292 平均給与の国際比較 - 為替レート換算と購買力平価換算

1. 平均給与の推移

前回は各国の平均給与(Average annual wages)について名目実質の違いを確認してみました。
名目でも実質でも停滞しているのは、日本特有の傾向のようです。

今回は、OECDで公表されている平均給与の水準について、国際比較してみたいと思います。
OECDで公開されている平均給与は、自国通貨ベースの名目値・実質値と、2022年購買力平価換算による実質値です。
パートタイム労働者がフルタイム働いたと見なした調整が行われた平均給与となります。

今回はまず実質の水準から確認してみましょう。

平均給与 実質 購買力平価換算(2022年)

図1 平均給与 実質 購買力平価換算(2022年)
(OECD統計データ より)

図1が平均給与実質 購買力平価換算のグラフです。
このグラフは何を意味しているかというと、各国の自国通貨ベースの実質値(2022年基準)を、2022年の購買力平価でドル換算したグラフという事になります。
基準年である2022年で、実質値=名目値となりますね。

各年の購買力平価ではなく、どの年も2022年の購買力平価で統一してドル換算している事になります。
OECDで公表している実質の平均給与はこの指標のみとなります。
日本やイタリアはずっと横ばいが続いていて、近年韓国に抜かれているという事はわかります。

長期的な数値比較についてはあまり意味はないと思います。
実質は成長率で比較すべきと思いますが、成長率は基準となる年の水準が異なりますので、比較の際には注意が必要ですね。

水準を比較するのならばやはり名目でのドル換算値が現実的だと思います。

2. 平均給与の為替レート換算

続いて、各国通貨ベースの名目値を為替レート換算した水準を見てみましょう。

平均給与 名目 為替レート換算

図2 平均給与 名目 為替レート換算
(OECD統計データ より)

図2が為替レート換算した平均給与の推移です。
各年で国際的な平均給与の水準を比較できます。
ただし、為替レートは変動しますので、その変動を受けてアップダウンします。

日本は1990年代にはアメリカを抜いて高い水準に達しますが、その後横ばいが続くうちにアメリカをはじめ他の主要先進国に抜かれています。

2021年→2022年では各国とも自国通貨安となったため、数値が下がっていますが、特に日本の下がり方が大きいですね。
韓国を下回り、イタリアとほぼ同水準となっています。

図3 平均給与 名目 為替レート換算 2022年
(OECD統計データ より)

図3が平均給与 名目 為替レート換算の2022年の国際比較です。

日本は34,393ドルで、平均値45,000ドルを大きく下回ります。
35か国中21位、G7中6位、韓国を下回るような状況ですね。

日本はパートタイム労働者が多いから平均給与が低いといった話も聞きますが、この指標は以前確認した通り、パートタイム労働者もフルタイム労働者と同じくらい働いたと見なした水準を比較したものになります。

残念ながら日本の平均給与は先進国の中でも低い方という事になります。

3. 平均給与の購買力平価換算

続いて、名目値の購買力平価換算についても比較してみましょう。

平均給与 名目 購買力平価換算

図4 平均給与 名目 購買力平価換算
(OECD統計データ より)

図4が平均給与名目 購買力平価換算の推移です。

購買力平価で換算するという事は、アメリカ並みの物価水準に置き換えたと見做した数値という解釈になりますね。
より生活実感を反映した数値と言われていますが、新興国ほど高めに評価される指標となります。
購買力平価は空間的デフレータとも呼ばれていて、各国間の物価を揃えての数量的な規模を比較するための指標となります。

日本は1990年代の物価水準の高かった時期がかなり小さな数値となり目立ちません。

2000年頃から主要先進国でも低めの数値となり、その後の成長率も緩やかで近年では韓国やイタリアを下回っています。
OECD平均値も下回っていますが、その差もかなり開いているようです。

図5 平均給与 名目 購買力平価換算 2022年
(OECD統計データ より)

図5が平均給与 名目 購買力平価換算の2022年の比較です。

新興国ほど高めに評価されることもあり、日本よりもスロベニアやリトアニアなどの国々の方が水準が高くなっていますね。
相対的に労働者の賃金水準が日本よりも高いことになります。

日本は47,499ドルで、OECD平均値56,230ドルを大きく下回り、G7中最下位となります。
OECD35か国中で25位の水準です。

3. 平均給与の国際比較

今回は平均給与について国際比較をしてみました。
日本の平均給与は停滞が続いていますが、その間に他の先進国に追い抜かれていて、2022年の時点では既に下位グループにまで立ち位置が変化しています。

この比較はフルタイム労働者の平均給与を比較したものとなりますので、パートタイム労働者の多い日本としてはやや嵩上げされた水準とも言えます。

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