342 日本の個人事業主は多いのか? - 対労働者数比の国際比較
日本では労働者に占める個人事業主の割合が低下しています。海外と比べて見てどのような立ち位置なのか、国際比較してみます。
1. 個人事業主割合の推移
前回は、主要先進国の労働者数、雇用者数、個人事業主数と、個人事業主の割合の推移をご紹介しました。
日本は急激に個人事業主の割合が低下していて、近年では11%程度です。
今回は、日本の個人事業主の割合が多いのか、国際比較をしてみたいと思います。
まずは、主要先進国での推移を見てみましょう。
図1 個人事業主 割合
(OECD統計データより)
図1は主要先進国の個人事業主の割合です。
この数値は、労働者数(Total employment)に対する個人事業主(Self-employed)の割合を計算したものになります。
個人事業主には無給の家族従業者が含まれます。
個人事業主数に、企業に雇用される雇用者数を加えたのが労働者数(国民経済計算では就業者数)となります。
各国とも基本は低下傾向ですが、イギリスは1980年代と比較すると上昇していますし、フランスも2000年代からやや上昇傾向です。
国によってやや傾向が異なる面もありそうです。
日本は1980年の時点でかなり高い水準でしたが、低下傾向が続き2022年ではフランスと同程度です。
近年ではOECDの平均値を下回っています。
アメリカは以前からかなり低い水準が続いてきた事も特徴的ですね。
イタリア、韓国も低下傾向ですが、現在のところ相対的にかなり高い水準となっています。
2. 個人事業主割合の国際比較:1997年
続いて、日本経済がピークとなっていた1997年における個人事業主の割合を国際比較してみましょう。
図2 個人事業主割合 1997年
(OECD統計データより)
図2が1997年のOECD各国の個人事業主の割合です。
日本は19.3%で当時は比較的個人事業主の多い国だったことになります。
個人事業主割合 1997年
OECD33か国中 単位:%
1位 39.9 ギリシャ
4位 27.6 イタリア
9位 19.3 日本
19位 13.4 イギリス
22位 11.8 カナダ
24位 10.3 ドイツ
25位 9.9 フランス
30位 8.0 アメリカ
OECD平均 15.7
アメリカは当時からかなり低い割合でしたが、ドイツやフランスも低い水準だったことになります。
ギリシャ、ポーランド、リトアニア、ポルトガルなど、東欧、南欧諸国で高い水準の国が多いのも特徴的です。
3. 個人事業主割合の国際比較: 2022年
続いて、最新のデータを確認した見ましょう。
図3 個人事業主割合 2022年
(OECD統計データより)
図3は2022年の国際比較です。
日本は11.1%で、36か国中23番目と先進国の中では比較的低い水準にまで低下している事になります。
イタリアやギリシャは依然として高い水準となります。
ポーランドやリトアニアはだいぶ割合が低下しているようです。
個人事業主割合 2022年
OECD36か国中 単位:%
1位 47.1 コロンビア
6位 23.5 韓国
7位 22.3 イタリア
18位 13.2 イギリス
23位 11.1 日本
24位 10.9 フランス
28位 8.6 ドイツ
30位 7.5 カナダ
31位 6.2 アメリカ
OECD平均 14.9
アメリカを下回るのはルクセンブルクとデンマークなど北欧諸国ですね。
北欧でもフィンランドはやや割合が高い方になるようです。
4. 個人事業主数の特徴
今回は、先進国での個人事業主の割合について国際比較してみました。
日本は比較的高い水準だったのが、短期間でかなり縮小して近年では先進国でも個人事業主が比較的少ない国になるようです。
主要先進国ではイタリアの水準が非常に高く、イギリスも日本より個人事業主の割合が高い事が印象的です。
日本で減少傾向が続き、フランスは近年上昇傾向なので、今後は日本とフランスの立ち位置も逆転するかもしれませんね。
個人事業主の稼ぎはGDPとなりますが、その分配となる所得は雇用者報酬ではなく混合所得となります。
経済統計上も、雇用者と分けて扱われる存在ですので、その割合の大小も統計結果に影響を与えますね。
特に労働分配率を計算する際には、雇用者報酬を単にGDPで割って計算してしまうと、分母のGDPに個人事業主の稼いだ付加価値を含めて評価してしまう事になります。
GDPから家計の営業余剰・混合所得を除いた、雇用者による付加価値を計算して用いるなどの工夫が必要と思われます。
大変興味深い統計データと思いますので、また情報が更新されたら最新データとして共有していきます。
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