057 国の税収は増えている? - 国税徴収の意外な推移

1. 意外な国税の推移

前回は、OECD各国と日本の家計消費を比較することで、日本では消費が停滞しGDPの成長も低水準であることが分かりました。
2019年10月から消費税が8%から10%に増税されました。
給与が増えない中消費税率が上がる事で、この先も家計消費の停滞が続くのではないかと危惧されているようです。

日本では、何故このように消費税の増税が行われるのでしょうか。
今回はまず日本の税収(国税)を見ることで、消費税の位置付けなどを確認してみたいと思います。

日本 国税徴収

図1 国税徴収の推移
(国税庁 国税徴収状況 より)

図1に国税徴収の推移を示します。

国税庁の国税徴収状況というデータになります。
国税徴収で割合が大きいものは、法人税(青)、所得税(赤)、消費税(緑)です。
図では収納済額としています。

相続税、酒税、たばこ税、自動車重量税などはその他(グレー)に含まれます。
法人税は、法人税、地方法人税、復興特別法人税の合算値です。
所得税は、源泉所得税、源泉所得税及復興特別所得税、申告所得税の合算値です。
消費税は、消費税、消費税及地方消費税の合算値です。

特徴的なのは、1990年頃までは税収は右肩上がりで伸びていたのですが、
1990年頃(1990年バブル崩壊、1989年消費税導入)を契機に税収が停滞します。

所得税、法人税のみを合わせた税収では1990年がピーク(約45兆円)となっており、現在に至ってもこのピークを越えていません。
その代わりに消費税(グラフ緑色)が徐々に増えていき、全体として横ばい傾向を保っているような状況です。

直近の2018年では、国税徴収全体で約67兆円、法人税約14兆円(全体の21.4%)、所得税約19兆円(28.7%)、消費税約22兆円(33.4%)です。
まだ2019年の増税前の数値ですが、消費税収が最も多いわけですね。

2. 減少する法人税・所得税、階段状に増加する消費税

日本 国税徴収 詳細

図2 各税収の推移
(国税庁 国税徴収状況より)

図2は所得税法人税消費税だけ抜き出して推移を比べたグラフです。

所得税率は1974年に最大75%(所得8,000万円以上)だったようですが、1989年に50%(所得2,000万円以上)、それ以降は概ね40%前後となっています。
所得税のピークは1989年の約28兆円ですが、その後所得税率も下がった事もあり、減少、停滞しています。
ピークまでは最大税率を下げながらも税収は上昇していたわけですが、ピークを過ぎても税率を下げてそのまま停滞している状況ですね。

法人税率は徐々に引き下げられており、1952年に42%だったのが、1990年に37.5%、1999年に30%、2015年に23.9%となり地方法人税が新設といった状況になります。
(2003年に地方税のうちの事業税にて外形標準課税という仕組みが導入されているとの事です。)
こちらもピークまでは税率を下げながらも税収は上昇しているわけですが、ピークを過ぎても税率を下げてそのまま停滞しています。

消費税は1989年に導入(3%)、1997年に増税(3→5%)、2014年に増税(5→8%)、2019年に増税(8→10%)ですね。
税率が上がるたびに階段状に金額が増えているのが特徴的です。
直近では法人税、所得税を抜いて国税として最大の税収源となっています。

所得税、法人税が下がり停滞する代わりに、消費税が増えて全体でみると停滞状態を保っているという状況ですね。
2014年以降は税収も増えているようですが、2019年の消費増税でどうなるのか、以降の推移に注目したいところです。

3. 何故消費税が必要なのか?

グラフを見る限りでは、経済活動が停滞したり、税率が下がることで所得税や法人税が目減りする中、税収の合計額を一定水準以上に保とうという方向性が窺えます。

消費税は税の公平性という観点や、直間比率の是正という名目で導入されていると言われます。
働いていないけどお金を持っている高齢者から税収を得られる手段とも言われていますね。

また、「他の先進国に比べればまだまだ税率は低い」という意見があったり、「他国は生活必需品には消費税がかからないのに、日本は全てに一律で消費税をかけるのは低所得者がますます困窮するから廃止すべき」などの意見もあります。

はたして消費税とは、私たちにとってどのような存在なのでしょうか?

皆さんはどのように考えますか?

今回はあくまでも国税に関する統計データを取り上げましたが、次回は地方税や社会保障負担も合わせた国民負担率についても取り上げてみたいと思います。

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