094 人口の増える国、減る国
1. 移民により人口の増える国
前回は、G7各国の移民数について可視化してみました。
日本は移民の流入は多いのですが、そのほとんどが技能実習生で、母国に帰る人も多いため、残留する移民の人数はそれほど多くないという事がわかりました。
今回は、G7各国の人口の増減数について着目するとともに、移民や労働人口との関係を整理してみたいと思います。

図1 アメリカ 人口 増減数
(OECD 統計データ より)
図1が1997年を起点としたときの、アメリカの人口の増減数を表します。
総人口(青)、20歳未満の若年世代(緑)、20~64歳の労働世代(水色)、65歳以上の高齢世代(紫)、労働人口(赤)と、移民数(オレンジ)、移民数2(茶)を表現しています。
移民数についてはOECDでは2つの定義が使われているので、今回はその両方を表記しています。
移民数1:Foreign population by nationality
「外国籍の住民」と「2世、3世の移民」の人数
移民数2:Foreign-born population by country of birth
「移民第一世代」の人数(外国籍、帰化の双方を含む)
移民数2には外国籍の住民も含みます。
つまり、一部移民数1と重複しますので単純に合計するわけにはいかなそうです。
アメリカの場合は、20年間で5,500万人もの人口が増えています。
その多くは労働世代ですね。
高齢世代も増加していますが、若年世代の増加が少ないです。
移民数2が約1,800万人も増えていますし、労働人口も約2,600万人と非常に大きな増加になっています。
労働者の増加は、ある程度移民によっても補われていると見れそうです。
総人口はこの20年程で1.2倍程度に増えています。
アメリカの高成長は人口増加による影響も大きいようです。

図2 カナダ 人口 増減数
(OECD 統計データ より)
図2がカナダのグラフです。
アメリカ同様、カナダも順調に総人口が増えていますね。
労働世代や高齢世代も右肩上がりですが、若年人口がほぼ横ばいです。
移民数2(起点は2002年)は200万人ほど増えていて、増加の割合は労働人口や労働世代の人数に近い状況です。
この20年程度で、総人口は1.24倍に増えています。

図3 イギリス 人口 増減数
(OECD 統計データ より)
図3がイギリスのグラフです。
やはり総人口は右肩上がりで増加していますね。
労働世代、労働人口も増加しています。
若年世代は緩やかに増えていますが、高齢世代の伸び方が大きいですね。
移民数はかなりの増加数です。
労働世代とほぼ同じくらいの水準で移民数が増加しているのがわかります。
移民数2(起点は2006年)が移民数の増加と同じような傾きになっていますので、2世、3世の移民よりも第1世代移民の増加が大きい事がわかります。
イギリスの総人口はこの20年程で、1.14倍に増加しています。
アメリカ、イギリス、カナダの3か国は、G7の中でも経済成長率が高い国々です。
人口の増加も右肩上がりであることが分かりますので、GDPと人口が密接に関係していることが分かりますね。
また、これら3か国は移民の増加も大きい事が分かります。
若年層があまり増えていない事からも、労働世代の増加の多くを移民で補っている事が窺えますね。
2. 移民により人口を補う国

図4 フランス 人口 増減数
(OECD 統計データ より)
図4がフランスのグラフです。
フランスは典型的なグラフと言えそうですね。
総人口は右肩上がりに増えているのですが、労働世代が2011年をピークに減少に転じています。
ただし労働人口はその後も増加を続けているのが特徴的です。
労働人口と移民2の増加がほぼ同じような推移になっているのが興味深いですね。
労働力を移民によって補っている典型的な例ではないでしょうか。
またフランスは、高齢世代の増加が大きいのも特徴的です。
労働力として高齢者の活用も進んでいそうですね。
総人口はこの20年程で1.12倍に増えています。

図5 ドイツ 人口 増減数
(OECD 統計データ より)
図5がドイツのグラフです。
総人口が一度減り、2011年頃から上昇に転じています。
2012年あたりから移民数が増加しているので、総人口が増えたのは、明らかに移民の増加によるものと言えそうです。
高齢世代は右肩上がりに増加しており、労働世代、若年世代が大きく減少しています。
それにもかかわらず、労働人口が右肩上がりに増加しているのが特徴的です。
日本同様に、高齢者や女性の活用が増えているのかもしれませんね。

図6 イタリア 人口 増減数
(OECD 統計データ より)
図6がイタリアのグラフです。
ドイツと異なり、総人口は増えていますが、2014年から減少に転じています。
若年世代は減少して、労働世代が横ばいです。
移民数の増加が大きいのが特徴ですが、2008年から労働人口が減少して停滞しています。
2014年に移民の増加数が鈍化した途端に、総人口と労働世代が減少に転じている状況が確認できますね。
何とか移民で人口減少に歯止めをかけようとしている状況が見て取れると思います。
3. 人口が減る国 日本
そして日本のグラフです。

図7 日本 人口 増減数
(OECD 統計データ より)
図7が日本のグラフです。
他の主要国と様相が全く異なることがわかると思います。
まず高齢世代の増加が著しい事がわかると思います。
そして、若年世代と労働世代の減少が大きいですね。
特に労働世代は2011年から急激に減少に転じています。
総人口も2008年をピークにして減少に転じています。
この20年程の間に、高齢世代が約1,600万人増え、若年世代が約600万人、労働世代が約1,000万人減っています。
差し引きでほぼゼロではありますが、内訳が大きく変化しているわけですね。
労働人口は2003年頃にかけて減少してからやや持ち直して停滞している状況ですね。
明らかに、高齢者や女性の活用を増やして、労働人口を補っている状況がわかります。
移民数はほぼ横ばいながら増加傾向で、約100万人の増加です。
いかがでしょうか、主要国各国共通するところと、異なるところがあるのではないでしょうか。
共通するのは、高齢世代が増加している事と、若年世代が減少または停滞している事ですね。
程度の差はあれ、少子高齢化が進んでいるのは先進国各国の共通するところのようです。
移民を増やしつつも、さらに大きく人口の増えているのがアメリカやカナダ、イギリスですね。
経済成長率もこの3か国は大きいです。
移民で人口を増やしているフランス、移民により何とか人口を維持しているイタリアやドイツといった感じでしょうか。
日本は少子高齢化が進み、減るに任せている状況ではありますね。
各国の合計特殊出生率を見ると下記のようです。
内閣府 少子化社会対策白書より
フランス 1.92
アメリカ 1.84
イギリス 1.80
ドイツ 1.50
日本 1.45
イタリア 1.35
(2015年のデータ)
移民の出生率が高いため、移民を入れる事で出生率が改善されるというのはよく指摘されることだと思います。
フランスがこの中で1.92と大きな数字ですね。
日本は出生率ではイタリアよりも大きい事も印象的です。
人口の減る日本ですが、このまま減少していくのが良いのか、他の先進国同様移民を増やして人口減少に歯止めをかけるのか、考え方の分かれるところではないでしょうか。
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