010 お金以外の豊かさとは!? 寿命・満足度編

経済水準だけではない、お金以外の豊かさのうち、寿命や生活満足度について可視化してみます。

1. Well-beingとは

前回は、労働生産性平均給与のバブルチャート、労働参加率失業率の分布グラフを見る事で、みんなが働ける国と働ける人が稼げる国がある事がわかりました。
日本は「それほど多くは稼げないけど、みんなに仕事のある国」と言えそうです。
失業する心配が相対的に少ない、という事は安心して生活できる大きな材料になりますね。

さて、給与以外に国民が豊かさ幸福感を感じられる要素はあるでしょうか。
安心して暮らせる、安全に過ごせる、長生きできる、環境条件が良いなど、人によって感じ方は様々ではないでしょうか。
人が豊かさや幸福感を感じられる指標「Well-being」についても、OECDの統計データで示されています。

ここからは、このような統計データを、バブルチャートで示していく事で、収入以外の豊かさについて考えていきたいと思います。
バブルチャートは、FACFULNESS(ハンス・ロスリング著、日経BP社)にて、詳しく取り上げられていますので、ご興味のある方は是非ご購読ください。
ここでは、FACTFULNESSの表記方法に沿って、各指標に関するバブルチャートを示していきます。

この表記方法は、横軸に平均給与(または一人あたりGDP)、縦軸に各指標、バブルの大きさは各国の人口を表します。
FACTFULNESSでは、縦軸に平均寿命を用いたチャートを詳しく解説しています。
しかも、世界のデータを全て入れています。
これから本ブログで示すデータは、OECD加盟国に限定したデータです。

なぜOECD加盟国に限定したかというと、以下の理由からです。
・ すべての国を盛り込むと、データの範囲が広がりすぎて、着目したい先進国のデータがぼやけてしまうため
・ OECD加盟国のデータは、多様な統計データが公表されており、色々な視点からの国際比較が可能であるため

FACTFULNESSでは、世界の平均給与(または一人あたりGDP)をレベル1~レベル4の4つに分けています、同書によれば、このレベルの違いは、全ての暮らしの水準の違いになります。

このブログでは、同じようなレベルの中での問題の抽出を考えたいので、日本の属するレベル4の国々との比較をしていきたいと思います。
OECD加盟国のほぼすべてがレベル4に入りますので、OECD加盟国の水準がまさに本ブログで取り上げる内容と合致するのです。

また、本ブログでは横軸の平均給与と、各指標との相関についても注目していきたいと思います。

2. 平均寿命の国際比較

平均給与 平均寿命 2017年

図1 平均給与-平均寿命
(OECD統計データ より)

まずは、FACTFULNESSにも取り上げられている、平均寿命(Life expectancy)を図1に示しました。
(横軸に平均給与を取るか、一人当たりGDPを取るかで若干傾向は異なります)

全世界の国々で見ると完全に正の相関があるのですが、OECDだけ取り出すと少し様相が異なるようです。

アメリカだけ特異値として外せば、きれいな正の相関があるように見えますし、パッと見た感じだと日本を頂点として収入が上がる程平均寿命が減っていく「への字型」のグラフにも見えます。
正の相関とは、どちらかの指標が増えればもう一方の指標も増えるという関係ですね。

いずれにしろ、平均寿命という観点では、日本がOECDで最も高い位置にあるのは確かです。

また、平均寿命が高いという事は、乳幼児死亡率が低いという事も意味しますので、医療体制が充実しているという要素も含まれます。
高福祉国と言われる北欧諸国と、北欧諸国よりも所得水準の低いスペインやイタリアが同程度かそれ以上に平均寿命が高い事も興味深いところですね。
アメリカや、ドイツ、イギリスは平均給与の割りに平均寿命が比較的低い水準となります。

3. 生活満足度の国際比較

平均給与 生活満足度 2017年

図2 平均給与-生活満足度
(OECD統計データ より)

次に、図2に生活満足度(Life satisfaction)に関するバブルチャートを示します。

この指標は、キャントリルの梯子(Cantril Ladder)の質問に対して、「最悪の0から最高の10の間のいずれかの値をとるか」を主観的な数値で評価し、集計した数値となります。
数値が大きい方が満足度が高く、小さい方が満足度が低いと判断されます。

実際のグラフを見ると、平均給与と生活満足度には緩い正の相関があるように見えます。
アメリカとメキシコが特異値を取っているように見えます。

アメリカは平均給与が高い割には、満足度が若干低く、メキシコは平均給与が低い割には満足度の高い傾向です。
いずれにしても、平均給与が高い方が満足度を高く感じやすい傾向にある事が確認できます。

ただし、象徴的なのは日本の位置です。
満足度という観点では、日本やイタリアは非常に低い水準となり、所得水準では大分下のポーランドやラトビアなどと同程度となります。

4. 平均寿命と生活満足度の特徴

日本は所得水準の割には、平均寿命が長く、生活満足度が低いという特徴があるようです。
平均寿命と生活満足度という異なる指標では、日本は正反対の傾向があるのは大変興味深いです。

世界有数の長寿国であるにもかかわらず、生活に十分満足していないという事は何だか寂しくも思います。

平均寿命はそれだけ医療体制や食事の質などの生活環境が充実している事を物語っていると思います。
一方で、生活満足度は過去の状況からの変化や、将来への展望などを感じ取っての定性的な指標となります。

一時期高水準にまで高まった経済水準と、そこからの長引く経済停滞が、長寿命と生活満足度にそれぞれ影響しているようにも見受けられます。

経済的な停滞状況から脱しつつあることから、今後の指標の変化にも是非注目していきたいですね。

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・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
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