093 日本は移民大国なのか? - 外国籍人口のフローとストック
日本は人口が減少していくので移民を増やす必要があると言われています。日本や他の主要先進国の移民についての統計データを確認してみます。
1. 移民とは
前回は、G7各国の人口について可視化してみました。
アメリカ、カナダ、イギリス、フランスのように先進国でも人口が増加している国もあれば、ドイツ、イタリアは人口増加が停滞していますし、日本は減少に転じて久しい状況です。
経済成長は人口に影響を受けるのは間違いのないところだと思います。
移民を受け入れる事で人口減少を補っている国も多いのではないかというご指摘もいただきましたので、今回は移民について調べてみました。
実は日本も移民大国であるという話を何度か聞いたことがありますので、今回は統計データで確認していきたいと思います。
国連では移民を「出生あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人」と定義しているとの事です。
本来、移民とは移動先の国で永住する事を目的とする人たちと思いますが、一定期間国内に滞在する「技能実習生」や、「留学生」の外国人も移民に含まれる事になるのかどうかは、この定義からは良くわかりません。
2. 外国籍人口の推移
まずはOECDで集計されている外国籍人口のデータから見てみましょう。
図1 外国籍人口 ストック 2016年
(OECD 統計データ より)
図1は、OECD各国の外国籍人口をグラフ化したものです。
今回取り上げる移民数は外国籍人口(Foreign population by nationality)で、以下の住民を含みます。
・ 外国籍の住民(Persons born abroad who retained the nationality of their country)
・ 2世、3世の移民(Second and third generations born in the host country)
もう一方の定義である外国生まれ人口(Foreign-born population by country of birth)は、帰化した第一世代の人数を数えるもののようですが、日本はOECDの統計では公開されていないようです。
外国籍人口を見ると、アメリカが2240万人と圧倒的に多いですね。
ドイツも910万人の水準です。
イギリスやイタリア、フランスなどに続いて日本は220万人で8番目の水準です。
移民数としては日本はOECDの中でも多い方ではありますが、アメリカやドイツなど主要先進国の中で比べればかなり少ないですね。
人口が半分程度のフランスと比べても、半分程度の水準です。
3. 外国籍人口の流入数
G7各国についてもう少し詳しく時系列を見てみましょう。
図2 外国籍人口 流入数
(OECD 統計データ より)
まず、図2がG7各国の外国籍人口の流入数(Inflow)をグラフ化したものです。
1年間に受け入れた移民の数という事ですね。
ドイツとアメリカが圧倒的に多いという事がわかります。
ドイツは近年になって大きく人数を増やしていて、アメリカを抜いて年間で一番多くの移民の流入がある国となっています。
直近では、ドイツは1年で138万人、アメリカは112万人、イギリスで52万人、日本で47万人です。
日本もこの中では多い方ですね、イギリスに次いで4番目です。
ちなみに、日本はOECD36か国中でも4番目の非常に高い水準に位置します。
「日本は移民大国だ」という事を聞いたことがありますが、確かにこのグラフを見ると決して誇張ではないのかもしれません。
ただし、技能実習生は年間に40万人程といわれていますので、これらの人々も移民にカウントされるのだとしたら、流入数の大多数はこのような技能実習生という事になりそうです。
4. 外国籍人口の国際比較
外国籍人口について、主要先進国の推移を確認してみましょう。
図3 外国籍人口 ストック
(OECD 統計データ より)
図3が外国籍人口の合計人数の推移です。
アメリカは2000年頃から急激に増え近年では停滞しています。
ドイツは2010年頃から増え続けていますね。
イギリスは以前からドイツに次ぐ高い水準ですが、フランス、イタリアは近年で大きく増加していて近年ではイギリスを上回ります。
日本はこれらの国と比べると緩やかな増加の仕方をしていますね。
流入数ではフランスと同程度なのに、ストックでは大きな差があります。
日本に来て一定期間滞在するけれど、母国に帰る人なども多いという事なのかもしれません。
このため、差し引きで日本に残る移民数は低く抑えられ、このような推移になっていると思われます。
ちなみに、移民が総人口に占める割合については、下記のような順位と割合になります。
1. ドイツ 12.8%
2. イギリス 9.0%
3. イタリア 8.5%
4. フランス 6.9%
5. アメリカ 6.9%
6. カナダ 6.5%
7. 日本 2.0%
ドイツは移民が多いと言われますが、外国籍人口は総人口の8人に1人が移民という状況ですね。
減少していく人口を移民によって補っているという状況は確かにその通りかもしれません。
日本の外国籍人口はG7の中では、比率としても高くありません。
5. 外国生まれ人口の推移
これまで見てきた移民数(外国籍人口)は、基本的に母国の国籍を持つ移民という事になります。
もう一方の外国生まれ人口で見ると、アメリカやドイツの移民数は更に多いようです。
日本のデータは公開されていませんが、念のため確認してみましょう。
図4 外国生まれ人口 ストック 推移
(OECD統計データ より)
図4が外国生まれ人口の推移です。
アメリカは4,500万人近くで非常に多い事がわかりますね。
外国籍人口が2,200万人程度でしたので、多くがアメリカ国籍を取得しているという事になると思います。
フランスとイギリスも外国生まれ人口の方が外国籍人口よりも大分多いようです。
日本の外国生まれ人口はOECDのデータでは公開されていませんが、実際の人数が気になるところですね。
日本の法務省の統計データを見ると、近年では日本国籍への帰化許可者数は年間で1万人前後のようです。
参考URL: 総務省 帰化許可申請者数などの推移
累積でもせいぜい数十万人程度と推定されますので、他の主要国と比較するとかなり少ないのではないでしょうか。
定住を前提とした移民なのか、一時的な移民なのかで随分と変わるように思います。
6. 主要先進国の移民の特徴
今回は、移民として定義される外国籍人口の国際比較をしてみました。
ストックではアメリカが圧倒的な水準ですが、流入数(フロー)を見ると近年のドイツの水準がかなり高い事も確認できました。
日本は流入数ではアメリカ、ドイツ、フランスに次いで多いようですが、ストックではそれほど多いわけではないようです。
日本は人口が減っていくのだから、移民で補うべきだという話もよく聞くようになりました。
一方で、移民を受け入れる事で生じる問題も色々と明るみになってきているようです。
人口問題と移民問題は非常に難しい課題ですね。
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<ブログご利用の注意点>
・本ブログに用いられる統計データは政府やOECDなどの公的機関の公表しているデータを基にしています。
・統計データの整理には細心の注意を払っていますが、不整合やデータ違いなどの不具合が含まれる可能性がございます。
・万一データ不具合等お気づきになられましたら、「お問合せフォーム」などでご指摘賜れれば幸いです。
・データに疑問点などがございましたら、元データ等をご確認いただきますようお願いいたします。
・引用いただく場合には、統計データの正誤やグラフに関するトラブル等には責任を負えませんので予めご承知おきください。
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