132 家への支出が減った日本 - 住宅投資の国際比較
日本では住宅投資が減少していますが、人口1人あたりや対GDPの水準で国際比較する事で日本の傾向を確認してみます。
1. 1人あたりの住宅投資の国際比較
前回は、住宅への支出についてご紹介しました。
新設住宅の戸数同様に、支出についてもピークから半減近くまで減っていて、金額的にも住宅にお金を使わなくなっている事がわかりました。
1戸あたりの住宅費用についても推定してみましたが、この30年近く狭小化が進みつつも、平均費用ほとんど変わらないという状況もわかりました。
このような住宅への支出が減っているのは世界的な傾向なのでしょうか?
前回は、GDP 総固定資本形成のうち住宅の増加度合いを見てみましたが、日本だけ減少していて、他の主要国は増加している事がわかりました。
今回は、もう少し別の尺度で、日本の住宅についての支出について考えてみたいと思います。
図1 総固定資本形成 住宅 1人あたり 2018年
(OECD統計データ より)
図1は総固定資本形成のうち、住宅について人口1人あたりの支出金額をグラフ化して見ました。
比較のためにドル換算してあります。
総固定資本形成は、個人(家計)や政府、企業が新たに購入した固定資産という意味ですね。
そのうち住宅と言う事になります。
日本の統計では、住宅は公的需要と民間需要に分かれますが、OECDの場合は合計した数値になります。
住宅の場合は、ほとんどが民間(家計)による支出ですね。
公的需要だと公務員の社宅、民間需要のうち企業だと従業員の社宅などが考えられると思います。
日本は、1人あたり1,223ドルと、OECD35か国中23番目の水準のようです。
先進国の中でも、日本は住宅の購入はかなり少ないという事になりそうですね。
2. 1人あたりの住宅投資の推移
図2 総固定資本形成 住宅(1人あたり) 推移
(OECD 統計データより)
図2は主要国についての推移を表したグラフです。
1995年頃、日本はドイツと並んで主要国でもトップ水準の支出をしていたようです。
その後ドイツは一度落ち込んだ後に再度増加していくのに対し、日本はそのまま低下傾向が続きます。
近年では主要国最下位にまで落ち込んでいます。
3. 対GDP比の住宅投資の国際比較
図1、図2はあくまでも金額ベースの比較になります。
GDPの支出全体に占める、住宅の支出の割合についても確認してみましょう。
図2 総固定資本形成 住宅 対GDP比 2017年
(OECD 統計データ より)
図2がGDPに占める、総固定資本形成 住宅の割合です。
カナダが7.9%と大きな割合を占め、フランス6.3%、韓国6.2%、ドイツ6.0%と続きます。
日本は3.3%で35か国中26番目の水準です。
明らかに日本は、住宅への支出が少ないという事が言えそうですね。
4. 対GDP比の住宅投資の推移
対GDP比の受託投資について時系列推移も見てみましょう。
図4 総固定資本形成 住宅 対GDP比 推移
(OECD 統計データ より)
図4が主要国の推移グラフです。
日本は1990年以前は他の主要国と同程度の5~7%くらいの高い水準の住宅支出があったようです。
1990年頃から減少傾向になり、2018年では3.3%で主要国最低水準となります。
他の主要国は多少のアップダウンはありますが、概ね横ばいに近い推移と言えそうです。
日本だけが明らかに一方的な減少傾向ですね。
対GDP比ですので、支出のうち住宅にかけるお金の割合が減少している事を意味します。
5. 住宅投資の特徴
この3回ほどで、住宅投資についてご紹介してきました。
他国では住宅投資が増える中、日本ばかりが減少しているようです。
もちろん、少子高齢化の影響もあると思いますが、同じく少子高齢化の進むドイツやフランスは増加していて、日本だけが減少しています。
日本経済が停滞してきた一つの要因として、住宅への需要の減退も考えられそうですね。
価値観や世帯構成の変化はもちろんあると思いますが、労働者の所得が減ったり、非正規雇用が増えるなどして将来への不安から、住宅購入に積極的でない人が増えたことも大きな原因ではないかと思います。
もちろん、バブル期に住宅投資も活発化し、その反動という側面もあるかもしれません。
一方で、2人以上の勤労者世帯では、特に若い世代を中心に持家率が向上しているというデータもあります。
経済的理由で結婚をあきらめている人が多いと言われている中、経済的ハードルを越えて結婚した人はより住宅購入に前向きという事なのかもしれません。
逆に経済的理由で結婚を諦め、結果的に家にお金を使えなくなった人も増えていると推測されます。
上記のように様々な要因が複合して、住宅投資の減少に結び付いているのかもしれませんね。
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