305 労働生産性って何? - 日本の労働時間あたりGDP

1. OECDにおける労働生産性

前回までは産業別の平均時給(労働時間あたり雇用者報酬)についてご紹介してきました。
日本はどの産業でも既に先進国で低い水準となっているようです。

賃金は付加価値の分配面の一部です。
労働生産性は、一定期間で稼ぎ出す付加価値ですので、賃金と労働生産性は密接な関係がありますね。

OECDでは、労働生産性(Labor Productivity)に関するデータが公開されています。
労働者1人あたりGDP(GDP per person employed)と、労働時間あたりGDP(GDP per hour worked)です。

労働者1人あたりや、1時間あたりの労働時間でどれだけの付加価値(GDP)を稼いだかという効率を表す指標となります。
具体的な計算としては、付加価値の総額であるGDPを、労働者数、又は総労働時間で割った数値です。

総労働時間は労働者数×平均労働時間となります。
労働者数(Total Employment)は、企業に雇用されている雇用者(Employees)と、個人事業主(Self-employed)の人数を合計したもので、日本の統計での就業者数に相当するようです。

労働者1人あたりGDP = GDP ÷ 労働者数

労働時間あたりGDP = GDP ÷ 総労働時間
          = GDP ÷ 労働者数 ÷ 平均労働時間

まずは、労働者1人あたりGDPから眺めてみましょう。

労働者1人あたりGDP 名目 日本

図1 労働者1人あたりGDP 名目 日本
(OECD統計データより)

図1が日本の労働者1人あたりGDPです。
これまで見てきたGDPの推移と同じように、1990年から成長が緩やかになり、1997年あたりから横ばい傾向が続いています。
1人あたり800万円前後で長期間継続している事になりますね。

次に、労働時間あたりGDPについても見てみましょう。

労働時間あたりGDP 名目 日本

図2 労働時間あたりGDP 名目 日本
(OECD統計データより)

図2が日本の労働時間あたりGDPの推移です。

労働者1人あたりGDPと比べると、上昇傾向が強いように見えます。

バブル期に急激に上昇し、バブル崩壊と共に成長が緩やかとなり、2004年頃をピークにしていったん減少しますが、2012年頃から再び上昇傾向となっています。

2022年には5,000円/時間を上回る水準に達していますね。

平均時給はやっと1997年のピークを超えるかどうかという水準でしたが、労働生産性の方が上昇具合が大きいようです。

2. 労働生産性の構成要素

次に、日本の労働時間あたりGDPを構成している、GDP、労働者数、平均労働時間の推移を確認してみましょう。

GDP・労働者数・平均労働時間 日本

図3 GDP・労働者数・平均労働時間
(OECD統計データより)

図3が日本のGDP(青)、労働者数(赤)、平均労働時間(緑)の推移です。
GDPと労働者数は左軸、平均労働時間は右軸となります。

GDPはこれまでもご紹介してきた通り、1990年から成長が緩やかとなり、1997年をピークにして停滞傾向が続いています。
労働者数(就業者数)も同様に1997年をピークにして横ばいですね。
企業の労働者は増えているのですが、個人事業主が減っている事で横ばい傾向となります。

平均労働時間は緩やかに減少傾向です。

男性の現役世代労働者は1997年をピークに減少傾向で、代わりに女性や高齢労働者が増えています。
比較的労働時間の長い男性現役世代の割合が減っている事で、平均労働時間も減少傾向が続いているようです。
また、男性現役世代も含めて、パートタイム労働者が増えている事も影響していそうですね。
労働者数は横ばいを保ちつつも、平均労働時間が減少しているのはこういった労働者の構成の変化も伴っているようです。

 参考記事: 日本の労働者数の変化
 参考記事: パートタイムばかり増える日本

3. 労働時間あたりGDPの要因分解

最後に日本の労働時間あたりGDPの要因分解をしてみましょう。

要因分解は、掛け算と割り算で構成される計算式において、その成長率は、各構成要素の寄与度(成長率)の足し合わせとして表現できるものです。

今回の労働者1人あたり成長率は次のように計算されます。
ここで、成長率とは、前年からの伸び率の事を表し、成長率=(当年の数値 - 前年の数値)÷前年の数値x100で計算されます。

労働者1人あたりGDP 成長率 = GDP成長率 - 労働者数成長率 - 平均労働時間成長率

労働時間あたりGDP 要因分解 日本

図4 労働時間あたりGDP 要因分解 日本
(OECD統計データより)

図4が日本の労働生産性についての要因分解です。

GDPが増えるとプラス寄与、労働者数が増えるとマイナス寄与、平均労働時間が増えるとマイナス寄与となります。
各年でどのように経済活動が変化し、労働生産性への影響を与えているかが良くわかりますね。

1992年までは、GDPが成長し、労働者数が増え、平均労働時間が減少していて、労働生産性がプラス成長でした。
1993年にGDPがほぼ伸びなかった中で、平均労働時間が大幅に減少して、労働生産性が上がっています。

その後も、GDPや労働者数がプラスになったり、マイナスになったりしています。

1970年代の大幅な成長率にも驚きですが、1990年代以降の低成長ぶりも良くわかります。

4.日本の労働生産性の特徴

今回は、労働生産性と言われる労働者1人あたりGDPや、労働時間あたりGDPについてご紹介しました。

日本は生産性が低いと言われますが、労働時間あたりGDPは上昇傾向ではあります。
労働時間の短縮と、労働者の構成の変化、GDPそのものが増えていない事などが関係しあっている事も良くわかりました。
また、同時に比較的生産性の高い工業の労働者が減り、保健分野や業務支援的な産業の労働者が増えているという産業間の変化も進んでいますね。

今回ご紹介した指標は、一定期間で稼ぐ付加価値を表したものなので、付加価値労働生産性とも呼ばれるようです。
労働生産性には、物的労働生産性という指標もあります。
一定期間でどれくらいの数量の生産ができたかを表す指標となります。
経済指標としては、実質値や購買力平価換算値がこれに相当します。

実質値については、次回以降ご紹介します。

また、労働生産性は、基本的に事後的に計算される指標と言えますね。
労働者を増やせば、その投入した生産性の分だけ付加価値が増えるといった想像をする人も多いようです。
確かに、需要よりも供給が少ない場面では、そのような計算も成り立つかもしれません。

実際に事業をしているとわかりますが、需要が伸びない中で、優秀な労働者を増やしたところで売上は増えません。
むしろ、一定の売上をより多くの人で分配する結果になります。

このような事が、おそらく1990年代から2010年頃まで日本全体で続いてきたように見受けられます。
その分、労働時間の短いパートタイム労働者を増やして、一定の仕事をより多くの人でシェアする方向性となっているのかもしれませんね。
図4を見ると平均労働時間が短くなったり、労働者が増える年が多い事がわかります。

今後、人手不足が深刻化すると言われる中で、この傾向がどのように変化していくのか大変興味深いところです。

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