、今回は各世代の人口と労働者数を併記して、各国の推移を見てみましょう。
2. アメリカの世代別人口と労働者数
図1 アメリカ 人口 推移
(OECD 統計データ より)
図1がアメリカの人口の推移データです。
総人口(青)、20歳未満の人口(緑)=若年世代、20~64歳の人口(水色)=労働世代、65歳以上の人口(紫)=高齢世代、労働者数(赤)で示してあります。
1970年からの長期時系列データです。
アメリカは1970年から一貫して人口が増え続けていますね。
直近の2018年では3億2700万人もの人口を抱えています。
平均すると年間で250万人ほど増加していて、この50年ほどで1.5倍ほどになっています。
内訳を見ると、20~64歳の労働世代が増加し続けていますね。
それと歩調を合わせるように労働人口が増えています。
労働世代人口は、2008年あたりから傾きが緩やかになってきています。
65歳以上の高齢世代も緩やかに増加しています。
一方で、20歳未満の若年世代がほぼ変化がない状況です。
直近では、次のようなシェアになっています。
アメリカ 人口割合 2018年
若年世代: 25.1%
労働世代: 58.9%
高齢世代: 16.0%
労働者の割合: 48.3%
3. カナダの世代別人口と労働者数
次にカナダのデータです。
図2 カナダ 人口 推移
(OECD 統計データ より)
図2がカナダのグラフです。
そもそもの人口があまり多くない影響もあるのだと思いますが、カナダも大きく人口が増えていますね。
1970年に2,000万人強だったのが、2018には約3,700万人です。
50年ほどの間に1.5倍くらいになっています。
労働世代人口、労働者数は増え続けています。
一方で、若年世代はやや減少・停滞傾向で、高齢世代が増加し続けています。
直近でのシェアは以下の通りです。
カナダ 人口 割合 2018年
若年世代: 21.8%
労働世代: 61.0%
高齢世代: 17.2%
労働者の割合: 49.4%
4. イギリスの世代別人口と労働者数
次にイギリスのデータです。
図3 イギリス 人口 推移
(OECD 統計データ より)
図3がイギリスのグラフです。
アメリカやカナダと比べると人口増加の割合が緩やかですね。
ただ、2000年頃を境に人口が増え始めているのが特徴的です。
労働世代、労働者数は緩やかに増加を続けています。
若年世代はやや減少→停滞、高齢世代は緩やかに増加しており、少子高齢化は進んでいます。
2018年は約6,600万人の人口です。
イギリス 人口 割合 2018年
若年世代: 23.5%
労働世代: 58.2%
高齢世代: 18.3%
労働者の割合: 48.8%
これら3か国はG7の中で経済成長率も高い国です。
人口は増加し続けており、労働世代も右肩上がりです。
ただし、若年世代が減少傾向で、労働世代も近年では増加率が鈍化していそうです。
5. フランスの世代別人口と労働者数
次にフランスのデータです。
フランスは移民が多いという事も良く言われますね。
図4 フランス 人口 推移
(OECD 統計データ より)
図4はフランスのグラフです。
フランスも人口は増え続けています。
1970年からの比較だと、実はイギリスよりも人口が増えています。
ただし労働世代人口が2012年をピークに減少に転じているのが特徴的です。
一方で労働人口は増え続けています。
若年世代は減少気味、高齢人口は増加し続けている状況ですね。
直近では6,700万人の人口です。
フランス 人口 割合 2018年
若年世代: 24.2%
労働世代: 56.0%
高齢世代: 19.8%
労働者者の割合: 42.8%
アメリカ、カナダと比べるとやや労働世代の割合が低く、高齢世代の割合が高いです。
また、労働者の割合も42.8%とかなり低い水準であることが分かります。
6. ドイツの世代別人口と労働者数
続いてドイツのデータです。
ドイツも近年移民が増えていると言われます。
図5 ドイツ 人口 推移
(OECD 統計データ より)
図5がドイツのグラフです。
これまでの国々と異なり、ドイツは総人口が停滞しています。
総人口のピークが2002年頃にあり、その後減少し直近では増加傾向です。
労働世代は1995年頃をピークに減少傾向です。
ただし、労働者数は増加を続けているのが特徴的ですね。
現役世代の男性だけでなく、女性や高齢者なども含めて労働参加率が向上している事を窺わせます。
若年世代が減少し、高齢世代が増加していますが、2007年頃に逆転している点も特徴的です。
少子高齢化が大きく進んでいる国の一つと言えそうですね。
直近の人口は約8,300万人で、G7の中では多い方です。
ドイツ 人口 割合 2018年
若年世代: 18.4%
労働世代: 60.1%
高齢世代: 21.5%
労働者の割合: 53.9%
人口は停滞していますが、労働世代や労働者の割合はアメリカやイギリスよりも多いようです。
7. イタリアの世代別人口と労働者数
図6 イタリア 人口 推移
(OECD 統計データ より)
図6はイタリアのグラフです。
イタリアも総人口は停滞気味ですが、増加傾向は続いていたようです。
ただし、2014年あたりから減少に転じています。
他の国と異なり、労働世代の人口に比べて、労働者数が極端に少ないのが特徴ですね。
働いている人が人口の割に少ない(就業率が低い)という事だと思います。
労働世代は停滞が続き、直近ではやや減少しています。
若年世代が1980年頃~2000年頃にかけて急激に減少し、その後停滞しています。
高齢世代は右肩上がりで増加し続け、2003年に若年世代と逆転しています。
直近の人口は、約6,000万人です。
イタリア 人口 割合 2018年
若年世代: 18.1%
労働世代: 59.2%
高齢世代: 22.7%
労働者の割合: 41.1%
高齢世代が22.7%とドイツよりも多く、少子高齢化が更に進んだ国と言えそうです。
労働世代は59.2%と決して少なくはないのですが、労働者の割合は41.1%とかなり低い水準ですね。
ドイツと10ポイント以上も差がありますし、フランスよりも低い割合となっています。
8. 日本の世代別人口と労働者数
最後に日本の状況を見てみましょう。
図7 日本 人口 推移
(OECD 統計データ より)
図7が日本の人口の推移です。
総人口は綺麗な弓なりのカーブです。
2008年の1億2808万人をピークに減少し、直近では1億2644万人です。
2028年までのデータでは、年間に10~20万人ずつ減っている状況です。
労働世代はもう少し早い1998年頃に7,911万人でピークとなり、その後減り続けています。
2018年では6,954万人です。
ピークから約1,000万人労働世代が減っていることになります。
一方で労働者数は増加はしていませんが、一定水準で停滞しています。
2018年では6,685万人です。
若年世代は1986年から急速に減り続けて、高齢世代は右肩上がりに増加が続いています。
2004年に逆転している状況ですね。
直近でのシェアは下記の通りです。
日本 人口 割合 2018年
若年世代: 16.9%
労働世代: 55.0%
高齢世代: 28.1%
労働者の割合: 52.7%
労働世代の人数はフランスで56%なので、日本は極端に低いわけではなさそうです。
ただし、フランスは若年世代が24.2%、高齢世代が19.8%なのに対して、日本は若年世代が16.9%、高齢世代が28.1%と対照的です。
高齢世代が28.1%というのはG7の中でも極端に高い数値ですね。
労働世代が55.0%なのに対して、労働者の割合が52.7%と非常に近い割合ですね。
イタリアは労働世代が59.2%に対して、労働者の割合が41.1%です。
イタリアは失業率が高いわけですから、仕事さえあれば失業中の労働世代で労働者を増やす事ができます。
日本は、もともと失業率が低い国ですね。
労働世代が減少するのに合わせて、女性や高齢者が増えているのかもしれません。
今まで見てきたように、女性や高齢者は平均給与が労働世代の男性と比べると著しく低いので、全体として給与水準が下がっている面もありますね。
ただし、労働世代の男性も給与水準が下がっている事実もあります。
給与が下がれば、当然消費も抑制されGDPも停滞するというのは納得のいく流れです。
8. 主要先進国の世代別人口と労働者数の特徴
今回は主要国の人口にフォーカスしてみました。
比較的成長率の高いのアメリカ、カナダ、イギリスは総人口が増加しており、労働世代・労働者数も増加しています。
比較的成長率の低いのフランス、ドイツ、イタリアは、フランスでは総人口が増えていますが、ドイツ、イタリアは減っています。
いずれも労働世代が減少し始めています。
経済停滞中の日本は、総人口が減少しており、それ以上に労働世代の減少が大きいです。
少子高齢化も極端に進んでいる状況ですね。
このように見ると、各国の経済状況は人口の増減と大きく関係があるのは確かなようですが、総人口よりもむしろ、労働世代の人口や労働者数と関係が強そうですね。
総人口は消費需要(内需の仕事)の大きさとも考えられますし、労働者数は供給力の大きさとも考えられます。
日本の場合は、総人口(需要)が減っているのに、労働者数(供給)を減らしていない(むしろやや増えている)ので、1人あたりの取り分が減っているという見方もできそうですね。
皆さんはどのように考えますか?
参考: 最新データ
(2023年12月追記)
図8 人口 日本
(OECD統計データより)
図8は最新の2022年までのデータを加えた日本の世代別人口の推移です。
20~64歳の現役世代、20歳未満の若年世代の減少傾向が継続しています。
65歳以上の高齢世代も増加傾向は続いていますが、その増え方は鈍化しているようです。
2022年の全体に占める労働世代人口の割合は55.0%で、2018年とほぼ変化がありません。
労働者数は2018年まで増加した後停滞気味ですが、既に現役世代人口とほぼ同じ人数となっています。
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